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『由加里 26』


 夏休みが間近になったその日、由加里は、いつもよりもさらにダークな心持ちで登校した。太陽が、まだ午前8時を回ったばかりだというのに、陽光がまばゆい光を放つ。
 由加里の心の中は、それとは真逆に暗雲が立ちこめていた。昨日、すなわち、月曜日は、学校が創立記念日で休みだった。土日は当然のように休みだから、結果、三日ぶりに煉獄のような学校に赴くわけである。

 しかしながら、そのことだけが、由加里の顔をさらに陰鬱にしているわけではなかった。前の日の夜、どれほどミチルに電話しても、出てくれなかった。それは貴子も同様だった。   
 だから、悲愴な思いでメールを送ってみた。しかし、どれも答えが帰ってこなかった。少女の唯一の支えであるミチルと貴子のふたりにさえ、見限られてしまった。
 その思いが、由加里の絶望をさらに色濃くしているのである。

 中学が近づくにつれて、制服姿がチラリチラリと増えていく。最近は、由加里の知らない子までが、少女を嘲笑うような気がする。中には、知らない一年生にさえ陰口をたたかれたことまである。
――――あの子は、テニス部じゃないのに。きっと、練習の時に見物しにきたんだ。私のひどい姿を見て、笑っていた子だ。というか、笑っていなかった子なんて、あそこにいなかったんだけど・・・・・・・。
 
 由加里は、高田あみるの気まぐれによって、ラケットを使う機会を与えられることがある。といっても、まともなテニスをさせてもらえるわけではない。三年生の一部と二年と1年のほぼ全員対、由加里でボールの応酬をするのである。応酬と言っても、ボールは一個ではない。それぞれが、一つずつボールを打つわけだから、まともな応酬になるわけはない。由加里は、無数のボールに全身を打たれ、惨めな様を晒す。

 このごろでは、部員以外の生徒が、見物しに来るようになった。中には、写メールと意気込む男子までが出現した。しかし、それは高田がさすがに許さなかった。もっとも、由加里に同情したというよりは、いじめの証拠が暴露されることを怖れたのである。
 しかしながら、最近男子の見物人が増えてきたことには、理由がある。由加里は、テニスウェアを奪われてしまった。換わりに与えられたのは、とんでもない代物だった。
 
 高田自身が、小学生のころ使っていた小さなウェアだった。ちきちきのウェアは、由加里に、下着丸見えのハレンチな姿を強制するようになった。例え、小学生のようなスタイルだからと言って、男子の性欲を刺激しないわけではなかった。このごろの男子は、まさにその辺の欲望が芽を出すことである。そんな男子に、あられもない恰好を晒すのは、年頃の少女にとって耐えきれない恥辱となった。

 そんなことを考えているうちに、校門が口を開けて待っていた。地獄の門としか言えなくなった。それだけではない。向こう側からは、地獄の主ともいうべき二人がやってきていた。海崎照美と鋳崎はるかのふたりである。照美は、耳越しにこう囁いたのである。
 「西宮さん、今日も、た、の、し、く、遊ぼうね!」
照美の身体からは、芳しい匂いが漂ってきた。もしも、このすばらしい女の子が、友達だったら、どれほど嬉しかったか。
 きっと、一年前の少女なら、そのように夢想したにちがいない。

 昼休みには、まさに集団精神的リンチとでも言うべき、クラス裁判があって、罰が決まった。その日の由加里の容疑は、あるクラスメートの弁当を盗み食いしたことである。もちろん、嘘だが、最初から判決は決まっているのである。このごろは、罰も決められることになった。
 
 判決は、もちろん有罪。罰は定規で、一人づつ、由加里の尻を打つことに決まった。その日は新しい展開があって、下着を脱いで罰を受けることになった。当然、由加里は泣いて許しを求めたが、猶予が与えられるわけはなかった。
 泣きじゃくる由加里を、無理矢理に机に固定し、定規を持ったクラスメートが列を作った。生徒たちは、嬉々として震える由加里の尻を代わる代わる打った。
 可哀相に、列の終わりころには、まるでリンゴのように真っ赤になっていた。
「犬以下の・・ウううウ・・由加里に・・・うウウ・・・罰を与えて・・ウウ・・下さって、ありがとう・・ウウ・・ございました・・・・・・」
 由加里は、クラスメート全員に、土下座して感謝した。

 
 その日の放課後、彼女を所有する権利は、照美たちに割り当てられている。
いつものように、由加里は、似鳥ぴあのと原崎有紀によって放送室に連行された。部家の中では。照美とはるかが、ポテチを食べながら待っていた。
 「今日も楽しく遊ぼうね、西宮さん」
「・・・・ハイ」
 由加里は、照美の出迎えに消え入りそうな声で、答えた。その目は、何も始まっていないのに潤んでいる。
「ほら、お腹空いたでしょう?パンの耳だけじゃ・・・・あ、お食事の前に、西宮さんにふさわしい恰好をしてもらえるかしら?」
「・・ハイ・・・・」
 由加里は、制服を脱いで全裸になると、部屋の中央に正座をした。そして、照美が投げ捨てたポテチに口を持って行く。
「・・・・・ぅう」
「西宮さんたら、もう完全なヘンタイさんになっちゃったね、服を脱ぐのに何の躊躇も感じてないじゃない」
 ぴあのが、いかにも楽しそうに決めつける。

 「西宮さんは、本当に犬ね、人間みたいに手があるのはおかしいわね、切断しちゃったほうがいいんじゃない?!」
 照美は、少女の頭を踏みつけながら、残酷なことを言い放った。
「照美、早くはじめようよ」
はるがしびれを切らしたのか、口を挟む。
「そうね、西宮さん、今日はあなたに見て欲しいものがあるの」
「・・・・・?」
 由加里は、照美に四角い物を見せられた。DVDである。『淫乱女子校生!3p』とある。
「有紀が持ってきてくれたの、あの子、こう見えてスキモノなのよ」
「ちょっと、海崎さん、こんなヘンタイと一緒にしないでよ」
 原崎有紀が、照美を海崎さんと呼び、逆は、呼び捨てで呼ぶ。このことは、ふたりの力関係を暗示している。由加里は、どんな辛い情況でも、人を見る目は曇っていない。有紀とぴあのを単なる子供っぽいいじめっこに過ぎないと見なしているのに対し、照美やはるかに対しては、別の視線を向けている。

 「ねえ、西宮さんは見たい?」
「・・・・・」
「どうなの?」
 由加里は、恥ずかしさのあまり、DVDから目を背ける。『淫乱女子校生!3p』という題名の下には、セーラ服の女性が映っている。彼女は、乳房やヘアを惜しげもなく晒して、笑っているのだ。ご満悦のその表情は、女性が淫乱であることを示している。
 「わかりません・・・・」
由加里は、心の奥底からあふれてくる羞恥心のために、頬を真っ赤にして答えた。
「だったらキョウミはある?!」
照美は、質問を換えた。由加里が答えやすくしているのだ。
「・・・・・ハイ」
「へえ、興味あるんだ?!中学生の女の子なのに?!ねえ、ねえ、みんなこれに興味ある?」
「恥ずかしい!あるわけない!」
「興味なんヵ、ないわよ!」
「へえ、西宮さんって、やはりヘンタイさんなんだ!?」
みんな、口々に、由加里を暗に罵る。

 「みんな、こんなものに、興味ナイって・・・・・・こんど西宮さんの家に上がらせてもらおうカナ?もしかしてあなたの部屋、こんなもので、いっぱいだったりして、これみながらはずかしいことに耽っているカモ!?」
「ち、ちがいます!!」
由加里は、泣きながら抗議する。涙は、頬を伝わり、筋を作っている。鎖骨までが濡れている。
「さっき、肯いたのはなんなの?」
「・・・それは」

 「まあ、いいわ、とにかく見ようよ、私たちは興味ないけど、西宮さんは見たくてたまらないみたいだから・・・ふふ」
 照美は、意地悪そうに笑いながら、DVDをデッキにセットする。
「おい、観る前から興奮してる、こいつ」
「ぃいやあああァ・・・・・」
はるかの指が、由加里の股間を捉えた。予め、手術用の手袋を填めていたのである。石油質のゴム手袋で、直接、性器を触られる感覚。
ぶるぶる!
「何、震えちゃってるの?!西宮さんたら、いやらしい」
「そ、そ・・・んな・・・ああ・・ぁ・・・ぅ」
 はるかは、長身を邪魔気に、折り曲げて背後から、由加里の膣を蹂躙する。少女がいる場所からは、自分を辱める犯人が見えないだけ、恐怖感が煽られる。その空気だけは、ひしひしと伝わってくるのだ。
「まだ、始まっていないのよ、西宮さん、そんなに濡らしちゃって」
「ち、ちがいます!こんなにされてるから・・・・・」
「ほら、観なさいよ!」
照美は、少女の大腿を抓り挙げた。そのかたちには、たぶんに小学生体型が含まれている。たしかに細いのだが、幼児体型なのである。足なのだから足型と言うべきだろうか。
 
「ユカリ?どう?あなたの大好きなおち○んちんが、いやらしいオマ○コに入ってるわよ、まだ女子高生のガキのくせに」
「・・・・・・!?」
 テレビから聞こえてきた会話に、自分の名前が入っていることに、心底驚かされた。

 「あははは!!アレは、西宮さんの未来ね!もっと音を大きくしてあげる」
「もっとも、こんなのとやりたがる男優さんがいるとは思えないケドね。たとえ、お金のためとはいえ!あははははは!!」
 ぴあのたちの嘲笑は、由加里には聞こえない。目の前に展開されている映像があまりに衝撃的だったからだ。ほっそりとしたセーラ服の少女が、背後から白人男性に犯されている。少女と書いたが、 彼女はもはや大人だ。華奢な身体とはいえ、その体型は顔立ちは明かに大人のそれだ。むしろ、セーラー服を着用しているために、かえって大人が顔を出している。それはグロテスクとしかいいようがない。
 しかし、今の由加里にそんなことはどうでもいい。剥き出しの女性器に、男性器が挿入しているその映像が少女の柔らかな感性を貫いて、血を流させているのだ。いわば、精神的な処女を失う瞬間だとでもいうのだろうか?
「スゴイ、アニキ、こんなのを観てるんだ」
いまさらながらに、有紀は感慨の言葉を漏らした。さすがに中学生の女の子にすぎないのだ。由加里をいじめるという本分を忘れて、自分が借りてきたDVDに夢中になっている。

 「はあ・・・・・ァアゥ・・・・・イヤ!」
由加里は、DVDが展開されるのと同時に、はるかの陵辱を受け続けていた。
「あんな風にされたいんだろ?」
はるかの声が、十寸釘のように突き刺さる。
「ぅ・・ウウ・・・あ・・・ゥア!!ちがいますぅ・・ウウ・・・あ・・・ゥア!!そんなことぅ・・ウウ・・・あ・あッァアああぁあ・・ゥア!ありません!!ぅ・・ウウ・・・あ・・・ゥア!ア!!」
「あれをさ、あんたの文章力で表現してみな、小説書いてるんだって?工藤さんとの交換日記に書いてあったな、今でも書いているのかい?」
「・・・ハイ」
 由加里は、香奈見の名前を出されて、いまさらながら絶句した。もう何十年も昔のことのように思える。かつては、永遠の友情を誓ったものだ。
 そんなことに、構っていられないほど、由加里が置かれている状況は過酷だった。いま見せられているハレンチきわまりない映像を小説にしろと命令されているのだ。

 「日記で、さんざん書いてるじゃん、いやらしいこと、それも臆面もなくさ」
「そうだね」
 照美が笑った。日記とは、ふたりが、少女に命じて書かせている日記のことだ。イヤラシイ本やマンガを貸し与えて、それを元に記事を書かせている。二人が満足いかない内容には、当然のように暴力で報いてきた。
 
 由加里が書かされた日記には、口の端に上るのも、おぞましい言葉、言葉が並んでいる。みんな、二人に強制されたことだ。少女に精神的な苦痛をより、感じさせたのは、それを彼女の独創性に任せたことだ。命令されたことをそのまま実行するならば、それがどれほど苦痛で恥辱が伴うものであっても、「命令されて仕方なく――――」と自分をごまかすことができた。しかし、この日記ではそうはいかない。書き写すだけではなく、由加里自身の言葉で、淫靡な物語を完成されなければならないのである。それは、彼女にとって、人前でのオナニーに等しい行為だった。

「さ、いつもやっているみたいにやってよ」
はるかは、軽く命ずるのだった。
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『由加里 25』
 「やめて!来ないでええええぇ!」
「由加里!開けなさい!一体!何があったの!?出てきて、ママに説明しなさいぃ!!」
春子は、由加里の部屋のドアを激しく叩きながら怒鳴った。
 由加里の自殺騒ぎは、必然的に、両親に知らされることになった。楽しいはずの旅行は、日曜日の夜のうちに切り上げとなり、その日のうちに、父親の運転する車で帰宅した。その最中、由加里は両親の質問には、一切答えなかった。
 そして、帰宅するなり、自室に引きこもった。その上に、机やら本棚やらを放り投げた。ドアにバリケードを作って立てこもったのである。
 部屋の中から、聞こえるのは、由加里の悲愴な泣き声だった。

 夏休み前だと言うのに、真夏のような暑さ。その日も、熱帯夜が首都圏の空を覆った。汗まみれの状態でも、由加里は、冷房も入れずに、寝具に潜り込んだ。内面の苦悩は、少女の脳を食い破るほどだったのである。
 
 由加里の耳の中には、ミチルの最後の言葉が木霊している。貴子と三人になった最後、ミチルはこう言った。
 「最低!わかりましたよ、先輩が嫌われる理由!先輩は人の気持ちがわからないんですね。もういいですよ!」
 貴子は、貴子でどう反応していいのか、わからずたじろぐだけだった。ただ、由加里が走り去った後で、追いかけてきた。
「西宮先輩!反省してくださいよ、どれだけ、ミチルが先輩のこと、心配してきたのか、わからないんですか?」
 それだけ言うと、涙ぐみながらミチルの所に戻っていった。

「ウウウ・・・・!!」
 ミチルは、由加里のことを想うあまり、言い過ぎたのである。
少し考えれば、わかることだったが、当時の由加里にそんな余裕はなかった。
――――もう、終わりだ!だめだ!ミチルちゃんにも嫌われちゃった。
そのことしか頭になかった。
 噎せ返るような暑さの中、由加里は、完全に自分を見失っていた。

 「由加里!由加里!開けなさい!由加里ぃ!」
 母親の声に、ドラムがテンポを作る。ドンドンドン!というドアを叩く音。しかし、その音楽は、少女の耳に入ってこなかった。春子にしてみれば、娘が自殺騒ぎを起こして、帰宅するなり、自室に閉じこもって大声で泣き叫んでいる。気が気でない。彼女としてはドアを叩くぐらいしかできることはないであろう。しかし、夫である和之に諫められて、とりあえずは居間に戻ることにした。
 「ママは、居間にいますからね」
 最後の母親の言葉を由加里の耳に入らなかっただろう。

 「ぁ・・・・・・!!」
 その時、由加里は、自分の秘部に指を這わせていた。もう、彼女を慰める存在は、彼女しかいない。少なくとも、由加里はそういう狭い思考の中に、自分を閉じこめてしまっていた。
 
 「嘘!」
 ここまで来ても、由加里は自分を偽った。無意識のうちに、オナニーをはじめてしまったことを恥じたのだ。しかしながら、官能への欲求を止めることはできない。性器からは、糸を引く粘液が分泌されている。見なくてもわかる。
 もう、ドアを叩く音も聞こえない。この世に存在するのは、西宮由加里ただ、ひとりだけだ。この国の無能な総理大臣も、戦争好きなアメリカの大統領も、大事な家族も、ミチルや貴子も、そして、照美やはるかをはじめとするいじめッ子たちでさえいない。世界はただ、ここだけに存在する。少女のこの狭い部屋だけに。

 「ぁううぅ!」
 押し殺した声が、布団の中に響く。おそらく湿度は100%を超えるだろう。気温は40度を超える。そんな空間に、少女の甘酸っぱい匂いが充満する。聞こえる音は、少女のあえぎ声と、何か濡れた物を擦る音。膣を弄る音である。少女の指は、クリ○リスを中心に、小陰脚の襞の隅々まで、丁寧に刺激していく。
「ァハア・・・ああ!なんて、・・・ア・・・い、いやらしい・・・、はあ・・ア・・・こ、こんなに・・・ぬらし・・ハア・・・ちゃって・・・・・、こんんあ・・はあ・・ヘンタイが同じク・はあぁ・・・ラスだなんて、・はあ!・・・・耐えられないわ」
「・・・・・ああ、許して、・・ハアハア・・・ハアハア・もう、許して・・ハアハア・、いや!見ない・・ハアハア・で見ないでくだ・・ハアハア・ハアさいぃ!!」
 
 由加里は、一人、2役、いや何役もこなしている。いじめっ子といじめられっ子を同時にこなしている。なんと哀しい一人芝居だろうか?
「由加里!・・ハアハア・・お前みたい・・・・・な、ヘンタイは、すぐに死ん・・ハア・・・ゃえ!人前で・・・・・、オナニーでき・る・ハアハア・・なんて、人間じ・・・・・ゃない・・・・・わよ!」

