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主人公はu15の少女たち。 主な内容はいじめ文学。このサイトはアダルトコンテンツを含みます。18歳以下はただちに退去してください。
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『マザーエルザの物語・終章 11』
「お姉さんに話してご覧なさい、何をしていたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 有希江は、あおいの意図を探るように、針を密かに刺してくる。あおいは、それにどのように対処していいのか、わからずに、黙りこくってしまった。そこで、貝殻に籠もってしまった貝をどうやって吸い出すのか、有希江は、言葉の手練手管を使って、おびき出すことにした。

「ほら、別に恥ずかしいことじゃないからさ ――」
 あおいは、有希江の首筋を頭で感じた。仄かな肌の温かみが空気を伝わってくる。それは情愛なのだろうか。あおいは、それに酔ってしまったのか。顔の表面が、熱を帯びてくる。かすかな痒みを感じるほどに、突っ張ってきた。
 彼女は初恋の経験はまだないのだが、もしも、そのような体験が存在するとすれば、どのようなものなのか。それは、最近読み始めた小説や、歌詞から、一定の想像は可能だった。
 ちなみに、親友である赤木啓子に、読むように誘われたのである。高い知性を有していながら、無駄に遊ばせている親友を見ていて、啓子は歯がゆくなったのだろう。

 それはともかく、あおいは初恋なるものに、興味を持ち始めていたころである。もしも、理想的な男の子が側にいたら、心臓がドキドキするのだろうか。顔が真っ赤になるのだろうか。少女は、さきほどの参考文献から、そのような情報を得ていた。
 しかし、それが姉によってもたされるなどと、想像だにしなかった。

「ねえ、言っちゃいなさいよ ―――」
「・・・・・・・・・」
 有希江の吐息が、あおいの首筋を走っていく。そのいたずらな小人たちは、少女の産毛を逆立てながら、頭へと駈け込む。
「誰にも言わない?」
「うん、大丈夫、口は堅いよ」
 有希江は常套句を言ったが、あおいはそうとは受け取らなかった。それは、彼女の人生経験不足を証明しているのかもしれない。有希江は、そんなあおいを以前よりも、はるかにかわいいと感じていた。妹のうなじはほんのりと赤くなっていた。思わず、そこに触れたくなった。さらに口を近づける。

「ひ」
 あおいは、予想もしなかった刺激に、驚いた顔を見せた。
「あら、私が嫌いなの?」
「そんな、違う!おどろいただけ!」
 あおいは、有希江の反応に驚いた。このままでは、本当に孤立無援になってしまう。有希江は、もはや、この家での唯一の味方なのだ。それを失っては、本当に絶望の海に沈んでしまう。気が付かないうちに、頬が濡れていた。
「あ!?」
 少女は、涙を拭こうしたが、有希江に阻止された。両手首を摑まれたのだ。妹を動けないようにしておいて、頬にキスをする。
「ひあ?!」
「アメリカじゃあたりまえのことよ、仲のいい家族ならね」
「家族・・・・・・?」
 あおいは、改めてその言葉を噛みしめた。何故か、苦い味が滲んでくる。これまでなら、それは彼女にとって、この世でもっとも美味な存在のはずだった。誰が敵になっても、家族だけは、彼女の味方になってくれるはずだった。

 しかし、今、そのことばを改めて、口に含んでみると、その痛い苦みにおもわず顔を歪めてしまう。
「あおいちゃん、可愛いいんだから、そんな顔しちゃだめだよ。台無しじゃない。有希江は、そんなあおいちゃんが大好きだな ―――」
「ぅうああぅ・・・・・」
 巧妙にことばで誘い出してみる。
 かわいいとは、あおいが小さいころから、言われ続けたことばだ。だから、耳に蛸ができてしまって、その本当の価値を忘れてしまっていた。人間は、甘いものも慣れすぎると、甘く感じなくなるものだ。愛情もそれに似ているかもしれない。
 あるいは、そういうあおいに、有希江は知らず知らずのうちに嫉妬していた可能性もある。

 有希江は、妹の涙を舐めてみた。当たり前のことだが、それは海の味がした。彼女は海に囲まれた国に住んでいる上に、車を使えば、20分ほどで海に辿り着くことができる。そんな場所に住んできた。しかし、有希江は、何故か、海という言葉が、縁遠い気がするのだ。その字に親しみがわかない。だからと言って、海に嫌な記憶があるというのではない。むしろ、泳ぎは得意であるし、むしろ親しんできたほうだ。
 海は、自分の大事なものを阻んでしまうような気がする。その言葉から、いいイメージがわかないのだ。それは、実体験からもたらされたイメージではないような気がする。何やら夢の世界での出来事が元になっているような気がする。
 そう言えば、海で何かを無くしたかのような夢を見る。詳しい内容は憶えていないが、意味不明の  喪失感と海という言葉は、常に同居しているのである。
 
 有希江は、あおいにそれを感じていた。
「ここを触っていたんじゃなくて?」
「ひい!いやぁあ・・・・ぁ!」
 有希江の手が、あおいの股間を捕まえていた。あおいは、抵抗しようとするが、両手首を奪われているために、身動きひとつできない。できるのは、無駄に蠢くばかりだ。有希江の目には、それは、蜘蛛の巣にかかった可憐な蝶にみえた。可愛いということは、対象をどのように扱っても、自分に害がかえってこないことを意味する。だから、嗜虐の心が起こってくるのだ。本人が意識していようと、していまいと・・・・・・・・・・。

 有希江は、さらに質問を続ける。
「言いなさい、何をしていたの?」
「ウウ・・ウ・ウ、こ、ここをさ、触ってると・・・・・・・・・・」
 小さな孔に押し込まれたような声。有希江は、さっそく、それを現実世界に引き戻したくなった。
「触ってると?」
「ッ・・・・・ウウ・・・き、気持、気持ちよくなって ――――」
「気持ちよくなって?」
 有希江は、まるで被疑者を追いつめる刑事のように、追求の手を休めない。
 その顔にはいやらしい笑みが浮かんでいる。しかし、あおいはその顔を拝むことはできない。
 少女は、顔を真っ赤にして、背中に迫ってくるプレッシャーに耐えていた。いったい、どんな態度を取れば有希江に嫌われずにすむのだろう。
 有希江に嫌われずにすむのだろう。あおいは、今まで使ってこなかった脳のある部分をフル回転させなくてはならなかった。それは、今まで彼女がほとんどしなかったことである。あるいは、しなくてもすんでいたことである。
「ウグググ・・・・・ウウ」
 しかし、そんなことを考えている間にも、有希江の手は、あおいの局所を蹂躙する。下着の上から、膣の中にまで侵入されている。
この時、あおいは、その刺激の意味を理解していない。そして、その刺激からくる反作用については、ほとんど知識ゼロのネンネにすぎない。だからこそ、とまどいを隠せないのだ。いったい、自分が何処にいるのかわからない。しかし、それは、いきなり家族から冷水を浴びせかけられた時とは違う。

 いま、あおいが弄られているばしょは、彼女にとってみれば、唯一排泄だけの道具だった。それ以外の機能があるとは夢にも思わなかった。だが、今、それ以外の方法で使われようとしている。しかも、自分以外の人間の手によって、無理矢理にその扉をこじ開けられようとしているのだ。これは我慢ができない。しかし、縛りがあるために、抵抗できない。よもや抵抗しようとするが、それは、ほとんど本能的な反射作用にすぎない。

「ここを弄って、どう思ったの?」
「もう、いや!いや!いやああ!ママ!?」
 あおいは、激しく抵抗した。それは、有希江の予想を裏切るほどだった。だから ――――。

 びしっ!!