 まるでフランス語のように、鼻に掛かった発音。それはクチュクチュという、濡れた摩擦音と相まって、イチゴのような甘い音楽を奏でている。しかし、それは悲愴な音楽だった。自暴自棄の果てに、自嘲と自己憐憫がからまって、悲愴な通奏低音が加わると、音楽に深みが加わる。
「可哀相な、・・ハアハア・・・ハアハア・ゆ、・・ハアハア・・・ハアハア・由加里は、・・ハアハア・・・ハアハア・クラス、みんなの前で、・・ハアハア・・・ハアハア・・・ハアハア・・・ハアハア・オナニーさせ・・ハアハア・・・ハアハア・られてる」
ご丁寧なことに、実況中継まで自らにしている。
 
 それは、照美たちにどれほど命令されても、頑として拒んできた行為だった。どうして、それを想像してオナニーするのだろう。由加里は本当にマゾのヘンタイなのだろうか。こうやって、いじめられて、辱められる自分を思い浮かべて、行為に耽る。オナニーを自涜というが、まさに、いま、由加里がやっているのは、その意味に限りなく近い。
 
 由加里はバカでないだけに、それを知的に理解した上でやっているのである。しかし、すぐに酔いは醒める。

「ぅうわわああ! ――――――――」
由加里は、ついにオルガルムスに達した。
「・・・・・・!!?」
その直後、蘇った理性と羞恥心に、蝕まれる自分自身を発見した。
「ああ・・・・・ああああ!!」
由加里は、再び激しく泣き始めた。

 「由加里ぃ!」
娘の泣き声を聞いて、居間で、頭を抱えた春子が立ち上がった。
ダコ!バコ!ガサ!!
 その後、ものすごい衝撃音が響いた。そして、ドアの開く音。
「ゆ、由加里ぃ!!」
 上品な装いの、春子のこんな表情を、近所の奥さん連中は見たことがないだろう。しかし、自分の分身ともいうべき、我が子が自殺と聞けば、誰でもそうなるものである。
「由加里!」
 はたして、彼女の娘は、浴室の前に立っていた。全身、汗まみれで、今の今まで、水に浸かっていたかのようだ。
「由加里!」
「ママ・・・・・わ、私、シャワー浴びる・・・・・・」
少女はなぜか、右手を掲げている。
「由加里、左手・・・怪我しているじゃない!?」
「大丈夫・・・・・」

 由加里の左腕からは、血が滴っている。
「由加里!」
「大丈夫だって!」
 少女は、強く言ってから、涙ぐむ母親を見て後悔した。余計に涙がこぼれてくる。それを見せまいと浴室に急ぐ。何故か、怪我している左手で、ドアを開ける。そして、痛みに耐えながら、蛇口を開けた。
 そして、石鹸を取り出すと急いで、両手を洗う。
「痛ッ!!」
湯が沁みる。早く、流してしまいたかった。右手が汚れているのである。

「汚いぃ!!汚いよぉ!!」

 少女自ら、掻きだした膣分泌液を汚いと思っているのだ。いや、そうではあるまい。少女が汚らわしいと思っているのは、おのれの行為そのものだろう。いま、由加里は、自殺寸前の状態に追い込まれている。

 その状態から脱出するために、自涜という行為を使った。官能を一種の麻薬代わりにしたのだ。そのことを恥じている。それが汚れというかたちに転化したわけだ。さきほど、わざわざ痛んでいる左手を使って、ドアを開け、蛇口を捻った。その行為は、汚したくないという彼女の判断である。いや、そもそも、どうして左手が負傷しているのだろう。

 由加里は、自慰を終えたとき、それに使った右手を非常に汚らわしいと見なした。それゆえに、バリケートに使った机やその他家具を、外すのに、左手を使わざるを得なかった。不器用な左手を力仕事に使うことは、必然的に、負傷する結果を産んだ。そのために、わざわざ怪我が悪化することをせざるを得なかったのだ。

 由加里は、中学生としては並はずれた知能の持ち主である。しかしながら、まだ中学生の女の子にすぎないのだ。もしかしたら、その優れた知性が、少女を痛めつけているのかもしれなかった。加えて、気高いプライドも持っている。このことに、まだ少女は気づいていない。やがて、それを知るだろう。もしかしたら、今、味わっている苦痛は、それを少女に知らせるために、天が与えた試練かもしれないのだ。

 「ゆ、由加里!!」
「え?!ママあ!」
 熱いシャワーが少女を洗濯している最中にも、係わらず春子は、浴室のドアを開けた。そして、何も構わずに愛する娘を抱きしめた。
「由加里、由加里!由加里!!」
「ママ、ママが汚れちゃうよぉ!」
 由加里の断末魔のような声が、浴室に木霊する。まるで中世ヨーロッパの漆喰のような浴室は、哀れな母娘にどのような視線を送っているのだろう。
100%を超える湿度と狭い空間は、二人の声を閉じこめて、反響させる。
母と娘の声と声はお互いに、見えない会話をはじめた。
 「何を言っているの?あなたが汚いだなんて!!」
「あああああ!!あたし・・・・・・・・」
湯に濡れながらも、春子は、何も感じなかった。ただ、自分の手から娘を話したくなかっただけだ。

―――由加里が自殺未遂!
 それを聞いて、春子は娘を失いかけたことに気づいた。由加里は、自分のお腹を痛めて産んだ子ではない。しかし、それ故に、娘を愛した、できることなら、まだ幼児だった由加里を食べて、産みなおしたいと思ったほどだ。
「いいなさい!何が汚いの!ママの娘の、あなたが汚いなんてことは!絶対にありえないわ!ママはあなたのおむつを換えたのよ!」
「・・・・・・・ウウ・・・・ウウ!じゃあ、・・・ウウ・由加里が・・・ウウ・・何をした・・・ウウ・・としても、、許してくれる?!」
 由加里が、自分のことを名前で呼ぶのを、春子は久しぶりに聞いた。それは、彼女がずいぶん昔に、はしたないと叱ったものである。
「あたりまえでしょう!!」
「ゆ、由加里、今の今までオナニーしてたんだよ!!」
「それが何なの!?」
「汚くないの!?」
由加里は慟哭した。
「バカ言わないの?どの手でやったの!?」
「・・・・・右手」
春子は、それを聞くなり、娘の右手を抱きしめると舐め始めた。
「汚い!汚いよ!ママが汚れちゃうよぉ!!」
「・・・・・・・・・」
頭からシャワーを浴びながら、ひたすら舐め続ける。

「・・・ああ、くすぐったいよ!ママあ!!」
やがて、由加里はおさまりはじめた。すると、怪我の痛みが襲ってきた。
「ゥウ!痛い!」
「由加里!痛いの?シャワー浴びたら、病院、行こうね、ママが連れて行ってあげるから」
「・・・・・・・・うん」
由加里は静かに頷いた。春子は、娘のそんな姿を見せられると、納得したフリだけでもして、浴室を後にせざるを得なかった。

 ――――違う!何かしら?この感覚は?
少女は、体を洗いながら、小さいころとは違った感覚を味わっていた。それは、幼いころ、ものすごいいやなことがあって、母親に抱かれて寝てしまったときのことである、あの時は、奇麗さっぱり、いやなことは、洗い落とされてしまった。しかし、今はそのように行かないのだ。
 もしかしたら、それは少女の自立の第一歩だったのかもしれない。しかし、それはさらなる少女の受難のはじまりを意味している可能性もあった。

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『由加里 24』

 「西宮先輩、いじめられているんですよ」
いきなり、貴子が切り出した。ミチルは目を丸くしている。親友が、積極的に動く姿は珍しいからだ。
「それは、テニス部内のことなの」
 あゆみが言う。予め、ミチルと貴子が後輩であることは知らされている。
「それはいけないな・・・・・・」
はるかは、まるで他人事のように言う。
「でも、はるか姉ちゃんは、同じクラスなのよね」
「私は、あまり親しくしてないし、口を聞いたのも二年になって一回か、二回ぐらいかな」
「じゃあ、教室で話しかけられたら無視しないよね」

 ミチルは、上目遣いで、はるかを見る。
―――ミチルはどの程度知っているのか?
はるかは、鷹の目で睨みつけた。しかし、幼なじみの相手のこと、他の同級生たちのように、ひるんだりしない。
 「無視したりはしませんよ」
はるかは、コーヒーを口につける。しかし、砂糖もミルクも入っていない。その苦さに額に皺を作った。

 このとき、むしろ内心でひやひやだったのは、はるかだった。まるで針のむしろに立たされているようだったにちがいない。しかし、話しの内容から言うと、ミチルは真実を知らないらしい。そう考えるとかなり余裕ができてきた。
 「そう、あの西宮さんがそんなひどい目にあっているとは知らなかった。今度、話しかけてみるか・・・・」
「そうしてよ、みんなに無視されてるって泣いているんだから」
「鋳崎さん、あなた、まさか係わっているんじゃないでしょうね!」
 あゆみの声に怒気が加えられる。

「・・・そ、そんなことありませんって、彼女が仲良しグループから無視されているのは知ってましたよ、それは・・・・・・・・・・でも前から知り合っていないから・・・・・・」
思わず、うそぶくはるか。

 ミチルは、いつもと違う、はるかの姿に不審を抱いた。そうは言っても、最近は、互いに忙しく昔のように交流があったわけではない。しかし、だからこそ、その変容に驚いてもいるのだ。
「とにかく、いじめは許せないわね、鋳崎さん、どうにかならないの」
 それは、一般的にはとても青臭い意見だったが、あゆみが言うと、何か異様な説得力があるように思えた。それは体育会系の清潔感に満ちていたからだ。
 そして、それははるかには、より、いっそうある種の圧力を与えていたことはたしかである。

 「さあ、この年頃はグループで動くものですから、部外者が何ともできないわけですよ」
はるかは、まるで三流の教育評論家のように、言う。もっとも、教育評論家などという人種に、まともな人間がいないことは、たしかなことだ。
 
 はるかは、ミチルの態度を監視するように、目を密かに走らせながら、言葉を続けるべくひと呼吸おいた。
「たしかに、それは異常な事態でしょう、同じクラスメートとして捨て置けないのも事実です。それとなく見ておきましょう」
 決して、自分が手を出すとは言わない。ここのところは、言葉の選別を緻密に行っている。

 「・・・・・・・・・・・・・」
四人が四様に、押し黙ってしまった。
この状況下におけるはるかの態度はあきらかに、見え透いていた。しかし、ミチルには、それを見抜こうという気概に欠けていたことも事実だ。なにせ、ミチルにとっては姉のような存在なのだ。その分だけ、見方が偏ることになる。
 「とにかく、いじめは許せないわね」
あゆみとしては、そう言って若い弟子を睨むことしか、できることはなかった。彼女はあくまで部外者にすぎない。

 「私は、これから用があるから、先に帰らしてもらうわ」
あゆみは、スクッと、長身を伸ばした。まさに颯爽としたという形容が、これほど似合う人物は、珍しいであろう。
「あ、西沢さん」
「見送りは結構、じゃ」
 あゆみは、去っていった。すぐに車の始動音が聞こえた。
「鋳崎さんは、どうされるんですか」
「・・・・・・用があるのは、前からわかっていたことだったから」
 はるかは、貴子の質問に、まるで他人事のように答えた。
「ねえ、どういうこと?!」
いきなりミチルが感情的になった。
「どういうこととは?」
はるかも、明らかに先ほどとは態度が違う。
「わかっているでしょう?はるか姉と照美姉が一緒にいて、どうしていじめが発生しているのよ!」
「私たちは、別に正義の味方じゃないんだけど」
「私の知っているはるか姉なら違ったな」
「じゃ、あんたの知っているはるか姉と話し合えばいい」と言い放つと、立ち上がった。
「何処行くのよ!」
「私はもう帰る!」
 苛立ちを隠しきれなくなったのか、バッグを椅子に投げつけた。
「どうしたの?くれるんじゃないの!」
「あんたに上げたつもりはないわよ!!」とバッグをミチルから分捕ると、支払いを済ませ、コテージから出て行った。
「・・・・・・・・・・・」
「まずいよ、あんなこと言っちゃって」


―――――鋳崎さん・・・・・!!
そのとき、由加里は自室から風景を眺めていた。緑が気を静めてくれると思ったのだ。しかし、それは逆効果だった。緑が、ではない。まるで競歩のような勢いで、歩くはるかを見つけたからだ。おもわず、布団を華奢な身体に掛ける。息をひそめる。おびただしい量の涙があふれてくる。
――――もう、だめだ。
由加里は密かにそう思った。いつも誰かから監視されている。そんな気分が常に少女を襲っている。心の中さえ、彼女の自由にはならないような気がした。誰かに見られると、心の中まで見透かされてしまう。だから、誰かの視線にいつもビクビクしている。
―――逃げたい。何処かへ逃げたい。視線が全くないところへ・・・・・。
由加里は、改めて緑の海を見つめた。
 ミチルの母親である笙子は、所用があっていなくなっていた。

 一方、残された二人は、小一時間ほど無言のままだった。しかし、貴子がはっとさせられた。先輩はどうしているのだろう。
「はやく先輩のところに行こうよ」
「そうだね、貴子」
 ふたりは支払いを済ませると、自室に向かった。しかし・・・・・。ドアを開けると誰もいなかった。
「え?先輩!?ママ!」
貴子は叫んだ。しかし、空室は何も答えてくれない。
「もしかしたら、下に行っているのかも」

 その時、由加里は緑の魔境に足を踏み入れていた。しかし、ほぼ同時に背中を見られてしまったことに気づかなかった。その人物は、一瞬ためらったが、意を決して、由加里を追った。
「ち!」
 その背の高い人物は、入りがけに頭を枝にぶつけてしまった。そのことで、かなり焦っていることを、自覚させられた。なんと言ってもここは自殺の名所なのだ。いやそれ以上に、焦らせる理由があった。
 
 樹海の中は、昼間でも薄暗い。すぐに、冥界を旅している気分になった。もう、愛おしい家族や、ミチルや貴子とは、別の世界にセパレイトされてしまったような気がした。しかし、それは、いじめとの完全な決別をも意味する。
 おまけに、地面の起伏は激しく、異常に歩きにくい。登山しているわけでもないのに、すぐに息が上がる。しかし、歩みは止まらない。彼女の中で蠢いている火山はすでに、噴火したのだ。もう逡巡する必要はない。ただ、先へ進むだけだ。そして、五つ目の起伏を登ろうとした瞬間、意図しない圧力が頭にかかった。それは背後へと引き戻される力だった。
「いやああ!!」
反射的に、振りかえる。
「・・・・!!」

 そこにいたのは、だった。由加里の長い髪を掴んでいる。
別にミチルたちであることを期待したわけではない。これは固い決意の元だったのである。決して、狂言なのではない。しかし、よりによって、はるかとは・・・・。
「こんなトコロで、お散歩とは?」
はるかは、できるだけ冷静を保つことにした。
「わ、私だって、解らなかったんですか!?」
由加里は泣き叫んだ。

 はるかは、おののいた。普段の由加里と違う。ただ泣いてばかりの、幼女がそこにいるのではない。
「・・・・どうしたんですか?答えてよ!」
「・・・・・」
「もしかして、わかっていて追ってきたの!?どうして!?さんざん、いじめて、死なれたら困るから?!」
 由加里は、自分でも知らなかったプライドが、わき起こるのを感じた。その噴火はものすごく、彼女自身、制御できずにいた。目の前には、照美と並んで、おそろしいはるかが立っているのだ。
「それとも、おもちゃが無くなるのがいやだから?!」
「・・・・・」
それだけ、畳み掛けて泣き叫ぶと、地面に座り込んでしまった。その姿は幼女そのものである。はるかの彼女に対する印象そのものだ。
「あんたの顔が悪いのさ、照美を傷付ける!あんたは、あいつにどうされても文句いえない!」

 「・・・・・・・!!」
由加里は、幼女そのものの顔をはるかに向ける。はるかは、恐怖を感じた。
――こいつに会うまで、自分はこんなことしたことはない!どうして、こんなことをしなきゃいけないんだ!
 由加里に出あうまで、いじめなどというのは、異次元の出来事だと思っていた。いじめる方も、いじめられる方も、しかし、彼女が現れて、照美を痛く傷付けてから、それが変わってしまった。
――――こいつのせいで!
 はるかは、長い足でサッカーボールのように、目の前の物体を蹴りつけたい衝動に刈られた。

 「顔?!」
由加里に、はるかの理屈が理解できるわけはない。
「おい、早く戻るんだ!」
はるかが、由加里の腕をつかんだ瞬間、聞き慣れた音が聞こえた。パトカーのサイレンである。別に、二人が犯罪の常習者というわけではない。テレビを通じて、聞き慣れているということだけだ。

 サイレンは、少女を現実に引き戻した。とたんに両親や、ミチルたちの顔が浮かぶ。
「いや!!」
「うるさい!」
 はるかは、乱暴に由加里を摑み取ると、サイレンが喚く方向に引きずっていった。圧倒的な体格差は、由加里に反抗する橋頭堡を与えなかった。まるで、警察署に連行される犯罪者のように、マスコミや野次馬に囃し立てられる幼児虐殺者のように、樹海の外に連れ出された。足下に、コンクリートの感触。その硬さは外界の冷たさと仮借無さを暗示しているように思えた。
 既に夜のとばりは降り始めていた。深いオレンジ色の空と、薄闇が、まさに由加里の心を暗示している。
 はるかが大声を張り上げると、二人目掛けて、わらわらと人が集まってきた。
 マスコミと野次馬は、さすがにいないが、警察官と関係者が集まってきた。ミチルたちや、コテージの関係者、その他である。
 由加里の身体には、木の葉や泥が無数に付着している。あの樹海を引きずられてきたのだ、それは当たり前のことだった。その惨めな姿は、犯罪者そのものだった。

 「・・・・・!」
警察官の一人が、懐中電灯を由加里の顔に向けたのだ。
―――まぶしい!ああ、見えない!
もう何も見えないと思った。恥ずかしくて、もう、何も見えない。
「西宮由加里さんですか」
警察官の重々しい声。由加里は、自分の名前が西宮由加里であることすら、忘れてしまっていた。いや、忘れたかったのかもしれない。それは、自動的に別世界へのパスポートとなる。しかし、現実は少女にそれを許さなかった。

 「はい、そうです」
「あなたは?」
「私は、鋳崎はるかと言います。友人です」
友人という言葉が、由加里の心に引っかかったが、そんなことに拘っているときではない。
そんな間にもミチルたちがやってきた。
 一番、目を合わせたくない相手だ。思わず、目を背けざるを得なかった。
「先輩!」
その声は鬼気迫っていた。怖くて、とうてい目を合わすことはできない。泣きながら警察の質問に応対した。パトカーから聞こえる無線の音、赤いサイレン、それらは、少女から現実感覚をしだいに、失わせていった。ぼろぼろの身と心は、それに耐えうるだけの力を持っていなかった。
 
 しだいに、それらは少女の中で、薄くなって、消滅していった。

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『由加里 23』
 昼過ぎにコテージに入った三人は、ミチルの母親が作ってくれたお弁当を手に、樹海の散策に向かった。おやつ代わりだと言うのだ。
 もともと、高島家は体育会系の家である。運動少女たちが、どのくらい食べるのか、100も承知なのである。

 テニスコートの裏には、広大な樹海が横たわっている。そこは死の別名だ。磁石すら通用しない樹海。そこに、間違って、入れば二度と帰ることができなくなる。一方、自殺者は、それを利用して、自分を苦痛から解放する道を選ぶ。
 人間の目に親しい緑は、その迷路の恐怖を和らげては・・・いる。しかし、それ故に、樹海はおそろしいのである。

 樹海は、水のない海である。いま、由加里は、その波しぶきを受けている。
――――この先に行けば、もういじめられることはなくなる。家族、それに、大事な後輩たちを心配させることはなくなる。
 由加里は、うつろな目で樹海の奥を見ていた。見ようにも、無数の小枝に遮られて、見ることはおろか、伺うことさえ難しい。緑の迷路は、陽光をさんざん切り裂いて、無数のステンドグラスをちりばめる。それが遭遇者に、麻薬めいた効用を与えることがある。それが、死の恐怖をも凌駕させるのだ。
「西宮先輩!」
「え?」
「おやつにしましょうよ」
 ミチルの声は、まるで他の宇宙から、響いてきたかのように思えた。
「そちらに、自然歩道がありますから、食べた後に行きましょう、どうしたんです」
「・・・・・・・・何でもない・・・・うん、せっかく、おばさんが作ってくれたんだから、食べよう」
由加里は、自分に言い聞かせるように元気を取り戻した。

 「これって、お昼に食べたフォワグラじゃないの?贅沢ねえ」
由加里は、今、口にしたサンドウイッチを噛みながら言った。ミチルの母親である笙子は、あっという間に、手慣れた手つきで、サンドウイッチを作り上げたのである。
 
 食事を終えると、小一時間ばかり、自然道を散策した。その間、始終、由加里は無言だった。心、ここにあらずといった感じだった。三人は、手をしっかりと握りあって、自然歩道に臨んだ。
 由加里の体はたしかに、ふたりの側にいるのだが、まるで、心だけ別の世界にいるように見えたが、ミチルたちは、詮索しないようにした。彼女が学校で、どんな目にあっているのか、誰よりも知っている・・・・・・はずだった。
 実は、彼女たちが知っているのは、いじめの表面にすぎないことを知るのは、相当、後のことである。
 
 コテージに戻ると、由加里を昼食以上に驚かせる夕食が待っていた。十分すぎるくらいに舌鼓を打った後は、それ以上に楽しい時間が待っていた。まるで修学旅行である。本来、ふたり部屋であるはずの部屋に、ベッドを入れ込んでもらって、三人で過ごすことにした。
 貴子が持ち込んだテレビゲームにうつつを抜かすは、深夜まで、長い語らいが続くはで、由加里は、今までのことが信じられないような時間を過ごした。あたかも、たった一夜で、これまでの辛いことが帳消しになるようにすら思えた。
 
 しかし、実際は、由加里には、いじめの恐怖と恥辱が襲いかかっていたのである。童女のような笑顔の裏で、ふたりに心配をかけまいと、必死に歯を食いしばる少女の姿があった。  

 いつもは、三人だけになると、涙と嗚咽が抑えられなくなり、ただ介抱される時間が続くだけだった。しかし、今日こそは、普段の思いやりに報いるべく、歯を食いしばったのである。それは、家族に対して仮面を被るのとは、また違った力を必要とした。

 夜は、いつの間にか眠りを三人にもたらした。修学旅行よろしく、三人の寝相は、笙子を苦笑させるのに、十分だった。

 翌朝、三人は、その日どうするか、話し合いをはじめた。
ミチルは言った。これは、言うまいか言おうか、かなり迷ったのだが。
「西宮先輩、テニスやりません・・・・・・?」
「ちょっと、ミチル!」
 さすがに、小池貴子は口を挟んだ。しかし・・・・・、由加里はすこしだけ躊躇したが、こう、答えた。
「うん、やる、やりたい!」
由加里は、自分に言い聞かせた。
――――自分は、テニスが好きなんだ。ここは、学校じゃない。いじめっ子はいない。だからテニスを楽しめる。昔みたいに、やるんだ。

 「でも、ラケットはあるの」
「ありますよ、うちはテニス一家ですからね、そうでなかったら、こんなところにコテージなんてつくりませんよ」
 コテージ支配下のコートは3面あった。夏休み前のこの時期、誰も使っていない。三人は広々とコートを使うことができた。
 「はあ、はあ、・・・・・・・」
「大丈夫ですか?先輩?」
 由加里は、何ヶ月も、まともにテニスをさせてもらえなかったために、かなり感覚がつかめないようである。いたずらにボールを追いかけるだけで、しばらくすると、ヘタってしまった。

 「あ、あ、疲れた!」
驚いたことに、由加里は大の字になって寝てしまった。それは、ふたりの後輩にとって、驚くべき光景である。彼女たちのイメージにない姿だった。別に、いじめられて惨めに泣いている由加里の姿が固定されているわけではない。ただ、おとなしい、ごく控えめなお嬢さんというイメージだったからだ。
「きもちいいなあ!」
 由加里は、空に栄える青空を仰ぎながら、急速に介抱されるのを感じた。これまで、填められていた手枷足枷が溶けるのを感じたのだ。
「そうですね、良い風でですね」
 ふたりもコートに座ると、気持ちいい風に吹かれてみた。
こうして由加里を見ると、これまでのことが嘘のように思える。真夏が近いというのに、うららかな風は、まるで気節が遅れているかのようだ。春のようなのどかな空気に、三人とも溶けてしまいそうになった。

  「え!嘘!あれ、西沢あゆみ?」
貴子の声にふたりとも驚いた。ミチルは、ここでサインをもらったことがあると聞くが、まさか、それが現実になるとは夢にも思わなかったのである。
 ふたりとも視線を貴子が指す方向に、向ける。はたして、そこには、西沢あゆみがいた。彼女は、日本で唯一、世界ランキング10位以内に、入っている選手であり、かつ23歳とまだ若いために、将来を非常に、嘱望されているのである。
ポーン・・・。ラケットがボールを叩く乾いた音が響く。

――――え、嘘!西沢さんとやっているのは・・・・・・・・!?
「う、嘘・・・・・・・・?!」
 由加里は、思わず立ち上がると後ずさった。天国から地獄に引き戻されたような気がした。彼女の視線の先に見えた人物は・・・・・・・・・。その人物は、長身の西沢あゆみと比べても遜色ない。
「え、はるか姉ちゃん、いつから西沢さんと知り合ったのかしら?テニス協会がらみかな、行ってみようよ」
 向こう側のコート。別のコテージ、あるいは個人が支配する範囲だ。
 「え?」
由加里は、ミチルの言いように驚いた。
――――はるか姉ちゃんって・・・・・!?
わ、私・・・・・帰る・・・・・・。由加里は、恐怖のあまり、その言葉を言うことができなかった。由加里の脳裏には、教室で、放送室で、さんざん彼女たちにいじめられた映像が蘇っていた。
「鋳崎先輩でしょう?」
貴子は、それほど知り合っている様子ではない。
「さ・・すが、上手いなあ、あの西沢さんとやって遜色ないよ、まあ、手加減してるんだけど・・・・」
「ミチルさん、あの人と知り合いなの?」
―――え?ミチルさんって?

 「はるか姉ちゃんですか?照美姉ちゃんが私の従姉妹だって知ってますよね」
―――――――・・・・・・!!
由加里は凍り付いた。血液が凍って、細胞を破壊する音が、じかに聞こえてきた。
「言ってなかったのですか・・・そんな縁で、あたしたち、姉妹みたいにして育ったんですよ、わたし兄弟がいなかったし・・・・どうしたんですか?先輩」
ただ成らない様子の由加里に、ミチルも不思議に思ったようだ。
「私・・・・か」
「はーい、ここまでにしようか」
 西沢の声が聞こえた。遠くからでもよく聞こえるハリのある声だ。
ふたりは、肩を組んで歩み寄ってくる。泊まっているコテージはこちらの方向みたいだ。はやくしないと見つかっちゃう。
 
 しかし、このとき、どちらが見つかりたくなかったか・・・・・・。
だが、はるかは、これまで由加里が見たどんな彼女よりもすばらしかった。あゆみとまるで姉妹のような親しさで、肩を組んでいる。
 はるかは、こちらを見る。思わず、背を向ける由加里。
「・・・・!」
「・・・・・・・!!」
 はるかは、由加里を見つけると一瞬だけ表情を硬くしたが、すぐにミチルに明るい声を声をかけた。
「ミチルじゃない!」
「はるか姉ちゃん・・・・・」
「あ、小池さんだったね」
「鋳崎先輩・・・」
「憶えてくれてたのか、あ、西宮さん、ミチルと仲よかったんだ」

 「・・・・!?」
心臓が爆発するかと思った。ドキドキという鼓動が、他人にも聞こえてしまうような気がした。
「こんにちは、西宮さん」
「・・・・ぁ・・・い、鋳崎さん・・・・お、おはようございます・・・・・・」
 ミチルは、はるかと由加里を交互に見た。たしかに不審を感じたのだ。
「ねえ、私を忘れていない?」
その時、あゆみが割って入った。身長、178センチは、さすがに圧巻だ。特別に美貌とは思わないが、常人とは思えないオーラを発している。
 その気配は、ミチルをも圧倒した。
「・・・・・・・」
 
 由加里は、もはや、頭の中で何が起こっているのかわからなくなってしまった。完全なパニック状態に陥ったのである。
「おっと!」
 倒れた由加里をあゆみが抱き留めた。しかし、茫然自失となっていたのは、彼女だけではなかった。あゆみの背後で、はるかは、立ち尽くしていた。
「ほら、何してるの!手伝いなさい」
「・・・・・あ、はい」

 彼女に掛かれば、はるかなど単なる小娘にすぎない。
横目で、ミチルをちらりとやりながらも、由加里の足をつかむ。つい数日前まで、さんざん痛めつけてきた肉体だ。脛に、かすかな傷痕を見つけた。もしかしたら、自分の暴力の結果でないかとおもった。はるかの中で、罪悪感と打算が微妙な味のスープを作っていた。
 テニス協会を通じて、あゆみと知り合ったのは、ごく最近のことである。だからミチルすら、その事実を把握していなかった。
 才能ある少年少女など掃いて捨てるほどいる。その中で、誰もが上に行けるわけではなない。もちろん、あゆみが認めるほどだから相当の才能の持ち主なのだが、外見に似合わず、慎重なところがあった。
 ちなみに、あゆみの両親はテニス協会の理事等、重鎮を勤めている。そういう人間とコネクトを保っていれば、将来、何かとやりやすい。

 まるで中学生らしくない見方であるが、それがはるかをして、はるかたらしめているなにかだった。いま、戦々恐々として、冷や汗を掻いているのは彼女こそである。しかし、由加里をいじめるのは、いじめる動機があるというのは、彼女の自信でもある。
 その根拠は、親友である照美だ。
照美が受けた傷は、どのような手段によってもいやされるべきだ・・・・・・というのが彼女の持論である。

 由加里を自室に、運び込むと四人は、コテージの広間に集まった。ここは、ホテルのロビーに該当する。おあつらえ向きのレストランと、お土産屋が軒を連ねている。とりあえず、レストランに居を定めることにした。ちなみに、由加里には、笙子がつきそっている。
 
 
 


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『由加里 22』

 高島ミチルは、由加里と小池貴子を、富士山の麓にあるコテージに誘った。ミチルの伯母夫婦が経営しているのである。青木ヶ原樹海の近くにあるこのコテージには、テニスのコートが何面もあって、 それは、プロレベルの選手すらが、利用するほどである。あの西沢あゆみも訪れると聞く。ミチルは、彼女からサインをもらったことがあった。
 「月曜が、創立記念日だから、三連休じゃないですか」と誘ったのである。
たまたま、海崎照美や似鳥かなんからの命令もなかった。

 「うん、わかった!ありがとう、ミチルちゃん」と当然のことながら、快諾した。
 車は、ミチルの母親によって、快調に国道をひた走る。窓の外には、平和がひたすらに配置されている。今、小学生の一団が見えた。きっと、遠足に行くバスなのだろう。子供たちは、由加里の姿を見ると、まるで姉に対するように、手を振った。きっと、あそこに美人のお姉さんがいる・・・・・といったテンポなのだろう。

 「・・・・・・」
 それを見るとミチルは、少しだけ安心するのだった。しかし、考えれば考えるほど疑問は深くなる。どうして、この先輩がいじめられるようになったのだろう。性格は温和で、誰にでも好かれる。中学に入って、一ヶ月、そんな先輩の姿しか見てこなかった。一度として、声を荒げるような姿を見たことはない。
 彼女を含めて、一年生は、みんな由加里をお姉さんみたいに慕っていた。上には可愛がられ、同級生には好かれて、後輩には慕われる。そんな理想的な先輩が、どうしてこんな目にあっているのだろう。
 頭が良く、快活な先輩。しかし、少し気が弱くて、自信がないような印象を受ける。そこをいじめられっ子に付け入れられたのだろうか。それとも、ただ成績がいいと言うのが、クラスメートの嫉妬を呼んだのだろうか。もっとも、同じ優等生でも照美ならば、そんなものを跳ね返してしまうだろう・・・・・・・とミチルは、美しい従姉妹を思い出した。そうだ、照美姉さんは、先輩と同じクラスだった。彼女はどうしているのだろう?本来なら、いじめなんて許さないんだけどな・・・・。
 
 そのように考えながらも、一体、どうしたら由加里が救われるのか、思考を巡らすのだった。
 このとき、由加里がどんなひどい目にあっているのか、ミチルは知らない。よもや、照美が、いじめの先頭に立っているなどとは、思いもしなかったのである。
 
 元々、直情径行なところがあるミチルは、一気呵成に問題を解決しようとした。要するに、暴力に訴えようとしたのである。
―――何か、問題を起こせばいじめに気が付くにちがいない。やがて、いじめは消滅するだろう。それは刑事事件を発生させることに他ならなかった。
部室の隅で泣いている由加里を見つけると、行動を決した。それを止めたのは、由加里自身である。
 「オネガイ、バカなことはやめて、私のことを思ってくれる人が一人でもいるなら、嬉しいの!オネガイ!」
 親友である貴子の言もあって、ようやくそれを押しとどめることができた。
しかし、もし、このとき由加里のいじめの真の姿を知っていたならば、その憤懣を押しとどめることができたのかと、問われれば、簡単に答えを出すことはできない。
 
 「ねえ、富士山だよ、きれいだね」
まるで遠足に行く小学生のような感想を漏らす由加里。それは部室で苦悶の表情で、泣いている彼女からは、まったく想像もできない姿だった。
―――今は、ただ楽しませてあげよう。ミチルは、そう思うことにした。