 一瞬、その場の空気が凍り付いた。
 有希江の平手打ちが、あおいに炸裂したのだ。赤い稲妻が走った。
「あ ――――」
 あおいは、何が起こったのか分からずに、痴呆老人のように、小さな口を開けたまま、空気を摑もうとした。
「何言ってるのよ! ママだって? もうあんたにはママなんていないのよ! まだわかってないの!?」
「ひい!いやあああ!!」
 有希江は、あおいの髪を摑むと乱暴な手つきで、引きずり倒した。しかる後に、彼女の衣服を引っ剥がしはじめたのである。まるで、宇宙服なしで、宇宙空間に放り出されたように思えた。
「やめてぇええええ!! ママあ! 助けて!!ぇええ!!」
 
 ここに来て、なお母親を求めるあおい。その姿に、怒りを憶えると、激しく怒鳴りつけた。
「うるさいわねえ!!」
そして、激しく殴りつける。抵抗が見えなくなったところで、さらに服を脱がし、全裸にしてしまう。
「いやああ!! 有希江姉さん ――――!?」
「ほら、出て行きなさい!」

 有希江は、あられもない姿になった妹の腕を摑むと、ベランダに放り投げた。無毛の股間が、有希江の視界に入った。
 あおいは、野球のボールのように飛んでいく。投げられた少女は、暗闇を感じた。それは、とても小さく、そして冷たかった。
 時間が時間だけに、断崖絶壁に投じられたかのような恐怖を感じる。しかも、真冬の寒さが骨に浸みる。広いベランダは、5センチほども雪で埋まっている。

「ひ!つ、めたい!」
 あおいに息をつかせる暇も与えなかった。ふいに、扉が閉まって、おそるべき音が聞こえた。施錠の音である。それは、あおいにとってみれば、ギロチンの刃が落ちる音にも似ていたかもしれない。
「いやあああ!!」
 広い榊家の敷地のこと、その上、大樹が外界から家を護っている。他人から、見られることはないかもしれない。
 しかし、少女は本能的に胸と股間を隠した。この世のものとは思えない寒さが襲う。それに加えて、全身に羞恥の熱が起きているために、より、寒さを感じるのだ。がちがちと歯が鳴る。
「お、お願い!姉さん、開けて、開けて!寒いよぉ!いうことなんでも聞くから!おねがいぃ!!」
あおいの絶叫が響くが、夜の闇も、降り積もった雪も、答えてはくれない。よもや、有希江は、厚いガラスの向こうにいる。哀れな妹の懇願に耳ひとつ傾けようとしない。

――――あ、有希江姉さん!
 しかし、有希江は、こちらに向けて歩み寄ってきた。はたして、開けてくれるのだろうか。まるで、10年も待ち望んできた援軍が来てくれるかのように思った。
「有希江姉さん!」
 ダンダンと再び、窓をたたく。手が割れるほどに痛い。息まで凍ってしまいそうな寒さとあいまって、苦痛を二倍にも、三倍にも増加させていた。
「有希江姉さん! あ?!」
 そのとき、あおいの目の前で信じられないことが起こった。カーテンが閉められたのである。ガラスごしのために、その音は、よく聞こえないはずだったが、少女の耳ははっきりと、聞こえた。それは少女の両耳を切断する音だった。そして、それは、最後の希望が断ち切れる音だった。
「ウウ・・ウ・ウ・・ウウウ! 」
 激しく泣き崩れるあおい。もはや、両足が切断されるような冷たさも痛さも、あまり意味をなさない。 その足指は、真っ赤に晴れて、はたして霜焼けですむのかわからない。

 しかし、そんなことも忘れて、窓にすがりついて泣いた。あたかも、それが、彼女の飢えた情愛を満足させてくれるかのように、すがりつづける。
「なんでもする! なんでもするから! 有希江姉さああん! 許して! 許してェエ!大願!ィイイイイ!」
一方、有希江も無傷だったわけではない。その心は、ささくれ立って、よく見るとわずかに血が滲んでいる。
 彼女の心は、今や、ふたつに引き裂かれ、路傍を彷徨っていた。あおいと同じように、裸足で真冬の廃墟を、家族の愛を求めて、すがり歩いていたのだ。
「はやく、おはいり・・・・・」
「アア・・アアああ・・あ? ゆ、有希江姉さん?」
 有希江は、全裸のあおいを引き入れると、即座に抱きしめた。

―――熱い!熱いヨォオ!
 あおいは、一瞬、火傷がするかと思った。彼女の愛撫は、それほどに激しく、今の今まで晒されていた凍土とは、あまりに、温度の差が激しかったのだ。
 姉の吐息は、地獄の熱風を思わせた。しかし、それはすぐに、人肌の温かさだとわかった。それにほだされて、さらに涙があふれてくる。

「ごめんね、悪かったわ。だけど、あおいに分かってほしかったの。私は別に、あなたをいじめたいと思ってやったわけじゃないのよ」
「うん、うん、うん、うん、わかる!」
 あおいは、あたかも、自分に言い聞かせるように、頷いた。
「じゃあ、わかってくれるよね、さっきのことは別に恥ずかしいことじゃないのよ」
「・・・・・・・・・・ハイ」
 少女は、ためらいながらもさらに頷いた。
「わかってくれるのね」
「・・・・・・・・・」
 さらに頷くと涙が、床に零れた。
「あ」
「どうしたの? あおいちゃん」
 とてつもなく優しい声で、有希江は聞いた。
「き、汚いから、あおいの涙は」
「そ、そんなことないよ!」

 有希江は、その涙を小指ですくうと舐めてみせた。そして、その手を、あおいの股間に持って行った。ふいをつかれた少女は、ピンと小さな肢体を浮かせた。その様子が、あまりに可愛らしいので、  有希江は、よりいっそう食欲を感じた。
 あおいの小さな肢体は、姉の指が胎内に、入っていく度に、弓なりになり、幼児のようになった。
「本当は、あおいは人魚だったのね」
「あぁぁぁぅ・・・・・・ウウ」
 自分の思うとおりに、楽器が音楽を奏でてくれる。これほど、演奏者冥利なことはない。妹は、姉にとって例えようもなく可愛らしい楽器だった。

「うふふ、これを一人でやっていたのね、いけない子」
「そ、そんあ!ぁあううあう!!」
 動いたために、よりいっそう、あおいの内奥に、指が侵入することになった。
「そんな、恥ずかしくないって・・・・・・」
「そう? 違うわよ、それは大人の許可を得てからのことよ。まだあなたは赤飯を炊いてもらってないでしょう?だからだめなの。それなのに、こんなことをしたから、嫌われちゃったの」
「そんなあ・・・・・・・・・・・・・」

 無知とははたして、罪なのだろうか。あおいの顔は、再び絶望色に染められてしまった。
「でも、お赤飯って食べたことあるよ」
「違うわよ、特別な日のことなの、あなたの体の変化のことよ。まだなのよ」
「ウウ・・ウ・ウ・ウ、じゃあ、どうしたらいいの?有希江姉さん!?」
「だったら、お姉さんのこと、何でも聞く?」
「・・・・・・・・」
 言うまでもなく、あおいの返事は決まっている。イエスである。

「私がママたちにとりなしてあげるから、もしも、このままじゃ、一生精神病院に入れられるわよ、それでもいいの?」
「いやだ! そんなの! いや!」
「伯母さんみたいになっちゃうよ」
「え? 伯母さん、もう出て来れないの?」
「かもね ―――」
 有希江はかぶりを振った。その態度はあまりにわざとらしかったが、幼年のあおいには、それが理解できなかった。とてつもない不安な状況に、追いやられているとあおいは理解した。もう二度と、あの家族にはもどれない。楽しかった日々は戻らない。さらなる絶望は、あおいを生きながらの地獄を体験させた。
 その地獄から這い出るためには、何が必要か。小さい頭ながらに、あおいは、救いを自分の手で求めはじめていた。

「そうならないように、姉さんがとりなしてあげる。実はね ―――」
 有希江は、そうやってこれ見よがしに、秘密を、いや、秘密らしきものを明かしはじめた。
 夜は全裸の妹と姉という、不思議な絵をどのように見ていたのだろうか。
 降り積もった雪は、両者を既視感を以て、見ていたかもしれない。


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『由加里 58』

「ヤグググググッメエエエエエエ・・・・・・」
「あははは、由加里チャンたら、やぎさんになっちゃったの? 」
 可南子は、由加里の眼前で、高笑いをする。
 彼女の顔に、絶体絶命の4文字が見えた。膣を貫く異物感よりも、精神的なショックの方が強い。  精液を注入されるという恐怖が、少女の華奢な体に侵入しつくす。彼女の美しい肌を詳しく見て貰えばわかると思うが、細かいキメからも、恐怖は、冷や汗のようにあふれている。
 可南子は、そのガスを吸って悦に浸っているのだ。自分が支配するペットが嘆き悲しんでいる。その事実をより強める演出の働き、料理で言うならば、スパイスの役割だろうか。

―――妊娠?!
 ひとつの単語が、少女の脳裏にある花畑を荒らす。
 無条件に、その言葉は恐怖の代名詞になって、少女を苦しめる。それは死のイメージに近い。自分の体が自分のモノでなくなってしまう。そのような妄想を喚起させる。