 午前10時の富士は、その裾をまるで貴婦人の衣装のように、地上に伸ばしている。地表すれすれのところで、淡い紫に棚引いていた。
 その姿は、美しいが、かつて何人の死者を、そのスカートの中に閉じこめてきたのだろう。ミチルは思った。言うまでもなく、富士の樹海である。なんと毒々しい緑か。もちろん、そんな不幸な神話を知っているから、そう見えるのだと言われれば、その通りである。
 しかし、そこはかとない不安を感じずにはいられないのである。彼女たちが向かうコテージはその近くにある。そう言えば、似ている緑があったと思ったが、その答えをなかなか見つけられずにいた。しかし、車が国道から離れ、小さな町に到着したとき、思い抱いた。

 ―――アウシュビッツだ。あの写真集の緑は実に毒々しかった。
それは、彼女たちが通う中学の図書館に置いている。値段を見ると5000円などという、少女たちには信じられない数字が踊っている。
 少なくとも、一冊の本に使う金額ではない。
 『アウシュビッツ強制収容所』と銘打たれた写真集には、ナチスの行った蛮行が、これでもかと、映っていた。信じられなかったのは、ナチス自身が、それを撮影したということだった。おそらく、自分たちの行為をまったく恥じてなかったのだろう。
 恥じるどころか、誇りにすら感じていたのかも知れない。
 
 彼女の言う毒々しい緑とは、アウシュビッツの跡のことである。建物は、有名な毒ガス室を含めて、そのまま保存してある。その現在の写真は、青々した緑に包まれている。それは抱かれているというよりは、隠匿されているようにすら思えた。そんな様子では、殺された霊たちが成仏できないように思われた。

 「さあ、ついたよ!」
車は、こぎれいなコテージの前で止まった。
「すごい!こんなところで泊まるの!?」
 由加里は、喜びの声を上げた。もともと、彼女の家は開業医であり、ふつうよりもはるかに経済的には恵まれているはずである。その彼女が目を丸くしたのだ。
「ねえ、ねえ、すごいね、貴子ちゃん」
しかし、貴子は驚いたような顔をしなかった。何度も連れて行ってもらったことがあるからである。
 既に正午を過ぎていた。
「早速、うちの自慢の料理を賞味してもらおうかな」
ミチルの母親である笙子が言った。
「はい、ありがとうございます」
 元気に荷物を運び込む娘たち。三人の中では、ひときわ由加里が目に付く。
笙子は、いかにも良いところのお嬢さんといった印象を、由加里から受けた。娘の先輩ということだが、年よりも大人びて見えた。しかし、それは見せかけだけのような気がするのだ。そうは言っても、無理して背伸びしているというわけではない。初対面だから、仕方ないのかもしれないけれども、大人びているところと、やけに子供っぽいところが、同居しているように見えた。

 ―――可愛い子だわ。
それが、総合的な笙子の印象だった。
 笙子に気が付くと、かるく会釈してコテージに入っていった。彼女は昨日のことを思い出していた。ひどく泣く声がして、娘の部屋に行ってみると、由加里が泣いていて、ミチルたちが介抱していた。
 「・・・・・・・!」
由加里は、笙子を認めると、態度を一変させた。とたんにおとなしいお嬢さんに変わったのである。ミチルたちも驚きを隠せずにいた。
「すいません、驚かしてしまって・・・・・・」
「ええ、いいのよ、何かあったの?」
笙子は、注意深く少女の瞳に見入った。

 ―――西宮先輩、いじめられているのよ。とこのとき、母親にいうわけにはいかなかった。何故ならば、形ばかりとはいえ、自分たちも荷担しているのだ。そして、この年代特有の、大人との乖離は、事態をさらに複雑にしていた。もしも、このとき、それを正直に告白することができたら・・・・・・・、あれほど残酷な展開を見せることはなかったかもしれない。
 
 とにかく、何か問題があることだけは、たしかだ。しかし、それを詮索することはしなかった。
 笙子は、このとき、強い態度に出るべきだったろうか。それも、誰にもわからない問いである。彼女が取った態度は、ただ一つ、少女をこのコテージに誘うことだけだった。後は子供達に任せるほかはない。その判断が無責任だったか、その問いに答えることもできないだろう。

 「本当、美味しいね!」
「ふふ、ここのコックの特製なんですよ」
 子供たちのにぎやかな笑いが聞こえる。あの子も笑っている。あたかも、なんの問題もないように、無邪気な笑いの花を咲かせている。
 
 鮮やかな花々が戯れる庭園に、設けられたテーブル。お洒落な風情に彩られた調度品は、少女たちの旅に、いっそう華やかな空気を醸し出していた。由加里の笑顔に、普段、彼女が置かれている過酷な色は、全く見ることはできない。
 
 しかし、楽しい想いは、それが大きければ、大きいほど、別の感情を引き寄せてしまうのだった。照美や高田などのいじめっ子が、そこにいなくても、彼女を縛り付け、いじめ苛み続けるのである。ふとしたことで、そのような記憶が復活してしまう。例えば、風が吹いて、初夏だというのに可憐な花が落ちたりしたとき、由加里は、そこに自分の首を垣間見てしまうのだ。照美や高田と言ったいじめっ子たちに、その花は、踏みつけられて無惨な姿を土壌に晒す。
 
 それは、由加里がこれから、歩む人生そのもののようにすら思えた。

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『由加里キャラクターno.2 海崎照美』
 キャラクターNO.2海崎照美(かいざき てるみ)
       属性:準主人公
       身分:向丘第二中学2年生 (14才)
       知能指数:139
       一学期、中間試験結果 :4位
       美人度:100(海崎照美を100とする)
       運動能力:92(鋳崎はるかを100とする)
       人気:78(1年次終了、西宮由加里を100とする)
       性格:攻撃性:85(高田あみるを100とする)
           自尊心:97
           残虐性:79
           協調性:56(鈴木ゆららを100とする)
           親和性:47(鈴木ゆららを100とする)
           劣等感:45
           カリスマ性:100(海崎照美を100とする)
           身長:165センチ
         体重:49キログラム
         家庭環境:90pts/100pts
         経済状況:96pts/100pts
         愛情:96/100pts
        作者から愛され度:100(海崎照美を100とする)
        作者から憎まれ度:7(高田あみるを100とする)

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『由加里』キャラクター学外、主キャラクター。
海崎百合絵(照美の母親)・・・・準主役
西沢あゆみ(日本テニス界のホープ 世界ランク4位)
高崎淳一(冴子の恋人)

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キャラクターno.1 西宮由加里
     キャラクターNO.1 西宮由加里(にしのみや ゆかり)
       属性:主人公
       身分:向丘第二中学2年生 (14才)
       知能指数:147
       一学期、中間試験結果 :1位
       美人度:90(海崎照美を100とする)
       運動能力:44(鋳崎はるかを100とする)
       人気:100(1年次終了、西宮由加里を100とする)
       性格:攻撃性:35(高田あみるを100とする)
           自尊心:不明
           協調性:96(鈴木きららを100とする)
           親和性:87(鈴木きららを100とする)
           劣等感:不明
           カリスマ性:32(海崎照美を100とする)
         
        作者から愛され度:90(海崎照美を100とする)
        作者から憎まれ度:7(高田あみるを100とする)

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西宮家一家。
 西宮春子(母)36歳  西宮和之(父)37歳、精神科医 

     冴子(姉)19歳 大学生 (国立大医学部2年生)         
     由加里(本人)13歳 中2
     郁子(妹)10歳 小学5年生

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『向丘第二中学テニス部女子名簿』
『向丘第二中学、テニス部 女子名簿』
1年生
荒木こづえ
伊藤ゆき
上島ゆうら
上野こなら
上原君代
高島ミチル
小池貴子
駒井らうら
佐藤ゆか
橇(そり)りんめい
立花香織
立木ゆり
豊田俊子
古畑喜美


2年生
赤坂香織
青木小鳥(2年3組)
青木かざりん
新井友子
佐藤こあら(2年3組)
金江礼子(2年3組)
加藤由利子
西宮由加里・・・・・主人公
西崎愛
高田あみる(2年3組)
千早みのり
剣朝子
豊橋久美子
奈良橋麻衣
野上翔子
真綿あき
最上郁子

3年生
朝霧ゆう
入会順子
坂上冷菓
佐藤文恵
角崎きらら
羽茂じゅん
米原薫
庄司法子
似鳥かなん
野坂如月
野田秋子

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『由加里 21』

 夜のしじまに、一つの果実がなった。それが腐って落ちるか、貴人に食べられるかは、果実しだい。

 「痛かったですか?西宮先輩」
「全然、痛くなかったよ、貴子ちゃんが教えてくれた方法が、よかった」
「・・・・・・・」
小池貴子と高島ミチルは目を合わせた。
「でも、惨めだよね。こんなことまでしなきゃいけないなんて・・・・・」
由加里は、顔を自らの膝に埋めると、泣き出した。
 由加里の目には、その日の昼間のことが、鮮やかに復活していた。

 「さあ、はじめようか?ねえ高島、小池、今日の出し物は何かしら?」
高田の冷たい声が、部室に響き渡る。彼女の目は、肉食獣に特有の目つきをしている。獲物にぎらぎらした目つきを向ける。しかし、それは、高田だけではない。3年生の一部、2年、1年のほぼ全員が、そういう目つきを由加里に向けていた。

 「平家物語、安宅の関です」
安宅の席とは、平家物語の1シーンである。兄である頼朝に疎んじられた義経は弁慶たち一行と、逃避行をはじめる。
 しかし、安宅の関という関所で、責任者である富樫に止められてしまう。そこで。機転を利かせたのが、弁慶だった。彼は、巻物を広げると勧進帳を読み上げる。結果、疑いは晴れて、一行は歩を進めることが許される。しかし、めざとい富樫は、義経を見破ってしまう。そこで、弁慶はさらに機転を利かせて、義経を打ち据える・・・・・・といった物語である。
 その物語を予め、高田は、改編してミチルたちに渡していた。それをあたかもミチルと貴子が、考えたかのように画策したのである。
 
 「ねえ、はじめてよ、はやく視たいよ」
「そうだね、はやくはじめな」
 少女たちは、ポテチをかじりながら言う。まるで映画鑑賞のつもりなのである。
 「はい・・」
ミチルと貴子、それに由加里は、舞台の上に立った。もちろん、テニス部の部室に舞台なぞ、あるわけはないので、マットで代用される。
 
 配役は、富樫が、貴子、弁慶がミチル。そして、当然のことながら、義経は由加里・・・・・である。
 「お前たちは、義経一行ではないのか?」
 富樫こと、貴子は高らかに言う。ちなみに、彼女は、演劇をやっている。しかし、似鳥ぴあのなどと違って、民間の児童演劇機関で、本格的にやっている。
「いえ、私たちは、単に見せ物をやっている芝居一座です、ちなみにここにいるのは、ユカリといいますが、ストリップ踊りをやっています、さあ、あなたの好きな踊りをやりなさい。この娘は、自分のはずかしい姿を見られるのが好きなのです」
 
 「・・・・・」
由加里こと、義経は、震えながら下着姿になると、舞台に立った。そして、いかにも性的なアピールを主題としたダンスを披露した。
 「ここに、男子がいないのが、変態の由加里ちゃんには残念ね」
 「本当、今度連れてこようか、あははははは」
 由加里は、長い睫を涙に濡らして、やっと踊り終えた。全身からは、汗が流れている。終わった後で、迎えられたのは、嘲笑に満ちた拍手だった。しかし、芝居はここで終わりでは・・・・・ない。
 
 弁慶と義経は立ち上がり、関を去ろうとするが、めざとい富樫は義経の正体をついに見破ってしまう。
 「おい、お前は義経であろう!」
「いや、義経などではござらん、うううむ!おい、ユカリ!おのれのせいで、待ちぼうけを喰わされたではないか!!」
 烈火のごとく怒り狂った弁慶は、義経を殴りはじめた。
  「ヒイ!」
 哀れな声を上げる義経に、弁慶は情け容赦のない暴力を加える。殴ったり、蹴ったり、しまいには、舞台の外へと転がってしまった。
「待たれよ」と富樫。
 「もうよい、そなたは義経ではないのだろう、行かれるがいい」
一行は、関を出られることになる。しかし・・・・・・・ここで終わらなかった。
 高田が、由加里を睨みつけたのである。
「・・・・・」
すこしだけ、ためらうとミチルに懇願をはじめた。
「いやです!弁慶さまあ、もっと、ぶってくださーい、きもちいいの!もっと!ぶって!!」
「・・・・・・」

 ミチルは、少しだけ間を置いたのちに、先ほどよりも激しい暴力を加えはじめた。
激しく転げ回るユカリ。それを追いかけて、殴る蹴るの暴行を続けるミチル。後輩に、いじめられる先輩という絵は、非常に観客を喜ばせた。
 やがて、息が続かなくなるとミチルは、暴行を止めた。激しく泣き続ける由加里。
「なんで、泣いているのよ!いじめられて気持いいんでしょう?変態!」
「泣くフリなんて、止めてくださいよ!みんな知って居るンですからね、西宮先輩がいじめられて悦ぶヘンタイっだってこと!!」
「あははははは!いやだあ!」
 一年生にまで、嘲りを受ける由加里。
  
 やがて、三人が舞台に揃って立った。しかるのちに、深々と頭を下げる。すると、割れんばかりの拍手が巻き起こった。由加里は、自分のからだが押し潰されんばかりに圧力を感じた。とても、痛かった。とても、悲しかった。しかし、それだけではなかった。
    
 ミチルと貴子から何かを感じた。
 
 とたんに、由加里は申しわけない気持に襲われた。二人の後輩たちは、精一杯、自分のからだを張って守ってくれている。そんなことを思うと、熱い涙が目尻を伝って顎へと、落ちていくのだった。
 
 「後かたづけお願いね」
「ハイ・・・・・・」
 ぼろぼろの由加里は、力無く答える。
 ぞろぞろと部室を後にする部員たち。そんな中で、ミチルは何事か耳元で囁いた。
「何してるのよ、高島、行くよ」
「はい、先輩」
 ミチルと由加里は目で合図した。

 それから、部屋の後かたづけには30分ほどかかった。ラケット等の道具を磨くことだけでなく、観客たちが食べちらかしたお菓子のゴミなどが散乱していたからである。
 ちなみに、ポテチの残りかすを、由加里は食べさせられた。
 「西宮先輩、ご褒美ですよ」と頭からかけられたのである。しかも、床に散らかったかすを、犬のように食べるように命じられた。これは、高田も期待していなかった展開だったが、存分に楽しんだ。
 
 由加里は、惨めにも、後輩の命令で、よつんばいにさせられると、ポテチに口をつけたのである。
「似合ってますよ、西宮先輩!まるで犬みたい!あははは」
その子は、かつて由加里がかなり面倒を見てあげた子である。小学校時代、いじめられて孤立していた過去を持つ、彼女は、中学にあがってもなかなか友達ができなかった。それはテニス部に入っても同じことだった。
 そんな中、手をさしのべたのが由加里だった。他の新入生に口を聞いて、友達になるように薦めたのである。しかも、気を遣って、少女の見えないところで、それをやった。だから、少女はそれを知らないはずである。
 しかし・・・・。
「・・・・」

 由加里は、ふとその少女の顔を見た。
「何してるんです?!西宮先輩!そっちにエサが残ってますよ!アフリカでは飢えている子がいっぱいいるってゆうのに、先輩なんかが、こんな贅沢なものを残していいですカネ!」
「ハイ・・・・・・」
 由加里は、恥辱の中、残ったかすに口を持って行った、涙が止まらなかった。
 このときばかりは、ミチルと貴子は何もできなかった。ただ、目をそらすことぐらいしか・・・・見ないことだけが、由加里にしてあげることだった。
 
 さて、高田は後輩たちを引き連れて、ファミレスに向かった。その日は金曜日、週末である。そんな日の部活の後は、かなり遅くまでダベるのが習慣だった。
 「今日はなかなかの演技だったじゃない?演出もよかったし、さすが小池じゃない」
「ええ、女優業は長いですから・・・・・」
 貴子は、内面の憤懣を必死に押さえながら言った。
「高島もね・・・・・相当ストレス溜まってたんじゃない!?」
「いえ、あれくらい当然ですよ、先輩には罰が必要なんですよ・・・」
 ミチルは、背後で、掌が傷つかんばかりに握っていた。それを、そっと貴子が撫でる。
「私たち、もう帰りますから」
「あら、今日の功労者はもうお帰りなの」
金江礼子が言った。
「はい、宿題が残っていますので」
 時計を見ると7時をまわったばかりだった。二人は、苦々しい気持を必死に押さえながら店を後にした。

 「今から家に戻って、包丁を持って戻ろうかしら」
「何言っているのよ、ミチル」
 貴子は、親友のただ成らない様子に驚いた・・・・・・別に驚きもしないが、その包丁という言葉には驚いた。
 「何か、大きな騒動を起こせば、きっといじめはなくなるよ・・・・」
「何言っているの?いじめられているのは、あんたじゃないでしょう!?今しなきゃいけないことはひとつだけでしょう」
 「わかってる、先輩に連絡しよう」
ミチルは、携帯を開いた。
「先輩、やっと終わりました。公園で待っていてください、すぐに行きますから・・・・・え?人に見られちゃまずいですって?・・・・・・そんな・・・わかりました、家で待っています・・・」

「先輩、こんなことまで気遣って・・・・・まあいい、貴子早く家に行こう」
 月末の週末は、貴子が泊まりに行くのは、習慣になっていた。

 そういうような経緯があって、三人は、ミチルの家に、一同に会したのだ。
まず、二人に出あうと、由加里は放心状態になったように立ち尽くした。
 「どうしたんですか?先輩、はやく、座ってくださいよ」
お菓子や飲み物なぞ、精一杯の心づくしが、由加里の目に飛び込んできた。
「・・・・・・!!」
「・・・・先輩!」
 ふたりとも、もう何も言えなくなった。
「・・・・・・ウウ・・」
 声にならない嗚咽とともに、泣き声をあげはじめた。ふたりは、由加里を支えるとゆっくりと座らせた。あまりも、全身の筋肉が強ばっていたからである。
「痛かったですか?」

ううん・・・と首を振る由加里。

「ぜんぜん、痛くなかったヨ・・・・・だけど疲れちゃった、あんなに動いたから・・・・・・ひさしぶりだった・・・部活でうごくの」
 由加里は、このところ、ラケットすら持つことが許されていない。部活動の最中、ずっと空気椅子をさせられているのだ。見張りが常にいて、少しでも動くと竹刀でぶたれる。それをやっているのは1年生だ。
 由加里は、始終後輩に見張られるという恥辱を味わっている。しかも、後輩達の中には、由加里が動いて無くても、竹刀をふる子もいる。だから、常に暴力と隣り合わせなのだ。始終、緊張を強いられる。しかし、そんな中でも、なんとかしのげるのは、ふたりの存在があるからだ。

「だから、動けてよかった。貴子ちゃんに教えてもらった演技法は難しかったけど、どうだった」
由加里は笑顔で言った。
「あれじゃ、ぜんぜん、ダメですね、少しでも演技を知っている人がいたらバレバレですよ」
 「・・・・・・でも、似鳥さんが」
「どうしてです!あんなやつにさんづけするんですか?、あいつは一番許せませんね!あんな人に演技なんてやってほしくないですよ、この学校の演劇部のていどの低さがわかります」
 貴子は怒りを込めて言った。

 貴子が教えた演技とは、殴られる演技である。よく、テレビや芝居などで、殴られるシーンを見かけるが。どれも本当にやっているわけではない。殴る俳優の動きに合わせて、動く演技をするのである。それを見た人は、リアルな暴力シーンであると誤解する。エンターティーメントとはつまるところ、誤解の上に誤解を重ねることなのだ。

 「ありがとうネ、貴子ちゃん、ミチルちゃん・・・・・あなたたちがいなかったら、私、生きていられなかったかもしれない・・・・・・あ、泣いちゃだめだよね、せっかく、呼んでくれたのに・・・・・・」
 
 由加里は、あふれてくる涙を抑えることができなかった。

 「いいですよ、好きなだけ、泣いて下さい。私たちはずっと側にいますから」
「そうですよ、先輩!」
「ウウ・・ウウ・ウ・ウウ・・ウうううう!!」
 由加里は、ふたりに抱かれながら泣いた。中2になってから、起こったことが走馬燈のように現れる。はじめて、学校で、誰にも口を聞いて貰えなかった日のこと、みんなに責められてひどく罵られたこと、照美たちに、性的なおもちゃにされたこと、・・・・・すべてである。
 
 ミチルと貴子は、必ず、由加里を守っていくと心に決めた。彼女たちは、由加里がまるで壊れる寸前の・・・・・・そう、トランプのお城のように思えた。どうにかしないと崩れてしまう。しかし、不用意に、触れば瞬く間に崩壊してしまう・・・・・・。

 更けていく夜の中で、三人だけがこの世にいればよかった。


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『由加里 20』
 「いつまで、入っているつもり?由加里、五時には出かけるからね」
春子の声が、シャワーごしに聞こえる。由加里は、いじめられた跡を、洗い流すように、全身に熱いシャワーを浴びせる。それで、その日にされたひどいことが記憶から消去されるのだろうか?

 由加里は、その問いに、簡単に答えるこができるはずだった。しかし、あえて、答えようとしない。とにかく、流すのだ。ぬぐえなくても、ぬぐおうとしたという事実ぐらいは、記しておきたい。それは、少女にとってはあまりに残酷な体験だった。それはその日だけではない。今日は大切な日なのだ。7月14日は、少女の14回目の誕生日だ。家族のみんなが祝ってくれようとしている。姉の冴子なぞは、わざわざ下宿からやってきてくれたのだ。今時の女子大生が、である。

―――――― 嫌な記憶は、全部、全部、水に流してしまいたい。中2になってから、少女が舐めた艱難辛苦は、まさに筆舌に尽くしがたい痛みだった。
 その日も、日曜日だというのに、さんざんいじめられた。いつもの五人に、心身両面に渡って、由加里は攻め抜かれた。土曜日に、約束を守らなかったことも相まって、いじめは、残酷を極めた。
 
 しかし、一番辛かったのは借りを作ったことだ。
 
 同じ小学校出身である原崎有紀が、由加里の誕生日を知っていたのである。同じクラスだったこともある有紀は、由加里の家に招かれたことがあったのだ。そのために、7月14日のことを知っていた。
 「お。オネガイです!もう帰してくださぃ!!」
午後3時なって、必死に哀願する理由を知っていた。
「ふうん、そういう理由があったんだ。あなたみたいな人間でも、家族から愛されてるんだ」
「・・・・・!!」
 照美は酷薄に言ったものだ。
「わからないよ、あなた去年まで、嘘でも友達がいたんでしょう?去年の今ごろは、誕生日パーティで祝ってもらったんじゃないノ?」
「・・・・・?!」

 何処までも残酷な照美である。頭がいいだけ、有紀やぴあのや、他のいじめっ子たちの残酷さとも一線を画す。
「ゥウ・・・おね、オネガイです!」
「わかったわ、帰してあげる」
「あ、ありがとう、ございます」
 由加里は、心底ありがたいという気持にさせられた。かなり、心の奴隷化は進行しているのだ。
「・・・だけど、これは仮だからね。いずれ、その分は払ってもらうよ、体でね」
「・・・・・・」
 由加里は、照美に、何とも言えない恐怖を感じた。
「ま、後でメールするからさ、せいぜい家族に愛してもらいな、例え、それが偽りでもネ」
―――違う!そんなことない!
照美に心の中で、反論しながら、由加里は帰宅した。

 「由加里!」
母親の声。
「わかった!」
 由加里は、水滴が自分の体を伝っていくのを見た。それらはキラキラと美しく光っていたが、それは、自分の涙のように思えた。
―――これから芝居をするんだ。私は女優。学校では、友達がいっぱいいるし、何の問題もない。みんなの祝福にふさわしく幸せでいないと!
 由加里は、洗面台に設えてある鏡に、自分を映して思った。しかし、その顔は、彼女自身から発する湯気によって、歪んで、消えてしまった。それは、彼女自身の運命、あるいは、はかない期待や、それに基づく未来を暗示していた。

 誕生日の夜は、家族で外食をすることになっている。由加里が選んだのは中華だった。車で、20分ほど、国道沿いに、その店はある。
 由加里の目に入ってきた電光掲示板。『頤和園』
 西宮家が、行きつけにしている中華料理店である。少女は、心が緊張するのをひしひしと感じた。
 ―――これから女優になるのだ、という意気込みだ。下の妹である郁子と春子が笑い合っている。
 「どうしたの?由加里お姉さん、今日の主人公なのに、そんな顔しちゃって」
「子供が生意気言うんじゃないの」
「由加里がこんなこと言うなんてね」
姉である冴子が笑った。
 「どういうこと?」
 由加里が笑いながらも、かすかに、頬をこわばらせて聞いた。
「あんたも、少しは大人になったのカナと
「冴姉さんったら!」
「ハハハッ」
「早く行こうよ、お腹空いちゃった」
郁子が足早に、走っていく。
父親が笑う。母親も続く。

――――大丈夫だ。芝居できる。私は幸せなんだ。由加里は密かに、独語した。しかし、そのとたんに、照美やはるかの怖い顔、そして、その背後のいじめっ子たちの顔が見えた。そして、地獄のような教室、無関心な担任。すべてが、走馬燈のように見える。
 「どうしたの?由加里?」
「・・・・ううん、なんでもない、はやくいこよ、私もお腹空いちゃった!」
「・・・・そう」
 春子は、娘のようすに少し不安になった。なぜならば、自分のことを私と呼んだことだ。家族の間では、由加里と呼ぶのに・・・・。
 しかも、あの時の由加里が気になる。彼女のムネで、まるで赤子のように泣きじゃくったあの日のことを・・・・・・。

 「由加里、誕生日、おめでとう!」
まるで絵で描いたかのような、幸せな家庭がここに現出した。由加里は、女優然とにこやかに笑ってみせる。みんなからもらったプレゼントの包装紙を破る。卵のように孵化したプレゼントを満面の笑顔で迎える。
 郁子のプレゼントは、黄金のカップだ、きっと、小学生の小遣いで、指折りながら選んだにちがいない。
 
冴子は、由加里が好きなバンド、Purple Acidのライブのチケット。
「冴姉さんありがとう!」

 由加里は、精一杯喜んでみせる。
――――このステキな空気を壊しては、絶対に・・・・・・いけない。
 このとき、父親である卓司の表情が、一瞬だけ曇ったのを、春子と冴子は、見逃さなかった。密かに舌を出した冴子。はらはらする気持を押し隠す春子。ここに、家族間の隠れた戦争が勃発していることを知っているのはこの三人だけである。

 「パパ、ありがとう!」
「これで、好きなモノを買いなさい、由加里も、もう大人なんだから」
由加里がもらったのは、五千円ぶんの商品券だった。
「いいの?パパ、ビールに変わったたりして」
「お前と一緒にするなって・・・・・ハハハハ」
卓司は、見えない弾丸を撃った。
「ねえ、ママのプレゼントは?」
しかし、冴子は意に介すようすはない。ダテに、パパの娘はやってないという顔ですましている。
 
 ――――お父さんは音楽なんて、許さないからな!
――――いいの?あまり脅すと本当にやっちゃうよ、私たち人気あるんだからね。その手の人たちから声がかかってるんだから。白衣、脱いじゃうよ!いいの?

 「ママは、これ」
「あ!Happy turnだ!」
それは、ジュニアには人気一番のブランドだ。
「ありがとう、ママ、誕生日とお正月が一度に来たみたい」
「ふふ、いいのよ、みたいじゃなくて・・・本当だから」
「へー?」

 おおげさに、舌を出して見せる由加里。お互いに火花が散る。しかし、それは卓司と冴子の間でカワされた火花のように熾烈で、陰惨なものではなかった。あくまで、仲の良い母娘の和やかな会話だ。
 「え!そんなにするの?」
 郁子が不平の表情を見せる。自分がもらうのと大幅に違うことを怖れているのだ。しかし、そんな不平も、その場を和やかにする材料にしかならない。しかし、次ぎに、冴子が示した弾丸は、それどころではなかった。
 「そうだ、これ、忘れてたわ」
「え?まだあるの!?」
 「コレ」

 卓司と春子が一瞬で、凍り付く。それは一枚のCDだった。Assemble Nightと銘打っている。しかし、問題は、文字ではない。映っているメンバー。その真ん中に冴子が過激な恰好で、座を占めている。
 「冴姉さんのバンド!ついにCD出したんだ!」
何も知らない由加里は、驚きと喜びのない交ぜになった声をだした。
「よかったネ、よかったネ・・・・・・ありがとう!ありがとう!・・・・・・アリガトウ・・・・アリガ・・・・」
ふいに、黙ってしまった由加里。四人は、不思議に思って、愛する家族に注目する。それはとてもアタタカで、甘い匂いがした。それが、由加里の芝居を、いとも簡単に壊してしまう。
「・・・・・ウウウウ・・・・ツツ・・・・・!!」
 もらったプレゼントを抱きしめて、しゃっくりを上げる由加里。四人は、すでにただごとではないことを理解していた。
「由加里!」
母親の一声が、合図になった。

 「アアアア・・・・アアあ!!」
由加里は、隣の席に座っている春子の膝にしがみつくと、号泣をはじめた。
「由加里姉さん!」
「由加里!」
「由加里!!」
四人、四色に由加里を声で、抱きしめる。
―――ただことではない。それが食事前の家族の同意だった。











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『由加里 19』
 「西宮さんは、日本語読めないんだ」
「・・・・・・」
 照美は、携帯を由加里に見せながら言った。少女は、いつものように全裸にされて正座をしている。鬱蒼とした空気。それは、外から入ってくる朝日と対比を為す。
「どうなの?」
「よ、読めます!」
 由加里は、震えながら答えた。照美の捏造(つく)られた優しげな声は、かえって、すごみを増して、犠牲者に迫ってくる。

 「だったら、どうして来なかったのよ!約束でしょう!?」
原崎有紀が大声を上げる。
 「そ、それは・・・・・・・・」
由加里は、どうにかその場を取り繕うとする。頭にあるのは、似鳥かなんのことだ。しかし、彼女のことを言うわけにはいかない。その理由は、彼女自身、どうしてなのかわからなかった。
 「だったら、これはどういうことかしら?読んで貰える?」
照美は、再び、携帯を見せる。前日に、由加里に送られたメールが映っている。

 昨日の今日だけどさ、明日、遊んであげるから、7:00までに、うちに来てよ。住所は、わかるでしょう? そんでさ、来る前に、オナニーしてから来てよ。
 もしも調べて、やってなかったら。 うちらが見ている前で、やらせるからね。                      P.S あそこに消しゴム入れてきてよ。じゃ、待ってるからね!あなたの親友より


 「さ・・・・・昨日の・・・・・」
由加里は、嗚咽を押し殺して、文面を読み上げる。
「日本語、読めるんじゃない」
「・・・・・・・!!」
 照美は、一瞬だけ笑って見せると、表情を凍り付かせた。
「ご、ごめんなさい!、お・・・・・おねがいです・・・・から」
「だったら、どうして来なかったのよ!!」
「ぅうぐ!!ひヒ!」
 照美の蹴りが、由加里の腹に命中した。もんどりをうって、床に、転んだ。
「誰が、姿勢を崩していいって言ったのかしら?」
彼女の凍るような声に、戦いたのは、由加里だけではない。有紀やぴあのも、心底震え上がった。

 「恋人との逢瀬でもあったのかしら?!あなたは雌犬だから、相手は雄犬ね?どんな雄犬だったのかしら?それとももしかして、雌犬だとか?あなたレズの変態だったのね」
「・・・・・・・・・・!!?」
―――――海崎さんはみんな知ってる!由加里は、常人の想像を絶する恐怖と恥辱の中で、這い回っている。
 「オネガイ・・・・・ですから・・・・・・」
由加里は、照美の奇麗な顔を上目遣いで見た。
照美は、由加里の背中を見た。白い肌が、激しく上下している。その下には、白魚のような筋肉が隠されているのだろう。

 「ホラ、早く正座をしなさい」
「ハイ・・・・・・・・うぐ」
性器に隠されたモノが蠢いたのだ。
「ぁ」
 由加里は、見せてはならないものを晒したような気がした。
「約束は守ってくれたみたいねどう?気持ちよかった?」
「・・・・はい」
「何がどうして、気もちよかったの!!」

 まるで、猫の目のように変わる照美の態度。そして、それに翻弄される由加里。
「・・・・ソ、ソーセージが・・・に、にし、西宮・・ゆか、ゆ、由加里のお、お、あ。おま。お○んこ・・・・ウウに、はい、入って、きも、気持ちよかったです・・・・・」
「それで、そんな風におもらし状態になっているわけね・・・・・隠さないの!!」

「ぃぐ!!痛いぃ!!」
 由加里は、その手をしたたかに踏みつけられた。即座に手をどけて、気を付けの姿勢をする。
「これじゃ、処女とは言えないわね」
「・・・・・!?」
「ねえ、由加里お嬢さんに、おたずねしたいんだけど・・・・・さ、処女って言う言葉の意味を詳しく教えてくれるカナ?」
 自分で言っておいて、この言いようである。

 「・・・ウウ・・・・お、おと、男の子と・・・セ・・い、言えません!!」
激しく首を振る由加里。涙があたりに飛び散る。
「ふうん?ねえ、ココ」
 照美は、手術用の透明な手袋を着けると、ビキビキとゴムの歌を響かせた。
「あなたの、汚らしいココを触るには、不可欠なものね、うっかり触ったら、エイズになっちゃう」
「そんな!わたし、エイズなんかじゃない!」

 「ふふ・・・」
――――まだプライドが残っているのね?かわいい。いじめがいがあるわ。
照美は、満足そうだったが、ここで制裁を加えないわけにはいかない。
「びし!!」
「ひっぐ!!」
 照美はサッカー選手よろしく、由加里の顎を蹴り上げた。
「照美!」
「・・・・!!」
はるかが、照美の長い足を防いだ。すんでの所で、二発目を受けずにすんだ。
「やりすぎだ。痕が残る」
「・・・・・・・・・・・・・・!!」
 有紀とぴあのは、心底驚いた。しかし、はるかだけは、照美を止められるのである。