――アクマ。
 呑気にも、可南子にそのような名前を与えていた。ここは戦場で、死地なのだ。圧倒的な敵兵に囲まれた寡兵。それも敵兵は、三食の上に女まで保証されて、意気盛んなのに、こちらは、もう2日も水しか口にしていない。
 ちなみに、この前、女に触れることができたのが何時か?それはもう、記憶すら曖昧になほど昔のことだ。
 豊潤な兵站と慰み用の女、これは古来から兵法の常識である。洋の東西を問わずに、兵法の識者と呼ばれる人なら、それを高らかに主張している。
 ふと、敗者の頭に、光が射した。
「オネウゲウコアダ・・・・」

 由加里は、白旗を唇の力を以て、挙げようとしたのである。しかし、猿轡を填められているために、それは言葉にならない。虚しく、涎が吹いただけである。それがあまりに滑稽なために、可南子を笑わせた。
「アハハハ、やぎの次ぎはハマグリかしら? 大丈夫よ、人間の精子とハマグリの卵子じゃ妊娠しないから、アハハハハ」
 ここは病院である。
 さすがに、笑い声を押さえなければならないようだ。しかし、それ故に裏返った可南子の声は、由加里にさらなる恐怖を与えた。
「ちゃんと着床したら、パパがどんな人なのか、会わせてあげるわ 精薄の愛人なんて、由加里ちゃんにはお似合いね」

 相変わらず、可南子の言葉は、人の心の清潔というものからかけ離れている。
 それを敏感に感じる由加里だからこそ、自分の保身よりも、他人の名誉が大事になるのだ。今、少女の身の内に起こっている炎は、正義というのではないが、少なくとも、他人への思いやりに満ちていた。
「そんな顔をしていいの? ふふ、淫乱ニンシン中学生のできあがり!」
「ウグググ!」
 由加里は、思わず目を瞑った。それだけで、世界がリセットすることができるとでもいうのか。しかし、現実は、由加里をパラダイスに逃避させてくれない。股間に突き刺さった注射器は、いやでも、虎口にいることを報せる。
 そして、少女の視界に、可南子が手に力をみなぎらせるのが見えた。妖女の腕は、悪魔的に強ばった。それは、同時に由加里の人生の黄昏を意味する。しかし ――――。

「うぐぐぐはああ!?」
 少女は、猿轡を吐き出した。それは彼女の唾液で、濡れそぼっている。清潔なシーツの上に転がった物体は、いかにも不潔に見える。魚の腐った臭いでも漂ってきそうだ。しかし、可南子はそんなものに目もくれない。ただ、今の今まで彼女をいたぶっていた武器をかざすだけである。
「あははははあ! うーーそ!」
 さすがに、この時、可南子は笑声を押さえかねた。その理由は、自分がおかれている立場や場所だけに限らない。
 それだけ、美少女が見せた表情は、滑稽だったのである。

「あ・あ・・・あ・あ?!」
 由加里の視線の先には、注射器がある。それは逆さまになっていて、先の部分を見ている。そこから、白い液体が零れている。間違ってもミルクではない。

――――せいえき?
 それは、少女がこの世でもっとも、恐れる液体である。彼女たちを汚し、陵辱し、こともあろうに、アクマの子を妊娠させる。
「・・・・ウ・ウ・ウウ・、ああ、いやああ・・・・・・お、お」
「あはははは、ホントに赤チャンになっちゃったの? 由加里チャンは?!」
いやらしい目つきで、舐め回すように少女を見つめる。大腿から、腰、それに上半身へ、可南子の視線は、ねちっこく少女を視姦していく。
「あははあ、そうだ、赤ちゃんならミルクが必要ねえ?」
「ェ?イグッ・・・・・?!」
 突如として、口腔内に痛みを感じた。針で刺されるようなちくちくする感じだ。そして、同時に塩の味を感じた。

「うぐぐうぐうぐ!?」
 由加里は、自分の頭部に起こっている事実を、すぐには認められなかった。
 しかし、可南子の発言と体感から、いやでも容認せざるをえない。自分の口に精液を挿入されているのだ。
 自由なのは右手だけという不自由な体である。そんな彼女の自由を奪うのは、可南子にとって、まさに赤子の手をひねるように容易だった。
「うふふふ、感謝しなさいね、ニンシンは許してあげるんだから、せめてこれくらいは当然でしょう?!」
 身勝手な言い分を押しつけておいて、可南子はそのおぞましい器具を、さらに奥に押しつける。

「ぅぐぐぐぐぐ!」
 再び、言葉を奪われた少女は、苦痛のあえぎをあげるだけだ。
「たっぷりとお飲み、赤チャン」
「うぐぐぐうぐうっっ!」
 酸鼻とはよく言ったものだ。鼻につくのは、酸っぱい臭いである。
 この正体は、なんだろう? 由加里は、はじめて味わう臭いと味に、噎せ変える思いだった。嘔吐をひっしに押さえていた。
 口と鼻はつながっているわけだから、当然、精液が醸し出す臭気は、少女の幼気な感覚を強姦する。強盗のように、無理矢理に押し入ってくる。

――――イカの焼いたのに似てる・・・・・・・。
 由加里は、もうイカを口にすることはできないと思った。お祭りで姉妹とともに、食べた焼きイカの味が蘇る。もうあの時のような楽しい想いをすることはないかもしれない。
 少女の頬に、涙が優雅な流線を作るのだった。それは哀しみの涙が奏でる円舞曲である。
 水晶のように美しい涙は、しかし、可南子に同情の念をおこさせるようなことはしない。ただ、嗜虐心をよりいっそう、刺激するだけである。

「ねえ、どんな臭いがする?これから、あなたがお世話になる臭いよ、憶えておきなさいね ―――」
 少女は、はるかの本によって、『イカ臭い』という隠語を知ってはいた。しかしながら、読書を通じての知識と、実体験では、比較にならない違いある。
 由加里の中に戦慄が走る。子どもには、想像だにできない大人の世界への不安と焦燥。それは得体の知れない怪物となって、無防備な少女の肢体に襲い掛かってくる。

 今は、未知の恐怖よりも、現実的なそれに対応するので、いっぱいだ。少女の未成熟な口腔内は、おぞましい精液の味で覆い尽くされている。
「はーい、最後まで、よく飲め飲めできましたね ――――」
 自分の子どもにもそのように言っていたのだろうか。由加里には、目の前の女性が、人の親だとは信じられない。言うまでもなく、可南子は三人の女の子の母である。
ちなみに、先輩であるかなんは、彼女の所有者のひとりであり、ぴあのは、同級生である。照美の手足になって動いているのは、もう言ったとおりだ。
 しかし、当の照美にとって見れば手足ほどにも想っていない。よくて、爪の垢程度にしか見ていない。さらに付け加えてれば、そのことに、いっさい気づいていないのである。彼女の人間の程度というものを表しているだろう。

 さて、由加里は自分をどのような位置づけで見ているのだろうか。よくって、奴隷。しかし、所有者と名乗られることは、彼女の自尊心と自立心を、いたく傷付けたにちがいない。

 少女は、精液の毒気による嘔吐に苦しんでいた。
「ういげええぇえ ―――」
「あら、吐いちゃだめよ、もしも、吐いたら、スポイトで吸い取ってまた飲ませますからね」
 白衣のアクマは、さらりと残酷なことを言った。
「これから、食前酒にしてもらうんだから、いい加減その味に慣れてもらわないと」
「そ、そんな!?」
 由加里の口の端から、ミルクが零れているのを見て、可南子はほくそ笑んだ。
「お、お願いです、う、うがいをさせてください」
「何を、冗談言っているの?」
 可南子は、不思議そうに頷くだけだ。その能面みたいな顔の背後に、アクマが存在することを由加里は知っていた。こうしているだけで、ひしひしと感じるのだ。迫ってくる。とてつもないマイナスのエネルギーが、少女の心臓を凍らせるのだ。
「・・・・・・・・」

 がらがら・・・・。

 その時、非生物的な音が、廊下から転がってきた。
「あら、夕食が届いたようね」
 この病院の夕食は早い。まだ5時半を回ったばかりである。
 個室の外からは、あわただしい空気が侵入してくる。いろんな人たちの働く物音が聞こえる。
 由加里の見えないところで、何か大きなことが動いているような気がする。
 まるで、病院が一つの機械で、少女は、それに連結した部品のようである。病院に連動して、由加里もまた動く。ちょうど、歯車の大小の関係のように。
「ありがと、私が処理するから ―――」
 同僚、いや、後輩だろうか、看護婦からワゴンを受け取ると、彼女を柔らかに追い出した。すると、施錠して、由加里に向き合った。
「たくさん食べないと、骨がつながらないわよ、由加里赤チャン」
「・・・・・・・・・?!」