 「ウウ・・・ぅう・・・うう!!」
激しく泣きじゃくる由加里に、はるかは、情け容赦なかった。
「なあ?折角、照美が優しく言ってんだからさ!」
「ヒイ・・・・・!!」
 はるかの体育会系の顔が、迫ってくる。イケメン。もしも、彼女が男だったら、みんなそう呼んだであろう。健康そうに日焼けした肌と引き締まった筋肉は。とても音楽をやるようには見えないが、ヴァイオリンの腕は、超級である。なかなか、止めることを義母が許してくれないのだ。

 「ほら?言ってみなよ」
「ヒ・・ハイ・・・・お、男の子と、せ、セックス!する・・・・ううう!」
「やってみるか?言い相手、紹介してやろうか?好きな犬を選びな、もっとも、犬の方であんたと交合したがるかわからんけど」
 とても、中学生の女の子とは思えない言葉がはとばしり出てくる。それには、照美ですら唖然としていた。
―――私の知らないはるがいる。
照美は、由加里をはげしく罵るはるかを見上げた。

 「じゃあ、ここで、やってみせてよ」
「ナ、何を・・・・・・・?」
頭(かぶり)を振って言う。
「だから、セックス」
「・・・・・?!」
 「西宮さんが欲しいって言うから、上げたんじゃない。あの本を、とっても恥ずかしい本、ふつうの中学生の女の子なら、とても見られないやつよ」
「そんな!日記を書くために、無理矢理に・・・・!」
すべて言い終わる前に、はるかの蹴りが、みぞおちに食いこんでいた。

 「あんたの大好きな男に、やってもらうことを像像してやってみせてよ」
「そんな!」
 それは、なんど照美に命令されても、従わない『オナニー』に匹敵する恥ずかしいことである。
照美は、驚いていた。ここに来て、はるかが積極的にいじめに参加しはじめたのだ。今間では一歩下がって見ていたというのに、どんな心境の変化かと、聞いてみたくなった。
「どうしたのよ、はるか」

 ―――ここで、それをやらせたら、オナニーをしないことを許していたのかわからなくなる。こいつにとって、オナニーはもっとも、恥ずかしいコトなのだ。それをやることで、完全な奴隷に堕ちることになる。
 「いやです!そんなの!いやです!!」
激しく拒絶する由加里。照美は、それを見るのが何よりも楽しかった。当然、オナニーはさせてみたいが、それよりも、恥辱と肉体的な苦痛の間での葛藤を見ているほうが、気持ちよかった。これは当然のことである。あなたが、もしも、男だったら、野郎のオナニーなぞ見たいと思うだろうか?
 
 「・・・ウウウ!ううう!・・・・・ゥウ・・・!」
オナニーをすれば、ひどい暴力を受けることはなくなるかもしれない。しかし、そんなことをしたら、もう二度と、本来の西宮由加里に戻れないと思った。普段のオナニーなら、そんなことはない。オナニーの時は、宙を舞っている由加里も、いったん終わってしまえば、本来の彼女に戻るだろう。しかし、人の見ている前で、それをしたらもう、完全に終わりだと思った。人間として、いや、女として終わりだと、直感で思った。
 しかし、照美は平然とした顔で言った。
 「だったらオナニーでいいからやってよ」
「・・・・」
 
 「何よ、その顔?なんなら、セックスやる?はるが言うとおり」
「いやです!いやです!ウウウウウ・・・ウウウ!」
「えー?オナニもセックスもいやなの?わがままな子ねえ」
照美は、あたかも、それが当然のように言い放つ。
「だって、ちゃんとオナニーしてきたんでしょう?」
「ハイ・・・・・」
 「だったら、同じことじゃない?何が違うの?」
「・・・・・」

 由加里は、何も言えずに泣き続けるたけだ。
「ぅっ・・・・」
照美の指が、きゅきゅと音を出しながら、由加里の膣を弄ぶ。小陰脚に、クリトリス、そして、内奥へと手袋の手は探検していく。
「本当に、使い込んだ膣ね、本当に処女なの?アナタ」
「る・・・・・ウウウ!処女です!ウウウ・・ウウ・ウウ・ググ・・ゥ・・・・ああ!」
 照美に、性器を弄ばれながらも、激しく否定する由加里。上品な鼻梁が上気して、赤みを帯びてきた。

 「もしもだよ、西宮さん、もしも、オナニーしてくれたら、もう殴ったりしないよ。約束する。教室でのいじめも止めさせてあげようカナ?」
 「ヒ・・・・・イイイ!うぐ・・・・グ!いやです!!」
はっきり言った。涙で視界は崩れ、いじめっ子たちの声も笑い声もハウリングしている。しかし、由加里は、確とした何かを得たような気がした。もちろん、味方は誰もいない。味方らしき人物はいるが、はっきりと信用できない。そして、家族には、頼るわけにはいかない。
 
 そうなっても、由加里は、ただひとつ確としたものを見つけたような気がした。
―――どんなヒドイ目に遭わされても、オナニーだけはしない。
これさえ守れば、西宮由加里でいられるような気がした。
 
 あくまで、淡い、そして甘い観測であった。

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『由加里 18』


 由加里は、帰宅するなり、風呂場に直行した。まだ、午後4時30分を回ったばかり・・・・・・・である。母である春子は驚いたが、何も言わなかった。
 びりびりという擬音は、本来、水に対してふさわしいものではないであろう。しかし、今、由加里が浴びているシャワーは、まさに、その擬音そのものだった。水が痛い。それは、汚れた少女の躰に当たって、無機的な音が木霊する。
 
「ううう・・・・ぅうううぅゥゥゥ!」
どれだけ押さえようとしても、嗚咽が零れる。同時に、熱い涙が頬を伝う。シャワーの温度は少女の躰が耐えられる限界を超えている。しかし、大きな瞳から零れる涙は、それをはるかに凌駕していた。
 思い出すのも汚らわしい記憶。それは、つい数十分前まで、彼女が体験していたことだ。同性による性行為。
 
しかし、そのことよりも、彼女に耐えられなかったのは、彼女自身の内面に係わることだった。こともあろうか、彼女の弱い部分が、似鳥かなんに膝を屈したのだ。
「ぅうううぅうう・・・・・ゥウウゥゥゥ!!」
 シャワーがタイルを叩きつける音、少のやわらかい肌を叩きつける音は、彼女の嗚咽を重なって不協和音を作った。それは悲しみの音楽である。

――――どんなに洗っても、一度付いてしまった汚れは消えない。似鳥かなんの唾液の臭いや細菌などが染みついて離れない気がした。しかも、そんな先輩を好きになってしまったのだ。当時の少女は、それを依存であるとかんがえなかった。溺れる者は藁をもつかむという感じで、しがみついた似鳥かなんだった。
 矛盾する二つの気持は、彼女を切り裂いた。
 「一体、1時間もシャワー浴びるなんて、どういうつもり?」
「ごめん・・・・・・・・」
それだけ言うと、由加里は、母親に背中を向けると階段を上がって、自室へと向かった。
「・・・・・・・・・」

 春子は、娘の背中が丸くなっていることを目撃しても何も出来なかった。あんなに、いつも胸を張って、元気だった由加里が、どうしてこんなことになってしまったのだろう?何度、自問自答しても、満足な答えは得られず、首をひねった。
 
 由加里が、部屋に入ってまず耳にしたのは、地獄からの呼び出しだった。携帯の鳴る音。それは、まず、彼女のかつての友人であることはありえない。それは、もとより、由加里が望んで止まぬことだが、すでに見果てぬ夢になっていた。
 嘘の誘いなどということもあった。約束の場所には、その友人は幾度待てども来なかった。果てに、送られてきたメールには次ぎのようなことが書かれていた。
 まさか、本当に来るとは思わなかった。あんたに友達なんているわけないじゃん。そうだよね、あんたが来るわけないよ。でも、あんたに似た女の子がいたんで、映しといたよ。よーく似ているでしょう?でも、あんたじゃないよね!でも、こんなきもい人間が、他にいるとも思えないんだ!それが不思議でね!

 
 添付された画像ファイルには、由加里がいた。哀れにも、ゲームセンターの前で、待ちぼうけを喰わされた惨めな少女が映っていた。あたかも、この世の終わりのような顔。すべてが、笑劇だった。この世の全てが笑っても、しかし、由加里だけは泣いていた。
 涙が止まらない。
 それから、誰も信じられなくなった。それから無視したメールが幾度あったか憶えていない。もしかしたら、その中に本当のメールがあったかもしれないと思うと、眠れない夜をすごすのだった。
 それには、理由がある。次ぎのようなメールもあったからだ。
 西宮さんってそういう人だったんだ。人が信じられないのね。これじゃ、友達になれないよね。とっても悲しいわ。せめて、鏡に映る自分と友達やってればいいよ。永遠に、さようなら。 もしかしたら ――――――― 一抹の希望は、一抹の不安とともにあった。

 携帯を開ける。やはり!海崎照美さん。
おそるおそるメールを開く。
 あなたって人は、約束を守ることもできないのね?親友として、恥ずかしいかぎりだわ。この際、あなたを教育する必要があると感じ入ったわ。最後のチャンスよ、これは!
あした学校の放送室に来て!もしも来なかったら、日記に書いてあったこと、全部、教室でやらせるからね。高田さんがアレ見たら、どれほど喜ぶかな?わかっているよね。それから、オナニーはやっておくんだよ。当然だけど!恥ずかしいトコロには、ケシゴムじゃなくて、ソーセージでも入れてくること。           
じゃ、あなたの親友より。

 ――――何処まで、私をいじめたら、気がすむの?もう、耐えられない!
しかし、由加里は、命令に従う以外の方法を見つけることができなかった。

 「・・・・ぁああふう!」
翌朝、6時に起きると、行為をはじめた。まるで、脅迫の通りに、男子も含めたクラスメートの目の前で、やっているかのような錯覚に襲われた。

―――どうして、私がこんなことをしなきゃいけないんだろう!?
「・・・・ぅあう!」
それでも、その行為が、少女に快感を与えることは事実だった。それがより、恥辱を感じさせる。その矛盾した思いが、かえって、少女を性欲へと誘う。膣の奥から、粘液がこぼれてくる。

 「・・・・ぅぅひィ!!ウウ・・・・」
果ててから、由加里は声を殺して泣いた。
―――私、人間じゃないみたい。人の命令で、こんなことさせられて、何も反抗できない。これじゃ、オナニーが好きだって思われても仕方がないわ。まるで、奴隷じゃない!
指を見ると、ねばねばした粘液が糸を引いている。

 「・・・・・もう、いや!」
由加里は、オナニーを終えると次ぎにやらなくてはいけないことを思い出した。それは目の前にある。ソーセージである。できるだけ小さいのは、これしかなかった。できるたけというのは、命令に制限があるからである。少なくとも、ケシゴムよりも大きい・・・というのである。
それが、このソーセージ、『マルタイの、元気になる肉棒』である。乏しいお小遣いから、320円をひねりだした。

  ちなみに彼女はロックのファンである、好きなバンドもひとつやふたつではすまない。お気に入りのCDを買い込んでしまうために、いつも「お小遣いがないない」と言っているたちなのである。それに加えて、本の虫と言われるほど、本が好きなために、常に金穴の憂き目にあっている。決して、家が貧乏だからとか、親に愛されていないから・・・ということではない。

 由加里は、その一つを自分の性器に押し当てた。そして、一気に押し込める。既にオナニーの後のために、容易に胎内まで入ってしまう。由加里はくぐもった声をあげる。それはほとんど、人語から離れている。
「るくっ!ぅああ!!」

――――食べ物をこんなことに使ってしまう。
それは、少女に少なからず罪悪感を与えた。少女が育った環境から言えば、当然のことである。両親は、少女を深い愛情の元に育てたのである。

 「あ、もう6時半!はやくいかないと」
由加里は、制服を着終わると、自室を後にした。階段を駆け下り、廊下に足を伸ばしたところで、母親の声がした。
 「忘れてないでしょうけど、今日は由加里の誕生日だからね、6時までには帰ってくるのよ、主人公がいなかったら、話しにならないわ、冴ちゃんも帰ってくるって」
一体、何処の世界に、妹の誕生日ごときで、実家に帰る大学生がいるだろうか?由加里は、周囲に愛されて育ったのである。しかし、そんな母親の声が、由加里には、重くってたまらない。深い愛情にくるまれた言葉を受け止めるには、あまりに不幸で、惨めすぎた。

  「うん、わかった」
小さい声で答えると、玄関を後にした。
涙が既に、長い睫を濡らしている。少女は、これから自分に起こることに、身震いした。照美やはるか、それに原崎有紀や、似鳥ぴあの顔が浮かぶ。いじめっ子たちの笑顔だ。それに、いやらしい笑い声が重なる。
 その中で、一番怖いのは、照美だ。しかし、はるかの押し黙ったような無表情も怖い。それに、後の二人の伴奏のような笑い声も、無視できない。それらは、ひとつの音楽を作っている。少女の好きなロックで言えば、ヴォーカルとギターが照美とはるか、そして、後のふたりがベースとドラムを担当する。

 「・・・・そんな!!」
――――大好きなロックで、いじめを表すなんて!
由加里は、まるで、ねばねばしたコールタールが覆う道を歩いているように思えた。少女が小さいころ、母親に読んでもらった絵本に、そのような内容があったのである。
絵本の中では、コールタールの中に押し込められ、身動きできない状態にされた主人公の話があった。由加里は、自分がそのような情況に追い込まれることを想像して、オナニーをしたことがある。
 その時は、よもや、将来、それも近い将来に、そのような情況に追い込まれることを想像することはできなかった。

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『由加里 17』
 似鳥かなんが、選んだのは、とある空き屋だった。
「・・・・」
「何しているの、入ってきなさいよ、はやくいじってほしくてたまらないんでしょう?」
「そ、そんな・・・・・・・・」
意地悪く言うかなん。
 
 由加里は、見えない鎖に何十にも縛られているのだ。彼女を所有する、何人もの主人のうちのひとり・・・・・である海崎照美の奇麗な顔がよぎった。それでも、今は、目の前にいる主人に従わないといけない。
「空き屋のわりに奇麗でしょう?子供のころからあるのよ、ここ。秘密基地にしてたんだ。まさか、当時はこんなことで役に立つとは思わなかったけどね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 たしかに、殺伐とした外見と違って、中はわりと奇麗だった。ベッドには、比較的奇麗なシーツが掛けられている。それでも、歪んだ家具に乗せられたグラスで、コーラを飲む気にはならない。制限された陽光に照らし出されたグラスには、砂や泥が薄く付着しているからだ。
 
 「せ、先輩・・・・・・」
「どうしたの?私に、何か主張したいの?」
かなんは、激しく責めてくる。白いジャガイモみたいな容姿が真剣になると、これほど滑稽なものはないが、このような事態では、そんなことが考えていられない。
 
 「何も、言えないの?だからいじめられるのよ!」
「う!・・・・・・ゥゥ!」
思わず、痛いところをつかれ、泣き崩れる由加里。
 「ごめんね、あなたを傷付けるつもりはなかったんだ」
「・・・・ウウ・・ウウ・・うう!!」
激しく泣き続ける由加里。
「え?ィヤアア・・・・・・!」
かなんは、由加里の来ているYシャツを脱がしにかかる。ボタンを取ると、まず胸をはだけさせる。
「え!ノーブラなの?」

 「ィヤアアアアアア!見ないで!」
例え、同性だからと言って、いや、同性だからいやな感覚もあるのだ。
―――あれ?こんな小学生みたいなムネじゃそんなのいらないか。という言葉を、かなんは呑んだ。
 これ以上、侮辱したら壊れてしまうと思ったのだ。

 鎖骨の窪みに、ミルクが溜まっている。少なくとも、かなんにはそう見えた。そこに汗が溜まって、胸にむかって零れていくのだ。
「男の子みたいねムネも可愛いいわよ」
 「せ、先輩!」
たまらなくなって、そこに口を付ける。

 「うぐ・・・・・」
由加里は、一体、自分が何をされているのか理解できずに、うめき続ける。この先輩は、彼女が理解できない欲望に、身を任せているのだ。由加里は、年下の少女にこのようなことをしたいとは思えない。
「ィウゥウッゥゥ・・・・・うう!」
かなんの行為は、由加里の常識を著しく逸脱しているのだ。
「ァアア!」

 愛撫は、臍をさらに下降し、パンティまで達した。
「何これ?まるで、おもらし状態よ!おむつが必要ね、由加里チャンは」
何故か、呼び名が代わった。それもまるで、赤ちゃんが、ペットにたいして呼ぶようなニュアンスである。
 「ァアアゥ!!」
こともあろうか、濡れそぼった下着の上から、局所を舐め始めたのだ。それは、直にそうされるよりも、強い刺激にまとわりつかれる。逃げようとすると、かなんに上から押さえつけられた。
「動かないの!!」
かなんに、華奢な由加里が抵抗するのは不可能だ。