 由加里は、恥辱のあまり、キッとにらみ返す。少女の瞳は、切れ長だが、柔らかさを同時に備えている。そこからは、知性とともに涙があふれている、唇には内出血の症状が見て取れる。
「・・・・・・・・・・」
「どう?今日の夕御飯は何かしら?へえ、チキン香草風に、コンソメ風、どんな味するのかしら」
可南子は、スプーンを手にすると、味見をはじめた。
「あら、塩味が足りないわねえ、赤チャンは、別に透析患者じゃないんだし。これじゃだめだわ」

 彼女は、ごそごそとポケットの中を漁る。
「ああ、あったわ、用意しておいてよかったわ」
「ま、まさか?」
 少女は、彼女が取り出したものを見て、心底驚いた。試験管のような器具のなかには、白い液体が蜷局を巻いていた。
「察しがいいよおねえ ―――」
 可南子は、由加里の顔が青ざめる様子を見て、心から満足そうな顔をした。それを返された少女は、さらに青を濃くした。

「いやです!? そんなの!? ウウウ・・・・ウ・ウ・!」
「あなたのお口には、一体、何がこびりついているのかしら?」
「ウウ・・・ウ・ウ・ウ・ウ! どうして、ひどい! ウウ・ウ・・ウ・ウ・ウウウ?!」
「だだっ子みたいに、いつまでも泣いていないの、さあ、お食事にするわよ、由加里赤チャン!!?」
「その、ウウ・・ウ・ウ・・うう!ああ、赤ちゃんってやめてください! イウウウ・・ウウ・ウ!?」
「鏡で見てみる?!」
 可南子は、手鏡を由加里に見せた。
 その小さな四角形には、まるで幼児のように泣きじゃくる少女が映っていた。とても、見ていられない。即座に目を背けた。可南子は、可愛らしい長い睫が涙を含むのを見た。それをとても可愛らしいと思った。

「これが赤チャンじゃなくって、何を赤チャンって呼ぶのかしら? ほら、行儀よくなさい、はしたない子ねえ」
 可南子は、トレイを携帯テーブルの上に乗せと、唯一、自由な右腕を摑む。そして、したたかにひねり挙げる。可南子の吐息が顔にかかる。濃い化粧は、彼女の体液にまで染み込んでいるのか、吐く息から、そのいやな臭いが漂ってくる。

「さっ、味付けしようね」
「ウウ・・・ウウ・痛い・・・・・うう!」
 可南子は、器具を開けると、白濁の液体を垂らす。
「あーあ、レストランみたいにいかないわねえ、この男、薄いのかしら?」
 由加里は、見た。薄汚い白蛇が、コンソメスープに入っていくのを。彼は、透明なスープの上で蜷局を巻く。見ようによっては、蚊取り線香にも見える。

「香取信吾、27歳、・・・・・・・・・・・・・・」
 まるで、お経のような文々が続く。由加里には、それが理解できないのは当たり前だ。医学用語を解くコードが、少女の脳に組み込まれているはずはない。
「おたまじゃくしの動きが、かなり弱いのね、これじゃ女を孕ませられるわけないじゃなない!?」
 可南子は、ここにはいない香取信吾という男に、に怒りをぶつけてみせた。

「世の男どもはさ、不妊の原因が、女にあるっていうけど、けっこうの割合で、奴らに問題があるのよ、わかる?」
「・・・・・・・・・・・・・・イエ」
 その言動、行動の両方に渡って、不道徳を画いてきた。病室という本来、白で統一されているべき、画布に、真っ黒な絵の具をぶちまけたのである。そんな可南子の言動に説得力があるはずはなかった。
「わかってるの? 同じ女として怒りがわいてこないの?」
「ハ・・・ハオイ・・はい・・・よく、わかります・・・・」
 由加里が、見たのは、納豆のような目つきであるそして、彼女の息からは、何やら得体の知れない臭いが漂ってくる。
 ジャガイモのような顔に張り付いたいやしく煌めくものは、少女に不快なデジャブーを感じさせた。

―――そうだ、似鳥先輩。
 それは、由加里の所有者のひとりである。少女を自分の性欲のはけ口にしている。そして、それが愛であると誤解している哀れな人間でもある。
 由加里は、知るはずもなかったが、この納豆の目つきと臭い生理の臭いは、レズを特長づけるモニュメントだった。
 その時期でもないのに、鉄臭い臭いをぷんぷんさせている。男性に嫌われるはずだ。
しかし、もしも、自分の母親が、由加里を手込めにしていると知ったら、どんな顔をするだろうか。可南子は、それを思うと自然に笑いが浮かんでくるのだった。

 由加里の目の前で、ミルクが料理に零れていく。
 コンソメスープの次ぎは、チキン香草風の番である。
「さしずめ、ホワイトソースというわけかしら? うふふふ」
 可南子の人間とは思えない笑声が耳を打つ。由加里は、その声に導かれて、刑に処される罪人である。もはや、何の抵抗もできぬままに、事態を受け入れざるを得ない。その刑が、少女にとって、いかに過酷な罰であっても。
「じ、自分で、たべ、食べられます・・・・・・・!」
由加里は、震えながらも気丈に、訴えた。その目に光る涙を、可南子は美しいと思った。
「ほら、痛くないの?」
「ウアウアウア・・・・い、痛い!ェ痛い!ウウウウウ!!」
 少女の眉間に、脂汗が浮かぶ。珠のようなは、やはり、涙と同じように可南子の心の琴線に響く。 さらに、女の嗜虐心は刺激された。

「右手も怪我してるじゃない? それじゃ自分で食べられないでしょう? その代わりに、ママが食べさせてあげる。 由加里赤チャン」
「ウウ・・ウ・ウ・ハイ・・・・・・・・・・」
 可南子の刑の宣告に、由加里は頷かざるを得なかった。
「じゃあ、まず、おかずから行きましょうね。はーい、あーんして」
可南子は、自らも口を開けて見せる。そして、しかる後に、鳥肉を箸で摑んだ。そして、ホワイトソースがたっぷりかけられた肉の塊を、そのままの大きさで、少女の口の中入れ込む。
唇は、恐怖と汚物に対する拒否感のあまり、震えていたから、多少は、力を要したもしれない。しかし、圧倒的兵力の前の寡兵。しょせんは、無条件降伏に近かった。
「噛みなさい、ほら、噛むのよ!」
「ヒギイィイイイ・・・・」

 ざくっ!!

 可南子の激しい叱責に、反応して、由加里の口は、自動的に肉に食い付いていた。さしずめ、パブロフの犬である。
 由加里の口の中では、ちょこんと可愛い舌や歯さえ、狼狽の汗を掻いていた。それは、少女の中にあるべき物質ではなかった。その情景は、お嬢様学校に侵入したホームレスを思い浮かべてもらえばよい。要するに完全に異物であり、排除されるべき汚物だ。
 とたんに、腐った塩の味が口中に広がる。ほとんど、肉の味などしない。精液に負けてしまっているのだ。

 かすかに感じる酸味は、由加里が好きなレモンのそれでなく、物質が腐る証拠そのものである。本来、野生の生き物は、酸味の強い、たとえば、柑橘類を好まない。いや、炎を恐れるように、忌み嫌う。由加里は自分の味覚に、本能的な恐怖を感じていた。
 あふれてくる涙は、その証拠だ。

 長い睫は、気品すら感じさせる。それに涙の粒がいくつも転がっている。まるで、真珠のような肌に重なって、その品の良さを倍増させていた。それは、可南子の売春婦じみた下品な獣性と対をなしていた。
 可南子は、由加里に嫉妬を憶えた。

―――このガキは、自分にないものをいっぱいもってる!?なんの努力もしないで!
「何しているのよ! もっと顎を動かすのよ! 美味しいでしょう!?」
「ウグ・・・・・グググぐ!!」
 可南子は声を荒げるだけでなく。由加里の右腕を握りつぶそうとした。少女は苦痛に、顔を歪める。
がり・・・・・。
さらに、肉に食い付く由加里。もはや、上品なお嬢さんの姿はそこにはなかった。さながら、むさぼり食う餓鬼のように見えた、







テーマ:萌え - ジャンル:アダルト

『由加里 57』
  白亜の宮殿に、無声の泣き声が、響く。
「お前達、若い映画人には、理解できまいが、トーキー映画からは、雲の歌すら聞こえたものだ」とは、ある老映画人の繰り言だが、あながち、それは、嘘ではないだろう。
 その老人が喜びそうな演出が、病院になされていた。
 少女の哀しみは、建物にすら影響を与えている。よく見てみるがいい、廊下や壁には罅が入っているようだ。無水の涙は、密かに、病棟を侵食しているのだ。
 その廊下を照美とはるかが歩いている。外部から見ると、大小の箱を取り合わせたように見える。その簡素な建築様式は、ル・コルビュジエを思わせる。
  モダニズム建築が、宮殿と矛盾すると言う人がいるかもしれない。
しかしながら、アラビア世界あたりに、そのような宮殿があったような気がする。病院という女性を収容し、性的な羞恥を与える施設には、相応しい比喩であろう。言うまでもなく、この文脈においては、イスラム世界のハーレムを志向しているのだ。
 イスラム世界といえば、女性は、全身のほとんどを白衣で覆っていると聞く。今の由加里はまさにその状態である。一人残された少女は、シーツを頭から被って、泣き続けている。いじめという刻印が少女に、刻み込まれているのである。
  二人の足音が、薄れていくにつれて、それとは反比例に、その痛みはその色合いを濃くしていく。二人に身も心も支配されて、所有される。その証拠に、痛みを苦痛と思わなくなっていく自分を発見して、唖然とするのだった。

「ウウウウ・・ウ・・ウ・・ウ・・ウ・・・・うう!」
  由加里は、声をひそめて泣き続ける。地平線近くにぼやける太陽は、オレンジ色に色褪せている。それは彼女が辿る運命を思わせた。赤色巨星。言わずとしれた恒星の終末期である。少女には、その太陽が、今現在の、自分の境遇を映しているようにしか、思えなかった。

  さて、二人が由加里の病室を離れて、数分経ったころ、ようやくロビーに辿り着いた。ジャンボジェットの客室を何列も合わせた様子を思い浮かべてほしい。その壮観さがわかるにちがいない。一方向にきちんと並んだ様子は、何処かの空間を思い起こさせる。しばらく照美は、思い出せなかった。

―――そうが、学校か。
  鋭敏な彼女は、すぐにその解答に辿り着いた。しかし、教卓がない。
  そして、受付時間が枯れようとしているのか、空席が目立つ。黄昏れた老人たちが、数人、杖をついているだけだ。自分の名前を告げられて、立ち上がる様は、順番待ちの老人たちが、その死を告げられているようにも見える。
  しかしながら、老人たちは、その死を黙って受け入れているようだ。既に、人間的な感情は、遠い過去に放り投げてしまったのだろう。
その席の一つに、鈴木ゆららが腰掛けている。彼女は別に美少女では、ないのだが、そんな黄土色の風景の中で、一本の花だった。しかし、それはタンポポや月見草の類であって、まちがっても、桜や橘の類ではないだろう。

  ゆららは、肩を崩して、丸くなっている。その姿は、まるでネコのようだ。

「鈴木さん・・・・・・・・・・」
 照美は、すまなさそうな顔をして、ゆららの肩を軽く叩いた。
「・・・・・」
  彼女の瞳は、こころなしか、潤んでいるように見えた。その奇麗な瞳は、影が色濃く射していた。
  照美は、優しげな表情を見せた。ゆららが見た照美は、とんと、由加里には縁のない代物である。  由加里が見たことがあるのは、自分に対する敵意と蔑視が微妙にブレンドされた、奇妙な表情。それに、肉食獣の嗜虐心が加わると由加里にとって、なじみの照美になる。

  一方、ゆららが見たのは、その真逆を行く照美だった。だから、簡単に心を許す気になった。しかし、そうは単純な彼女ではない。自分の分際というものをわきまえている。いや。それ以上に、自分に対する評価が低い。それゆえに、照美のような素敵な人間に、まともに相手にしてもらえるとは思っていない。そのために高田のような輩の走狗となってしまってもいる。
「どうしたの? 今日はすまなかったね ―――」
  照美は、表情にも増して、優しげな声をかけた。はるかは、自分はそんな甘い顔を見たことがない ――――と不満そうな顔つきだ。
「ど、どうして、こんなことをするんですか?」
「敬語? 友だちどうしなのに?」
「友だち?」
  顔を顰めたゆららの顔はとても可愛らしい。これで中学生というのは詐欺だろう。単に、サイズの問題ではなく、本質的なところで、純粋に少女なのだ。簡単に表現すればませたところがないというべきか。

  多少、天然パーマのかかった髪は、しっとりとしていて、パッと見では、整髪料をつけているようだ。当然のように中学では、校則でその利用は禁止されているために、何度も格子の魔の手に引っかかっては、涙を呑むような目にあっていた。
  照美の目には、好ましく見えた。髪の豊かな輝きは、目の保養になるような気がした。高田や金江など口差がない連中からは、よく、ゴキブリ呼ばわりされていたものだが、何を言われても、全く反論らしい言葉を聞いたことがない。
  高田のあくどい命令によって、針金で作った触角を頭につけて、教室中を走り回った。それは恥辱などという言葉では、表現できないほど辛い体験だった。
  しかも、笑いながらそれを行ったのである。付け加えれば、積極的という但し書き付きである。
「ゴキブリ!あははは!ゴキブリ! 」
  などと高田と金江たちは、腹を抱えて笑っていた。
  ちなみに、すべてが終わったあとで、高田と金江によって、頭をなでなでしてもらっていた。まるで幼児扱いである。
  そうやって、ジャブのように弱いいじめを永年に渡って受けてきたゆららと、由加里とでは自ずと状況が異なる。前者にとってみれば、ヘンな言い方だが、後者はいじめ初心車のぶんざいで、騒ぐなともで言いたくなる。もっとも、その残酷な仕打ちを思えば、同情もしたくなる。しかし ――――――――。

「あの人、小学校の時にいじめをしていたって本当なんです ――――の?」
「本当だとも」
  照美の手が、ゆららのウエットした髪に触れる。
  ゆららは、頬が自分のものではないように、なるのがわかる。そこが赤く発熱していくのが、見ていなくても、あたかも、視覚的に理解できる。まるで、幽体離脱して、第三者的に自分を見ているようにわかる ――――ということだ。

―――どうして、これほどの人が自分のような人間に目を向けるのだろう。
  不思議でたまらないのだ。
「私、ばかだし ―――」
  それは、彼女の常套句だ。由加里も聞いた。
「誰がばかだって?」
  照美の意外と大きな手がゆららの頬を触れる。少女の脊髄に電気が流された。
  音楽家の手の強さと温かみ。楽器を扱うには、その筋肉の発達に柔らかさと強さの微妙な複合が要求される。
  まさに、彼女の手は、それに相応しい。百合絵などは、それを見越して嫌がる照美をその道へいざなったものだ。もしかしたら、未だに、それをあきらめていないかもしれない。
  ゆららは、しかし、その手よりも声に注目していた。女性とは思えない低い声、アルトというには低すぎる。まさに低音の美声というべきだろう。
  もしも、この声で歌ったらどれほど美しいか。そう、彼女に唯一誇れるものと言えば、歌だけだった。密かに歌を愛好しているのだが、その性格から表に出すのは、はばかれている。

「そんなの、照美さんが、知ってるでしょう?」
「友だちで、照美さんはないじゃない?」
「・・・・・・・・・・・・・?!」
  その時はるかが、黙っていられなくなったのは当然だ。彼女を呼び捨てで呼ぶのを許しているのは、彼女だけなのだから・・・・・・・・・。
「照美ちゃんでいいじゃないか? くくくくくクククククク!!」
「ちょっと、何を笑っているのよ?!」
「ウウ・・ウ・ウ・ウ・ウウウ・・て、照美チャンだって?! くくくクククくくく!」
  照美は抗議するが、照美は意に介さず、笑いこけている。自分で言って、ツボにはまってしまったのである。思えは、哀れな光景ではある。
「いい加減にしてよ」
  照美はふくれた。

  しかし、以前のような嫌悪の波を発してはいない。しかし、そんな自分に改めて気づくと、ばつが悪そうに顔を赤らめた。しかし、すぐに表情を元に戻すとゆららに向き直った。
「いいこと、あなたは、決してばかじゃないわ。他ならぬこの私が言うんだから本当よ」
「・・・・・・・・・・・」
  たしかに、照美が言うなら真実の一端は存在するかもしれない。しかし、その一言だけでは、永年かかって、刻印されたレッテルが剥がれることはないのだ。ゆららの表情が変わらないのを見て取った照美は、言い方を変えることにした。