 「ァアあ!」
そして、ついに、下着は完全に脱がされてしまった。恥ずかしいところが顕わになる。
「まア!赤ちゃんみたいな・・・・・ココ、全く毛がないなんて!」
あたかも、珍しいモノを目の前にしたように、拍手をするかなん。
「いぃいやああ!み、見ないで、見ないでくださいぃい!」
「あ!出てきた!かわいらしい!」
かなんが見たものは、白いケシゴムだった。あたかも、新芽が顔を出したように見える。
「こんなもの、いつも挿入れているのかな?」

 「ち、違います!ゥウ!」
両手で、顔を覆って、激しく恥ずかしがる由加里。
「じゃあ、どうしてこんなものがあるの?わからないから、先輩に教えてくれないカナ」
高田と金江あたりの名前が頭をよぎったが、わかっていて、意地悪な質問を続ける。
「むぐうゥウ!」
「あははは、本当におもらし状態ね?」
かなんは、ケシゴムを取り出して見せた。そして、こともあろうか、舐めてみせたのである。

 「ひ、き、汚い・・・・・!」
「そんなことないわよ、可愛らしい由加里ちゃんのだもん」
「・・・・・・」
照美たちは、汚くて臭いと罵った。しかし、目の前の先輩は違う。
「・・・・・・・・」

 中2になってから、加え続けられた精神的、肉体的両面にわたる虐待の日々は、あきらかに少女から何かを奪っていた。それは、バランスの取れた思考能力だったかもしれない。
――――――――この人は、もしかして、本当に自分のことが好きなの?
「似鳥先輩・・・・・・」

 「由加里ちゃん」
かなんは、由加里の口元にいっきに、自分を近づけた。そして、唇を奪う。由加里にとっては、ファーストキスだった
 ―――――大事な、ファーストキスの相手が同性だなんて!少女の心の何処かが、そのように騒いだが、これまでのいじめの日々は、明かに少女を根本的に、変質させていた。もはや、以前の西宮由加里ではなかった。
 
 「ねえ、あたしのこと好き?」
「好きです!好きです!に、似鳥せんぱい!!ゥウウウ・・・・・アアアあああ!!」
由加里はかなんに身を委ねた。首にしがみつくと、激しく号泣しだす。本来ならば、それは、相手が違うはずだった。しかし、手軽な他人に対してそれを行ってしまったのである。
 
 母親をはじめとする家族は、由加里にとって重荷でしかない。いじめられている事実を知られたくない。それは自立の第一歩ではあったが、この場合、悪い方向にしかベクトルは示していない。いじめられている子が自殺するのは、このような自縄自縛によって自滅するのである。もしも、一歩進んで、親に身を委ねていたら、そのような事態にならなかった案件は無数だろう。
 
 「クッグ!」
 かなんの唇は、由加里の口を吸い、その舌は、少女の口腔を探検する。
いじめられっ子は、この時、ひさしぶりに人に接したような気がした。無視され、すべてを否定された少女が、そのような感覚を取り戻したのが、哀れなレズ行為とは笑うしかない。もっとも、かなんのように積極的なレズ行為ならば、それは違うだろう。しかし、由加里は違う。良い例えなのかわからないが、金持ちが道端で見つけた100円に拘るだろうか?しかし、乞食ならば、争ってそれを得ようとするに違いない。今の由加里は、惨めにも後者なのである。
 
 だから、ふつうで考えたら異常としか良いようのない、かなんの行為も、自分への愛の表現だと受け止めた。
 「ィアゥアアア・・・・・あ」
かなんは、由加里の脇の下に口を付けたのである。
「奇麗に処理してあるのね、あれ?もしかして、生えてこないの?」
「ハイ・・・・・」
恥ずかしそうに俯く由加里。
「いいのよ、可愛いわ」

 「グアアゥ・・・ゥアアあああ!!!」
右手で由加里の膣を愛撫しながら、脇の下に唇を這わす。それは、あたかも蛭のように、少女の白肌に吸い付く。ただし、吸うのは血ではない。少女のプライドである。
 「ぅうう・・・・・・・うぅ!」
 自分の脇の下を、なめ回される感覚。ほんらいならば、おぞましいはずだ。しかし、由加里は喘いだ。あきらかに、官能を感じている。官能は、麻薬よろしく、ツライ体験を忘れさせてくれる。それがかりそめだったとしても、少女が、いじめられっ子であるという惨めさから、解放してくれるのだ。
 彼女は、たった1時間あまりの快楽と情愛のために、全人格を売り払おうとしているのだ。
 「とっても良い味がしたわ」
 かなんは、さんざん由加里の脇の下を舐め尽くすと、今度は、少女の右首の付け根に背後から、口をつけた。
「るゥアぁ!」
「ふふ、何て言う声をあげるの、由加里ちゃんたら」
 完全に、幼い肢体を自分のものとすると、乳首に手を付ける。

 「むひい!」
「あそこが、過剰に敏感な子は、ココも敏感なのね・・・・・はぅ」
そして、自らの性器を由加里に尻に押しつけてピストン運動を始める。このとき、はたして、かなんは自分が男であったらいいと思ったろうか?
 それとも由加里とあくまで同性の立場で、攻めたてたいと思っているであろうか?
「ウググググ・・・・・・・あああ!!」

「イヒ・・・・ゥウウアアアあああ!!」
ふたりは、ほとんと同時に・・・・・・・・果てた。

 「大好きよ、由加里ちゃん・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・!」
 由加里は、ここに来て、はじめて自分が何をしたのか知って唖然とした。
かなんは、相変わらず由加里を食い尽くさんばかりに、しがみついてくる。その圧力に、少女は押し潰されそうだ。ふるえが止まらない。
「大好き!由加里!」
由加里は、全身をかなんに舐め尽くされ、その唾液だらけにされた。足の指の間から、それこそ、耳の中まで、至る所まで。
 それは果ててから、2時間20分も後のことだった。
 
 気が付くと、空き屋にはオレンジ色の光が差し込んでいた。
「私は帰るわね」
「・・・・・せんぱい」
由加里は、帰えろうとするかなんの背中に恐るべきことを言ったのである。
「わ、ワタシノコト・・・・好きですヵ?」
「もちろんよ、これが証拠」
「・・・・・!!」
 それは、お別れのキスだった。しかし、それほどまで上気した彼女ではなく、あくまで事務仕事をこなすような冷たさだった。
 




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『由加里16』
 
 「なあに、朝から出かけるの?休みなのに」
春子は心配になって、娘の背中に声をかけた。
「由加里姉ちゃんたら、早いのね」
妹の郁子は、眠い目を擦りながら部屋から這い出てきたばかりだ。

 由加里は、二人にろくに返事もせずに玄関に急ぐ。
 「言ってきます」
その声は、あまりに弱々しくふたりの耳に届くことはなかった。
 由加里の脳裏には、昨日、パソコンに入っていたメールが映っている。
 昨日の今日だけどさ、明日、遊んであげるから、7:00までに、うちに来てよ。住所は、わかるでしょう? そんでさ、来る前に、オナニーしてから来てよ。
 もしも調べて、やってなかったら。 うちらが見ている前で、やらせるからね。                      P.S あそこに消しゴム入れてきてよ。じゃ、待ってるからね!あなたの親友より


 親友という文字が、なぜか目の裏に焼き付いて離れない。かつては、香奈見にしか使ってこなかった言葉だ。このメールの差し出し人は言うまでもなく海崎照美だ。
―――休みの日まで、いじめようというの?だけど、もしいかなかったら、教室でクラスのみんなの前で恥ずかしいコトをさせられるかもしれない。
 これまでも、十分させられているのだけど、それは性的ないじめとはちがう。下着姿を見られるだけで、あんなに恥ずかしいのに、男子もいるばしょで、全裸にされるなんて。考えただけで、顔から火が出そう。そんなことになったら、とても生きていけない。

 「ぁ」
 時間厳守ということが頭にあるために、思わず足の動きが早まってしまう。そのために、股間の異物が蠢く。それはまるで独立して意思を持っているかのようである。
 オナニーをした上に、消しゴムを膣に押しこんでいる。
「ゥウ・・・・」
 あまりの恥ずかしさに消えたくなった。

 ―――どうして、こんな目にあわないといけないのだろう?中2になって、何度これを自問自問いしたことだろう。
 ひどい目に合うたびに、答えの出ない螺旋を急降下していくだけである。

 それでも、由加里は、先を急いだ。予め住所は調べてある。はじめて行くばしょだけど、あの当たりには、友達がいる、いや、かつての友達・・・・・・・・・だ。かつてと言わねばならないことに、由加里は、悲しくてたまらなくなる。大きな瞳が思わず潤んでしまう。
 
 学校が見えた。海崎照美の家は、この向こうだ。しかし、学校は避けねばならない。なぜならば、土曜日も部活はあるからだ。もし、部員にでも見つかったらどんなひどい目に合わされるか ―――――とにかく今は、照美の命令に従うことしか頭にない
 
 遠目に、学校の赤い塔のてっぺんが見えるころ、由加里は自分の名前が呼ばれるのに気づいた。びっくりして、そちらの方向を見る。
「似鳥先輩・・・・・・・・・」
「二宮さん」
 後輩にさん付けする優しい人だった。妹のぴあのとはだいぶ性格が違うようだ。少なくとも、このときの由加里がそう思っていた。
 「部活、こないんだ」
 「・・・・・・・」
 具合が悪くてとは言えなかった。こうして、競歩のように急いでいるのだから。それでも、何とかいい訳を捜さないといけない。
 早くしないと7:00までに照美の家につかない。
「そうよね、たまにはさぼりたいよね」
「・・・はい」
 曖昧に答えた。
「あの、先輩・・・・」
「どっかに予定があるんだ」
意味ありげに笑う似鳥。こんな顔は妹そっくりだ。

 「あの、行ってもいいですか」
おそるおそる聞いてみる。
「だめ、これからあなたの腕をつかんで連れて行っちゃう」
「・・・・・」
「でも少しだけ付き合ってくれたら、許してあげようカナ」

 このとき、由加里は相当焦っていたので。似鳥かなんの意味ありげな態度に気づかなかった。もっとも、冷静であっても気づかなかったかもしれないが。
 「じゃ、何処か行こうか冷たいものでも、おごるからさ」
「ヒッ」
 かなんに腕をつかまれた。そのなまめかしい冷たさにぞっとする。
「なあに?あたしがイヤなの?」
「いえ・・・・・・」
もはや、由加里に選択肢はなかった。

 結局、由加里は、歩いて20分ほどかかる喫茶店に連れて行かれた。
 「一番奥の席がいいわね。好きなの注文してよ」
 「じゃ、オレンジジュースを」
「あたしは。アイスコーヒーを」
マスターに注文すると、品物を持っていく。セルフサービスなのだ。
「え?」
 紗耶香は驚いた。互いに、顔を向き合って座ると思ったのだ。ところが、由加里を奥に押し込めるとその横に座ったのだ。そして、あろうことか、身体を寄せてくる。かなんの胸が押しつけられる。中学生にしては、大きめの乳房が制服の上からでも、はっきりとわかる。そんなうちに身体が火照ってくるのを感じる。
 「私服ってことは、最初から部活をさぼるつもりだったんだ」
「え?」

 由加里は、突然の質問に反応できなかった。気分をおちつけるために、何とか、ストローを銜えようとする。しかし、唇が上ずってうまくいかない。何回が試してやっと成功できた。そして、冷たい液体を喉に押し込んでも、火照った体は、冷えることはない。かなんがたえず、その身体を押しつけてくるのだ。脇の下を汗が流れるのを感じる。それが過剰な冷房によって冷やされるのが気持ち悪い。
「あ、あの・・・・・・」
「なあに?西宮さん」
かなんは、その行為がいかにも当たり前のように押しつけてくる。
「ぁ・・・・」


 その時、股間が疼いた。そう、オナニーをした上に、消しゴムを押し込められた性器。そこはもう、濡れそぼってお尻まで濡れてしまっている。ビニールシートの冷たい感触をあいまって、不快さは増大するばかりだ。
 
 もしも、こんなことが先輩にばれたりしたら・・・・・・・・・・・・・・・。

 「せ、先輩・・・、お、お願いっですから」
――――行かせてくださいとは言えなかった。ジュースをおごってもらっているのだ。
「ねえ、西宮さん、友達ってどう思う?」
 それは、由加里には残酷な質問だった。
「・・・・・・・・・・・」
「私はねえ、とても大事なものなだと思うの」

 ねっとりとした言い方が、気持ち悪くてたまらない。香水の匂いが鼻を突く。
「そもそも、香水とは体臭のきつい欧米人のためにあるものであって、日本人には不要のものだ」 とは誰の台詞だったろう。突然、その声が聞こえてきたのは、由加里の無意識に潜む自己防衛システムだったかもしれない。
 「西宮さんも、友達作ったらいいと思うな」
「・・・・!」

 わかっていっているのだろうか?かなんは、自己の身体をすりすりとゆすりながら、引き寄せてくる。微妙な身体の感覚に、虫酸が走る。この先輩は、部室でいじめられている時に、一緒にいた。どんな顔をしていたのか憶えていないけど、何もしてくれなかったのはたしかだ。
「私が口聞いてあげようか、そうだ、ぴあのはどう?性格にすこし問題ありだけど」
自分のことは棚に上げて言う。
「ひ」
 その時、右の大腿にかなんの手が触れた。そして、撫で回しはじめた。そして、スカートの中にまで入りそうな勢いだ。それだけじゃない。顔を首に押しつけてくる。
「ィいやぁ・・・・・や、やめ・・・・ウウ」
「何を止めて欲しいの?」

 かなんは、由加里の耳にふっと息を吐きかけると、囁いた。

 「ぉ、お願いですから・・・・」
「言いなさい、何を止めて欲しいの?私は友人どうしのお肌の触れあいをしているだけど?」
かなんの愛撫は、しだいに節度というものを失っていく。ついに、彼女の手は、由加里の股間に到達した。
「ぁああぅ・・・・ぃやぁ・・・!!」
「あれ?どうしたの?ココ、湿っているよ?パンツ、まだ乾いていないのカナ?だって梅雨時だもんね、仕方ないカ」
――――何もかもわかっていて、このような言いぐさだ。身体的ならぬ、精神的にも責めてくる。これじゃ、いじめっ子たちと同じだ。

 「かわいい・・・・・・そういうの好きよ」
「ぅぐう!」
 かなんはの指が、股間に食い込んだ。下着ごしだったが、かすかな異物感に、眉をひそめた。
「アレ?西宮さん、何か入れているの?生理じゃないよネ」
かなんは、恥辱の言葉を、手と同時に、休むことなく繰り出してくる。
「ぃやぁ・・・、お、オネがいですから・・・・・・ゆ、許して・・・・・クダサイ」
「じゃあ、言ってごらん、コレは何?」
「・・・・・ケ、ケシゴムです」
「どうして、そんな物を?」
「・・・・・・・・・」


 かなんは、意地悪く笑うと続けた。
「じゃあ、ここで、みんなに知らせてあげようカナ。ここに淫乱な中学生がいますって、恥ずかしいところにケシゴムを入れて、欲情しているって・・・・・」
「ひ!!お、お願いですから」
「見てみなさいよ、コレ」
 濡れた指を由加里に見せる。指を動かすと糸を引く。そして、鼻を近づけて、わざとらしく嗅いでみせる。
「ううぅ・・・」
肩を狭めて、しくしくと泣き出す由加里。あまりの恥辱のために何も言えない。二重にも、三重にも縛られているのを感じる。何処にいても、何をしていても、いじめっ子たちの手から逃げることは・・・・・できない。
「出ようか?場所を変えようか」
「ハイ・・・・・」
消え入りそうな声で、そう答えるしかなかった。すでに、魂を抜かれて、ただでさえ華奢な躰はフラフラと風に揺れていた。


 由加里が、かなんに陵辱されているそのとき、照美はどうしていたのだろう?
はたして、彼女はほとんど瞬きもせずに、テレビ画面に見入っていた。同時に両手をしきりなく動かしている。
 テレビゲームに興じていたのだ。
「ねえ、照美、西宮さん来ないんだけど」
「アレ?きっと、今日は来ないよ」
「何?」
はるかは、照美の言い方にあまり驚きを示さなかった。
「もしかしたら、来るかもしれないけど、あれの性格からして来ないね、いや来れないよ」


 似鳥ぴあのや原崎有紀は、しびれをきらして、すでに帰宅してしまった。
「何か、たくらんでいるな?」
「あんたもわかってたはずよ」
「似鳥先輩か」
「狙っていたのは知ってたんだ」
照美は、ゲームが一段落したのか、ポテチに手を突っ込んだ。
「それにしても、あの変態を使ってやるとは、そうとうあくどいな」
「やめてよ、水戸黄門みたいな言い方は」