「必ずしも、知能指数が成績に反映するわけじゃないのよ。あなたはやり方が下手なだけ。いいわ、  私が教えてあげるわ。成績アップは保証するわよ」
「いいか、バカの好例を教えてやろうか、高田のような輩だな ――」
 はるかが口を挟んだ。
「そうね、安心したらいいわ」
「・・ウウ・ウ・・ウ・・・」
 照美の長い指が、ゆららの髪をかき分け、広い額を探り当てたときのことだ。彼女は思いあまって泣き出した。
 今まで、彼女を人間として扱ってくれた他人はいなかった。
 由加里の泣き顔が浮かんだが、あえて、打ち消した。
 
 いや、家族でさえ、ゆららが成績が悪いことは、既定事実となっていた。優しい家族は、申し合わせたわけではないが。彼女のことを慮って、成績の話しは、タブーにしていた。
 しかし、それ故に互いに、見えない気を遣い合い、永年の間に、見えない疲労が重なってしまった。その結果、笑い声が絶えない一家は、いつの間にか閑古鳥が鳴く家になってしまった。
家庭でさえ、そうなのだから外の世界のことは言わずもがなである。

 みんな、ゆららを小馬鹿にし、唾を吐き続けた。表面的に笑っていられたのは、少女の悲しい自己保存の本能にすぎなかった。その笑顔の仮面。その内側は塩辛い液体で濡れそぼっていた。しかし、金属製の仮面はいつか錆びて、朽ちる。その時のことは考えていなかった。考えることはイコール死につながる恐怖につながるからだ。
 今、彼女はそれを考えなくていい相手に出会った。嘘でもいいから、自分のことをばかにしない人間が存在した。そのことが嬉しい。自分ごときに、嘘を付いてくれる照美たちの優しさが、何よりも嬉しいのだ。
 今、彼女が遇されている方法は、彼女にとってVIP以外の何者でもない。まさに大統領扱いと言っていい。

  ゆららが感涙にむせんでいるとき、由加里は何をしていたのだろう。
  はたして、パソコンを枕に寝入ってしまっていた。その現場を、可南子に押さえられたのである。
「由加里ちゃん、お注射の時間ですよ ・・・・・・っとお眠りですか?赤ちゃん?」
  彼女が病室に入ってまず目に入ったのは、由加里の寝顔だった。睡眠中は、宿世の苦痛から解放されているのか、その寝顔は、普段とちがってとても可愛らしかった。
  その愛らしさは、思わず食べてしまいそうなほどだった。
  しかし、めざとい可南子の目に入ったのは、由加里にとって、致命傷になるほどのものだった。
パソコンのモニターである。
「あら、何を書いているのかしら? ――――え?」
可南子は目を疑った。

「ゆ、由加里! な、何をしてる!?」
  西宮和之は、唖然とした。何と、娘がジッパーをおろすなり、彼の巨大なペニスを亀頭部をパクッと口に入れたのだ。そして、いかにも大切そうに、両手で支えると溝にそって舌を這わせたのである。
  由加里は、14年の生で、夢にまで視た瞬間を味わっていた。父親のペニスを銜えて、舐め回すことが、彼女のはかない夢だったのである。
「ウグウググ・・・・・! や、やめんか! 由加里!」
  和之は、今更ながら、この娘の浅ましさに呆れたのである。妻が口癖を良く聞いていた。
「由加里なんて、生むじゃなかったわ」
  その意味を今更ながらに、再認識したのである。
「やっぱり、お前なんて、うちの子じゃない!!」
「ひぐ!」
  和之の蹴りが、由加里の腹に命中した。しかし、より苦痛を感じたのは父親のほうだった。娘の歯が、息子の茎に突き刺さったのである。
「うぎぃ!!」


「え? この子、一体なんて言う物を読んでいるの?」
 可南子は、ノートパソコンのかたわらに本を見つけた。それは相当に古びた本だった。『O嬢の物語』ジャン=ジャック・ポーヴェール著、澁澤龍彦訳。そして、その下に隠れていたのは、B4版の大きな写真集だった。『SM美少女、K子の生涯』
 表紙には、そうとうきわどい写真が飾られていた。かなりの美少女が縛られている。だが、古めかしい印象を受けるのはどうしてだろう。
 それは、ともかく可南子の目を引いたのは、彼女の胸である。縄で縛られて、飛び出ているとはいえ、その大きさは尋常ではない。
  しかも、セーラー服からは、たわわな乳房が零れている。その大きさに、密やかなる嫉視を向けた。
「ふん、どうせ胸が大きいオンナはバカなのよ、だからこんなモデルにしかなりようがないだわ!」
  その写真集を手にとって見ると、さらにおもしろい秘密を手に入れた。その裏に油性マジックで、こう書いてあるのだ。

 向丘第二中学 2年3組 西宮由加里
 錦原町23-2―1。

「ふふ、何て言う秘宝を、私は手に入れたのかしら」
可南子はその写真集を密かに、本棚の扉を開けると、中に放り込んだ。そして、すぐさま彼女のかわいいペットを起にかかった。
「ひ ――――――――――?!」
 由加里は、知的に輝く瞳を歪めると、悲鳴を上げた。それは、小動物の断末魔を彷彿とさせた。可南子は、悪魔的な性格で、子どものころ、捨てられていた子猫やモルモットをおのれの趣向のために、殺したことがあるのである。
「ふふ、何ていう声をあげるの? 私はアクマじゃないわよ、取って喰いやしないわよ」
「見た!? 見たの? 見ましたか?」
 少女は、パソコンを華奢な体で隠した。
「あら? あなたに愛されるなんて、うらやましいパソコンね?」
 由加里の頭上に、絶望的な声が落ちた。まるで、金属バットで頭をかち割られたような気がする。目の前に赤い血が流れる。目の血管が絶望のあまり、出血したのか。
「ふふ、みたわよ」

「ただしクンって?誰? 由加里チャンの思い人?」

「え?」
 ふいに安堵の色を浮かべる由加里。まるで空気と格闘している気分に襲われた。そのむなしさに息を吐く。
 しかし、そんな気分も長続きしなかった。
「お薬を注射の時間ですよ」
「?」
 一体、何を注射するというのだろう。看護婦が可南子だけに、得体の知れない薬かもしれない。自分の生殺与奪を彼女に握られていることに、なんとも言えない不安を感じた。
「ふふ、でも、二の腕に注射するわけじゃないのよ」

―――――え? まさかお尻?
 由加里は恥ずかしさのあまり、それを言葉にすることができなかった。しかし、可南子がこれからしようとしていることは、恥ずかしいどころではないのだ。
「ちがうわ、これよ、普通のお注射とちがうでしょ?」
「な?」
 それは注射というにはあまりに、不思議な形態をしていた。確かに注射器は注射器なのだが。まるでおもちゃのそれのように、チャチだ。そして、その先には針ではなくて、ストローのような透明な筒が嵌っている。
「それは ――――?」
 由加里は、それを見たとたんに、悪寒を感じた。理性ではわかっていなくても、無意識ではその背後に存在するおぞましさをわかっていたのかもしれない。
「その注射器でね、これをお注射するの」
「?」
 可南子が、見せたのは、正露丸ほどの大きさの薬瓶である。そこに横文字が書かれている。そして、その下に男性の名前が見えた。
 SPERMA
 遠藤唯司
 その下の細かい文字は、角膜が汗を掻いたために、よく見えなかった。
「ス ――――スペル?」
「頭のいい由加里チャンならわかるでしょう?」

 この時点で、先ほど見つけた秘宝のことを、明かにするつもりだった。しかし、よく考えて止めた。楽しいことは後に残しておこうと思ったのだ。彼女は食事でも、好きなおかずは後に残す。それが小さなころからの習慣ではないか。
 悪魔の看護婦は、話しを続ける。

「この病院はねえ、避妊治療でも有名なのよ。知ってる?由加里チャン、避妊ってね、女性だけが原因じゃないのよ、たまに男性のせいってこともあるの」
「そ、それが、私になんの関係が、あるんですか?」
 あくまで、自分には関係ないと思いたいらしい。要するに現実逃避である。
「これはねえ、ただしクンの精液なの?この中には、元気なオタマジャクシがいっぱい泳いでいるのよ、検査の結果わかったわ。問題ないってわかったから、破棄されるはずのを持ってきたのよ、由加里ちゃんのためにね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 鋭敏な由加里のこと、この時点ですべてを理解してしまった。しかし、それを理性で認識するか否かは別であろう。目の前の人間は、自分に何やら、怖ろしいことをしようとしてる。粥のようになった脳細胞が理解できるのはその程度だった。
「由加里チャン、もう14歳でしょう?妊娠してもおかしくないわよね。初潮迎えてるんでしょう? 生物学的に、これは健康で正常なことよ。 それに由加里チャンは人間とは思えないくらい淫乱の変態さんだし ―――――――――」

「ヒイイィイイ!」
 由加里は、悲鳴を挙げた。股間に可南子の手が伸びたのだ。子猫が踏みつけにされた声に似ていた。
 かつて、高校生のころに犯した罪が蘇る。看護学校の受験に追われていた可南子は、道端で見つけた子猫を殺すことでストレスを処理していた。まるで、家のゴミを処理するように命を捨てたのである。人間として最低なのは、議論を待たない。
 由加里は、その人非人に睨まれたのである。アクマの獲物にされたのである。生きたまま全身を刻まれ、苦痛の声を上げるだろう。この鬼畜は、少女が悶える姿を見物しなが、果てるのである。その後、少女の血があふれる風呂で、鼻歌を歌うにちがいない。

「ぃいいいいいいいいいい!」
 すでに、少女の口は、人語を喋る道具ではない。声帯や舌は、声や言葉を構成するということを忘れてしまった。
 彼女の瞳は、針になっている。その視線の先に、おぞましい注射器が薬瓶に挿入されるのが見えた。しかる後に、白い液体が逆注入されていく。
 
 S P E R M A
 
 その6個のアルファベッドは、由加里の頭のなかで、ばらばらに、ダンスを踊り始めた。
「ただしクンてどんな男だと思う? 白痴よ、知恵遅れなの! そんなのが子どもと持とうって言うのよ! 何て言うハレンチな話しかしら!?」

――――な!?
 ヘンな話しだが、この時、可南子が汚らしい本心を明かにした。このことは、由加里にとって幸いだった ――――のだろうか?
 それは歴史の神の判断に、委ねよう。
「ひどぃ! あなたアクマよ! 人間のクズだわ! 最低!どうしてそんなひどいこと言えるのよ!!」
 由加里は、自らのことよりも、その見知らぬ男性のために、もちまえの優しさを発揮していた。
「そうね、由加里チャンは頭が良すぎるから、生まれる子は、その間を取って普通になるかもしれないわね」
「ムグググググぐぐぐ!」
 由加里の口に、シーツを丸めたものが押し込められる。
「ちょっと、静かになさいね、子猫チャン」
なんと、はるかな昔、殺した猫たちと由加里を同一視しているのである。
「さ、用意できたわ、妊娠してもらいましょうか? そうね、たたしクンはこの病院に出入りしているわけだし、あなたを犯すっていう設定もムリないわね」

――――あなたの書いている小説に、相応しいじゃない?
 そういう言葉をこのとき、すんでの所で、呑みこんだ。
 喉に詰まったが、無視をした。愉しみは後まで残しておこう。
「さ、処女を失わないで、妊娠できるのよ、これってもしかして受胎告知かしら? 私って告知天使ね。まさに私に相応しい設定だわ」
このオンナにとって、現在起きていることは虚構なのだろうか。由加里は気が遠くなるのを感じた。今、口に詰め込まれているスーツは、あるものを思いだして、嗚咽を憶えた。

 父親、和之のペニス。

 目の前に、成人男性の亀頭が忠実に再生された。照美たちに見せられた映像だ。ネット世界に漂っている画像だと
はるかが教えてくれた。
  それは、二人が西宮家を訪れたときのことだ。自宅のパソコンで見たのである。はるかは、由加里の耳元で囁いたものだ。

「いいこと? この履歴はずっと残るんだよ。 西宮のご両親に見てもらうかな?」
「心配しないでね、履歴の消し方は私たちだけが知ってるパスワードが必要なの? あなたが私たちの人形でいてくれる限り、ばらすことはないわよ」
こんなことを言う二人でも、可南子とは雲泥の差だ。何処というのではないが、人間の差というやつである。本来、人間というものは悪を行うでも善を行うでも、品というものがる。可南子が最悪とすれば、 照美とはるかは、最上級である。

――――助けて!ママ!パパ!冴子姉さん!郁子! 海崎さん、鋳崎さん!助けて!
「さあ、妊娠しまちょうね。14歳のママのご登場ですよ!はーい」
 悪魔が笑い声を上げた。
 由加里の目の前には、注射器が彼女の女性器に突き刺さろうとしている。それは、あたかも、乳幼児のそれのように、あからさまになっていた。




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『マザーエルザの物語・終章 10』
「ウウ・ウ・・ウ・ウウ・・・・うう!」
  あおいは、涙の粒が食器の上に、落ちるのを幾つも確認した。しかし、もうどうしようもない。彼等は、何かしら少女に訴えかけているのだが、その真意を知ることはできない。いや、探ろうとする。
今、自分の脳はどのようになっているだろう。身を裂かれそうな悲しみのなかで、ふと、あおいはそう想像してみた。
   CT―スキャンしたら、きっと、アルツハイマー患者よろしく、空の脳が見えることだろう。いつか、家族で見たドキュメンタリー番組で仕入れた知識だ。勉強はそれほど好きでないし、積極的に取り組むことはないが、憶えはいい。
  いや、本人の自覚はないが、大人たちはそう言って誉めてくれる。いや、それは過去形だろう。いや、高得点の答案を見せても、「ずるしたんでしょう?」と言われかねない。そんな経験など、全くないのに、どうしてこんな想像が浮かんでくるのだろう。いや。想像しなければならないのだろう。

「うう・う・う・う・・ううう!」
 裾で涙を拭う。
「あおいちゃんは、頭がいいのね、勉強しなくても良い点がとれるんだから、でももう少し努力してほしいな ―――」
 いたずらっぽく笑った母親は、年齢よりも若く見えた。お姉さんのような母親。あおいは、大好きだった。いや、今でもその気持は焦ることはない。かえって、失ったいまこそ、その愛情を余計に感じる。どれだけ、母親に愛されたことがよくわかる。

―――ちがう! 今でもママに嫌われてなんかない!!

  自分の内面に存在する、何者かに、牙をむいた。
しかしながら、実在しない猛獣を怒鳴りつけても、誰も誉めてくれないだろう。今まで、たいした努力をしなくてもチヤホヤされた“あおいちゃん”はもう何処にもいないのだ。

「そんなところで、拭いたら、せっかくのいっちょうらが台無しよ、ほらおいで、拭いてあげるから。あおいちゃん! 笑って! 折角の可愛い顔が台無しよ!」
  久子は、そう言って涙で濡れた頬を脱ぐってくれた。その手は、お日様と同じように温かかった。大好きだった。いや、今でも大好きだ。そして、家族は彼女のいちばん、大切なもののはずだった。
  しかし、今は ――――――――。
  彼女の涙を拭ってくれるママはもういない。
  有希江も久子に促されて、キッチンを去っていった。彼女の最後の言葉が、いまでも耳にこびりついている。
「ちゃんと、後始末するのよ! 一枚でも割ったら許さないからね、お給金から抜きますから」

―――お給金って何だっけ?
  確か、国語の授業で、読まされた小説にそんな言葉があった。

  あおいは、小学生の未経験な頭をフル稼働させて、今、自分が置かれた状況を理解しようとした。しかし、何も浮かばない。思いつかない。目の前で、ぞうきんが動いている。
  いったい、誰が動かしているのだろう? 何のために動いているのだろう? 
茉莉にされたいじめのせいで、ハンガリアチキンが零れたのだ。妹は、あおいが全部食べ終わるまで、許してくれなかった。まるで犬のように、いや、犬になってエサをもらった。

―――え?いじめ? あたし、いじめられたの? 家族に? 妹に? そんなこと?!
  姉としての自尊心が、少女にそう思わせていた。こんな小さな、まだ初潮も迎えていない少女の、華奢な身体の中に、たしかに確としたものが芽生えていた。
  だが、あらためて、それを自覚するほど、少女は精神的に成長しておらず、ただ戸惑う能力があるだけだ。目の前のぞうきんは、なおも動いている。一体、誰が動かしているのだろう。