 ポテチをがりがりとかみ砕きながら、言った。




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『由加里 15』
 「由加里!どうしたの!?」
「ママ・・・・・・」
春子は、娘の顔を両手で包んだ。そして、その顔を眺める。由加里は、思わず目をそらす。
「由加里ぃ!」
「か、母さん・・・・・あ!ああああっっぁあああ!!」
 由加里は、いきなり、母の胸に飛び込むと号泣をはじめた。
しかし、ひとしきり泣くと寝付いてしまった。

 「一体!由加里に何があったっていうの!!」
「母さん、そんなに興奮しないで」
 冴子は、母親の肩をそっと叩いた。感情を抑えるために、話題をそらそうとする。
「郁美はどうしたの」
「・・・・・・・お父さんとご飯食べてるわ」
「母さん、そんなに運転上手くないんだから、気を付けないと」
「そんなこと、まったく、頭になかったわ」

  春子は、寝付いてしまった娘を抱き上げると、冴子を促して、一緒にベッドまで連れて行った。由加里は、泣きすぎると寝てしまう癖があるのだ。その時、春子は本来なら、見てはならない物体を見てしまった。西宮家においては、本体どころか、カタログすら存在を認められない代物である。
 
 「冴子、あれ!どうしたの」
「え?ギターだよ、バンドはじめたんだよ」
 唖然とする冴子。
「お父さんが知ったらただじゃすまないわよ」
「国立の医学部に現役で入って、なお文句言うのかな?」
「それもそうね・・・・・・・・それよりも由加里のこと、一体、何があったの」
「わからない。何も言わないんだ、ただツライって」
 冴子は携帯で連絡を受けて、直で、車を飛ばしてきたのだ。1時間30分はかかるところを1時間で到着してしまった。道路は好き具合があるとはいえ、異常であることにかわりはない。

 このとき、妹が成績で悩んでいるなどと、安易に言ったら、すぐに春子は見抜いていただろう。

 「こう見えて、プライドの高い子だからねえ」
春子は、おとなしげな娘の寝顔を撫でながら言った。
「・・・・・・ねえ、母さんはもう食べたの、台所行こう」
「うん」

「母さん、憶えてる?はじめて出会ったときのこと」
「憶えてるわよ、この世でこんなに可愛らしい女の子がいるのかと思ったわ」
春子は目を閉じて笑った。
  「ふふっ」
 ――――思い出したように笑う二人。
 この間に、起こった空白は、二人、そして、父である和之の間でしか理解しあえない間合いである。
 「眉間に、ピザを投げつけられたわね」
「私は母親がいながら、母親っていうものを知らなかったのよ、だから突然、母親が現れても対応できなかったのね」

 「お前を家から出したのは今でも後悔してる。9年間、そう9年間も出会えなかった時間があるのに、そのぶんだけ一緒に暮らしたかった――――なんてね」
冴子は、舌を出して見せると、立ち上がった。そして、おもむろに、寝室に向かった。
帰ってくると、なんとギターを手にしていた。

 「あんたがギターとはね、音楽をあんなに嫌っていた、お前が」
「え?母さん?!」
冴子は驚きを隠せなかった。冴子の右手が音楽を奏で始めたからだ。その手つきは、あきらかに手慣れた動きだった。
「禁じられた遊びとは・・・・・」
「手は憶えているみたいね、あんたたちが異常に、音楽を嫌うから、やれる機会がなかったのよ」
「この曲はどう、最近、聞いた曲なんだけど名前がわからないの」
「・・・・!?」
 
 その時、春子は怒りに身を震わせた娘を目撃した。
「やめてよ!あんな女の曲なんて聴きたくない!」
「そうなんだ・・・・・・・・」
春子は、すべてを理解した顔で、娘の顔に手を持っていった。
「・・・・・!?やめてよ、もう19歳よ!」
「幾つになっても、娘は娘よ!」
先ほど、由加里にやったほうに両手で娘の顔をすっぽりと包み込んだ。
「由加里のプライドの高さは、お前とそっくり」
「ただし、直情径行すぎるって言うんでしょう」
「あははは、当たり!」
 
 そのとき、由加里がやってきた。
「もう、由加里ったら、あんたのせいでお腹スキスキよ」
春子は、内心の不安を隠すような言葉を述べた。
「ごめん」
 既に涙は乾ききったようだ。もちろん、切り裂かれた心が元に戻ることはないが、家族の愛情に接して小康を得たようだ。
 しかし、愛情が、温かいと感じられれば、感じるほど、教室での煉獄の冷たさを実感してしまうのだった。
「ほら、また暗い顔する。ママはあなたの笑顔が何よりも好きよ」
「うん」
励ますことがいけないことは、わかってはいるが、どうしてもそうしてしまう春子だった。
 

 一方、海崎家では、百合絵による音楽修行が、ようやく終わりを告げていた。
「疲れた・・・・・これじゃ3時間走らされた方がましだよ」
時計を見るとすでに午後10時を過ぎている。
「私なんて、週に二回よ。それもママの気まぐれで・・・・・・」
「百合絵ママ、仕事が不規則だもんな、暇なときでは、学校がある日でも旅行に行くって言い出すしな」
 それには、はるかも恵みを得ているのだ。百合絵には、海外にすら連れて行ってもらったこともある。それには、照美が入っていないときすらあった。
 「今回は、あんたと行きたいの」の一言ですべてが決まる。誰も、その強引さには二の句が次げない。
 「ウウウウ・・・これじゃ、ゲームやる気力もない」
 「ゲームの音楽すら不快よ、でもさ、クラシックの奴らってこれを乗り越えてやっとプロになるんだろ?考えられないよ」
 「こんなものじゃないっておばあちゃんが言ってた。だって、ママは、元クラシックのソロだったんだもん」
 
 照美も、心底疲れたという様子で、枕に顔を埋めた。奇麗な顔が形無しである。
「あした、あいつをいじめて楽しまない」
思い出したように言い出した照美。頭の中には、憎い由加里がヒイヒイ言って泣いている姿が去来している。
「あした?土曜じゃないか」
照美は、何かを押し出すように笑った。
「だから、呼び出すのよ」
「何処に?」
「ここに」
「しかし、いい加減テニス部の連中も黙っていないだろう?」

――――何を言っているの?という顔をする照美。
「そうやって、あの人たちのストレスを貯めていくのよ。そうすれば、回り回って、あいつを追い込むことになるわ。それに、ミチルとのこともあるし」
「ミチルちゃん!?」
はるかは、もちろん幼いときから、ミチルのことは知っている。いや姉妹と言ってもいい仲だ。
 
 「あの子、何故かあいつのこと聞いてくるのよ、探りを入れてくるって言っても良いわ」
「まさか、背後に高田がいるとは思わないが」
「それはないわ。何か、あいつを庇っているように思えるのよ」
「だって、先頭を切って、いじめているんじゃないのか?たしか飼育係だったよな」
「とにかく、呼び出すの、ママは仕事でいないし」
 
 はるかは、この広い家の中で、由加里をいじめることを思い浮かべた。いくらでも好きなことができそうだ。しかし、彼女は、自分でも気づかないうちに、由加里いじめに、自分が浸っていくのを感じて戦いた。
―――私たち、とんでもない泥沼にはまっていくのではないか?

 「ぴあのと有紀も呼ぶわよ、当然、あれもしたいし、これもしたい」

ウキウキしながら、踊っている親友を見ながら、ひとりだけ闇黒の世界に残されているような気してならなかった。

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『由加里 14』
 由加里が窓の外に消えてから、しばらくしてドアをノックする音がした。
「照美、来たな」
「うん」
目で合図する。
 
 原崎有紀が、鍵を開ける。
待っていたとばかり、ドアが開く。
「あ、海崎さん、西宮は?」
「いないよ」
素っ気ない声が、部屋の中から聞こえる。
「ごめんなさいね、ミチルが取りに行くはずだったのよ」
「どうして、待たしておかなかったのよ」
抗議の意思を顕わにする。
「あれは、あんたたちだけの持ち物じゃないのよ」
 それに横やりを入れたのは、はるかである。あきらかに、高田を見下した態度で、口を開く。
「でもさ、それ似合ってるよ、私よりも下手なくせに、なんでかな」
「何ですって!?」

 予期せぬ言葉に、激しく気色ばむ高田。部活中と見えて、当然のごとくテニスウェアだ。
「いやあ、ごめん、プライド傷付けちゃったな?」
鋳崎はるかは、頭をふりながら笑う。はるかは、尋常ならぬ運動神経の持ち主である。部活に打ち込んでいるせいか、成績では、叶わないがスポーツでは、完全に照美を凌駕している。よもや、高田ごときに負けることはない。先だっても、体育の授業において、高田を惨敗に追い込んだばかりだ。
 
 「そんなこと言っている場合じゃないでしょう?西宮さんを共有するっていうのは、前からの約束だったじゃない」
金江礼子である。
「だから、ミチルが取りに行ったって」
「本当なの!?」
 疑念の視線を送る。
「じゃ、私らは、帰るわ。たっぷり楽しんだし」
「ああ、はるか」
 ワナワナと震える高田を横目に、はるかは火に油を注ぐような言葉を残していった。
「あのサーヴィスじゃ、小学生だってポイントとれないぜ、せいぜい精進しな!あははははは」
「・・・・・・・!?」
 高田と金江は、二人に笑われながら部屋に残されることになった。原崎有紀と似鳥ぴあのは、できるだけ、高田と目を合わせないように、小走りに去っていった。


 その時、由加里は家路を急いでいた。
メールを見ながら、泣いている。
「公園で泣いてから帰ろう」
 太陽が、その恵みを引き払いつつある時刻。由加里は、ひとりブランコに乗った。かつて香奈見と笑いながらここにいた。とても楽しかった。それが、何十年も昔のことのように思えた。周囲のすべての物が自分から遠ざけられて、宇宙の真ん中に宙づりにされてしまったかのように思えた。

 「ミチルちゃん、ごめんね!うううっ・・・・・」
メールにはこう書かれていた。
「帰ってもいいですよ。いえ、帰ってください。もう、耐えられなくなっているのわかります。私は大丈夫ですから!高田先輩はわたしには何も出来ませんから」
 「・・・・・・・うう、どうしたらいいの?!どうしたらいいの?!あ、そうだ」
由加里は、立ち上がるなり財布の中身を確認した。


 そのころ、照美とはるかは照美の家にいた。学校をはさんで、由加里の家は、ちょうどあさっての方向にある。
「百合絵ママ、またチーズケーキ焼いたの」
「そうよ、また由紀子たちは、仕事が忙しいっていうから」
はるかは、照美の母親に言った。百合絵は、はるかとは何の血縁関係もない。血のつながっていない姪でもない。にも係わらず、百合恵に対して、はるかは準娘のようにあつかっているのだ。

 それは、照美とはるかが、常ならない友情関係に結ばれているからだろうか?二人が出会ったのは分娩室のベッドだった。たまたま、ベッドが隣同士だったのだ。
 何でも、出会ったその瞬間から、手を握りあい。友人としての契りを結んだらしい。
そのように二人は、大人たちから聞いていた。それを鵜呑みにしたわけではないが、他人から見れば、うらやむほどの友情をはぐくんできた。

 しかし、それは相手に対する過保護というマイナス点をも生み出すことになったのだ。ここまで来たら、疑似血縁というレベルを超えていた。
 両親どうしは、このとき知り合った。別に昔からの親友同士という仲ではなかった。にもかかわらず、それからは、家族ぐるみの付き合いをしているのだ
 
 だから、はるかは百合恵ママと呼び、照美は由紀子ママと呼ぶ。
「美味しい!さすが、百合恵ママ、どっかの誰かとはレベルがちがうよね」
「ふふ、由紀子ママだって美味しいよ」
照美は、けっして学校では見せない顔をしていた。あふれんばかりの優しげな笑みは、誰もクラスメートは見たことがないだろう。ただ、はるかを除いては・・・。

 それは、はるかも同じだった。学校では仏頂面しか見せていないのは、彼女こそかもしれない。
『たてもの探訪』とかいう番組があるが、このダイニングキッチンは、それに紹介されてもおかしくない豪華さを誇っている。料理をするには、広すぎるほどの面積。それは。プロの料理人が見ても、その設備は文句を言わないだろう。とうてい、ふつうの主婦では、その真価を引き出すことはできないだろうと思われた。
 
 「ねえ、ヴァイオリンは持ってきたんでしょう?はるか」
百合絵は、晩ご飯の用意をしながら言った。
「うん、照美の部屋にあるよ」
はるか、返事をしながら思った。百合絵の容姿である。そして、照美のそれを見比べる。そして、誰かの顔を想像中で横に置いてみる。
―――――似ている!似ていない!でもどうして?
「どうしたの?はるか?」
「―――ううん」
 
 気づいていないの?あいつと百合絵ママが似ていることに。気づいているから、あいつを憎んでいるんじゃないの!?
 頬から顎のライン。それは宮殿の欄干のように、優雅な曲線を描く。
「気持ち悪いわね、人の顔をじっと見て」
「いや、何でもないさ、ただクリームがついているなあと思って・・・・」
はるかは、ごまかしたが、隠しきれるものではない。
「でもさ、晩ご飯の後、覚悟してる?」
照美は、しかし、彼女の方から話題を変えた。
「ぼ、防音装置壊れてるんじゃなかったけ」
「昨日、治った」
照美は、あっけらかんと言い放つ。
 
 百合絵は、女性には珍しい作曲家である。若いころはソロでならしていたが、途中で、作曲に転じた。最近では、クラシックを離れ、ポップの世界に手を出して、かなりの成功を収めている。有名なアイドルに相当数の曲を提供している。

 「じゃ、今日、帰るわ、宿題やってないから」
「ここでやればいいじゃん、もう暗いし女の子が一人で歩いていい時間じゃないわ」
はるかは時計を見た。午後7時を回ろうとしている。
「ヴァイオリンを持ってきたのが運の尽きね、ま、楽器なんていくらでもあるだけど、何なら、ヴァイオリンじゃなくて、ママのピアノレッスン受けてみる?」
「それなら、西沢あゆみに勝つ方が楽そうだ」
「なあに、あの西沢あゆみに勝てるって?ずいぶんとテニスが上手くなったのねえ」

 百合絵は、料理を運びながら話しに割り込んできた。口元が悪意に歪んでいる。はるかは、少なくともそう受け取った。
「ところで、最近、練習しているの」
「はい・・・・」
「決まりね」
照美は、勝利者のように高らかに宣言した。
 これで、はるかは、照美の部屋で一晩中、ゲームに明け暮れるという平凡な夢を壊されることになった。代わりに与えられるのは、ヴァイオリニストになるつもりもないのに、スパルタめいた修練を積まされる長時間だった。

 一方、由加里は電車から降りたばかりだった。ここは都心の一等地。辺りは、夜のとばりが降りている。歩き出そうとしたとき、後ろから声をかけられた。
「由加里、何しているの?こんなところで」
「さ、冴子姉さん」
「もう8時は過ぎているのよ、こんなところで何をしてるの?それとも私が目当てじゃないの」
「・・・・・・・」
思わず涙ぐんでしまう由加里。
「どうしたの?またいじめられたの」
やさしく語りかける冴子。
「母さんに連絡してあるんでしょうね、え、してないの全くしょうがない子ねえ」
携帯を取り出す冴子。

 カンカンカン・・・・・・・・。高架線の下にいると聞こえるこの音。夜の闇に濡れると、それは、夏なのに、冬気色をかすかにかいま見せてくれる。それが冴子は好きだった。
「寒いね」
「何言っているのよ7月よ、まだ、夏はこれからじゃない」
「ねえ、私が癌になったら、手術してくれる?」
「自分の身内の手術は、どんな大先生でも、手が震えるってね――――ま、私は外科に進むつもりはないから、ありえないか。で、何でそんなこと聞くのよ」
わかっていて聞いた。
 「まさか、暴力とかされてないわよね」
「・・・・・・・・・」

 冴子は、急に立ち止まると、正面から長細い指で妹の髪をかき分ける。
「さ、冴子姉・・・・・ち、ちがう、そんなこと・・・・・ない」
その手の温かさに、動揺したのか。涙がこぼれた。
 「もしも、無視以上になったら母さんか私に言うのよ・・・・・別にいじめられることは恥ずかしいことじゃないんだし」
「よくわかるわね」

 由加里は、言葉に反抗の意味合いを含めた。
「あんたの言いたいことはわかるわよ」
「冴子姉さんは、どうしていじめてたの」
「ストレスかな、よくわからない、今となってはね」
「みんな、そうなのかな、教室では、私にあんなひどいことする、悪魔みたいなのに、家ではふつうの家族やってるのかな」
 「私がそうだったわね。私、あんたがいじめられているって聞いて、ショックだったわ。たった2年の間だったけど、あの時私がしてたことは消えないし。あんたが私の代わりになったような気がして・・・・」
「たった2年じゃないよ。いじめられる方にとってみれば・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

 ―――涙が何粒も、暗い地面に落ちていく。何てことなく捨てられている煙草の吸い殻さえかわいそうに思えた。
「辛いこと、全部、私にぶつけていいんだよ」
「うん、ありがとう」
冴子は、頭を抱いてくれた。涙があふれてくる。まるで、彼女の手が涙を導いてくるように思えた。その手は、彼女の骨にまで達するように思えた。


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