―――え?私? 本当に、私が動かしているの?!
  あおいは、自分の視覚が信じられなかった。いや、五感、すべてが信じられないと言っていい。床のゴム臭は、フローリングのコーティングのせいか、ワックスのせいか。
  そして、加えて、全身の痛みは何なのだろう? 何処かにぶつけたのだろうか。
  よもや、自分が、誰からも愛される自分が、暴力をふるわれることなんて、ありえない。
  だから、何か硬い物に身体を打ち付けたのだ。
  だけど、それにしては、おかしい。背中が痛いのだ、どうやって、そんな場所を打つというのだろうか。寝返りが悪かったせいだろうか。

  頭や顔までが、痛い。どんな寝方をすれば、こんなことになるのだろう。しずちゃんに聞いてみたいものだ、ちなみに、それは、あおいが小さいころから気に入っているぬいぐるみのことだ。この狸のぬいぐるみは、少女の寵愛をたいそう、賜ったものだ。
  あくまでも、先ほどまで、自分に起こったことを認めたくない。そんな思いが、あらぬ妄想を掻き立てる。手を動かす。ひたすらにぞうきんを動かす。あたかも、この世の始まりから、終わりまで、ずっとそうし続けるかのようにすら思える。時間の間隔が全くない。誰かに止めてほしい。自分では、もはや止められない。ありえないはずの永久機関が、悲しみをひたすらに増刷し続ける。
  しかし、そんな少女を止めた者がいた。

「あおい!」
「ウ・・ウ・うう?!」
  もはや、人間としての言葉は出てこない。
「もういいよ、そこで休んでな、後は私がやるから ――――」
言うまでもなく、有希江だった。あおいは、その優しい手に誘導されるまま、椅子に座った。姉は、何も言わずに、休むように促してくれる。
「・・・・・・・・・・」
  もはや、涙も出ないという様子で、机の表面を見つめる。

――あ、こんなところに傷があったんだ。
  今まで、気付きもしなかったへこみを見つけた。マホガニーの机とはいえ、長く使っていれば、傷の一つも走るというものだ。ちなみに、あおいが生まれる遥か前、この机が、榊家にやってきたのは、徳子が赤子の有希江をあやしていたころだ。
  少女は放心状態のまま、数分を過ごした。その間、有希江はてきぱきとした手つきで、後始末をこなしたが、あおいはそれをよく憶えていない。ただ、いきなりやってきた精霊が、光のスピードで、あっという間に終えてしまった ―――――そんな認識しかない。

「あ、有希江姉さん ――」
  だから、後始末を終えた有希江に、肩を触れられたとき、まったく反応できなかった。まるで人形のような感触に、有希江も凍り付いた。
「お腹、空いただろう、用意しておいたから、私の部屋で食べなさい」
「・・・・・・・・・」
  かすかに俯いただけで、あおいは、小刻みに震えるようだ。有希江は妹を立たせると、まるで老人を介護するように、自分の部屋へと誘う。
  あおいが、意識を取り戻したのは、栄養がその身体に、生気を蘇らせて後のことだった。
その様子は、命の保証を得た傷病兵が、改めて苦痛で呻きだすのに似ていた。皮肉なことに、虎口を逃れた傷病兵は、命の保証を得て、はじめて自分が痛みを感じていることを思い出すそうである。

「ウウ・ウ・ウ・・ウ・ウウウ・・うううう!!」
  あおいは、有希江の部屋で、与えられたサンドウイッチを頬張りながら、泣き出した。それには、有希江の手のぬくもりが残っていた。
  それは、彼女にとってみれば薬だったのかもしれない。妹を気遣う気持があったのなら、薬にちがいはない。
 薬は、時に毒になる。
 その微かな優しさであっても、今のあおいには毒薬だった。少女の焼き爛れた喉と消化器にとってみれば、ごく微少の薬物でさえも受け入れることはできなかった。その反応が、激しい嗚咽と涙だった。
  口に入れたとたんに、息が出来なくなった。
  そのかけらに、有希江の優しさを感じたからこそ、である。
  かつて、家族から受けた愛情の片鱗を呼び覚ましたのかもしれない。
たった1日前のことなのである。まるで、悪い病気に感染したかのように、家族の態度は一変してしまった。
  その極寒の中で、唯一の温もりと思われたのは、有希江だった。あおいにとってみれば、それが目に眩しく、肌には火傷すると思われるほどに熱かったのである。

「有希江姉さん ――――どうして、こんなことになったのかしら」
  まだ嗚咽を残した口調で、言葉を紡ぎはじめた。サンドウィッチを食べ終えて、温かい紅茶を煤って、一息入れたのである。時刻はすでに午前0時を超えていた。
「たしか、茉莉のこと言ってたわ、心当たりはないの?」
「・・・・・わからない ―――」
  あおいは頭を抱えて、苦悩を表す。
  それも仕方ないと思う。どのような理由があろうとも、妹が、あのような仕打ちを受ける筋合いはない。しかし、何故か、それを強弁する気にならない。
「私、何も悪いコトしてない!」
「・・・・・・・?!」
   有希江は、ふと、今までになかった感覚が身の内に起こるのを感じた。

―――――それは違う!
  具体的に、何を指すのかわからないが、確かに何かを感じる。ちょうど、それは、料理の隠し味のようで、味の鍵を握っているのだが、その正体がようと知れないということは、よくあることだ。
「ねえ、そうでしょう?!」
  口調は、勢いをまして、いつの間にか抗議になっていた。

――――どうして、私にぶつけるのよ。
  あおいに対する憐憫とふつふつと沸いてきた不満。
  両者の葛藤は、常に、有希江にまとわりつき、彼女を悩ませてきたことだった。ただ、一つだけ違うことがある。
  それは憐憫でなくて、愛情だった。
  いつも笑っていて、家族に黄金の光と福をもたらすニンフ。
  彼女は、いわば、榊家に咲いた一輪の花だった。家族にとって、アイドルそのものだったことは、もう書いた。有希江も当然のように、妹を愛した。口では、彼女の天性のものである口癖の悪さが頭をもたげたが、それは決して本心ではなかった。それは、あおいも承知していた。互いの間には、他の家族同士とは、また違う信頼感があった ―――はずだった。
  しかし、その半面、敵意を抱いていたことは否定できない事実である。それが、今、この時に蘇ってきたのである。あおいが、絶体絶命のこのときに、頭をもたげてきたのは、皮肉中の皮肉だった。

  あおいは、回転椅子に座りながら、足を組んでいる。その伸ばしている足の細さに、わけのわからない感情を憶えた。しかし、細いとは言っても、大人のようにくびれがはっきりとしているわけではない。その不完全さが、いささか哀れみをも憶えた。
  感情の冷却や、自動的にその身体に影響した。
「あ、有希江姉さん・・・・・・・・・・」
あおいは、その温度差から、熱いと感じ、有希江はその逆に感じた

――なんて、冷たい。こんなに冷え切っているの?
その熱は、有希江の怒りを、一時的にしろ、冷ます役割をしたのかもしれない。
「ああ、ゆ、有希江姉さん?」
  あおいは、姉の不自然な手の動きに、動揺したのか、ぷるぷると震えた。怯えた目で、姉を見上げる。
「きゃ ――――――」
思わず、回転椅子から、転がり落ちる。
  あおいは、目をシロクロさせて、姉の様子を観察した。
「どうして、こんなことになったと、あおいは思うの?」
「・・・・・何か悪いことしたから?」
  まるで誰かに質問するような答えだ。
「・・・・・・・・・」
 有希江は喉の渇きを覚えた。
炎天下の砂漠を、何時間も歩き通した旅人。彼等は、食糧も水すらなしで、歩き通したのだ。そして、やっと、辿りついたオアシスでは、美味しそうな料理が、湯気を立てていた。

――――どうしてだろう?
 彼女は、自分の気持ちを訝しく思った。あおいは、同性、しかも妹なのだ。それなのに、あらぬ感情を抱いている自分を不思議に思った。

――――私に、こんな趣味があったなんて・・・・・・・。
 それは、今まで、茉莉やあおいに感じていた感情とは、性格を異にするものだった。有希江は、密かに舌なめずりをした。
  確かに、可愛い女の子は、そばにいて気持ちいいとは思う。後輩は、有希江を姉のように慕っているし、バレンタインの日には、鼻血が大変だと、同級生から大量の鼻紙をプレゼントされるほどだ。大変、手の込んだ皮肉だが、同じ日、下駄箱にはチョコレートが置いてあり、同級生の名前が書いてあって、うんざりしたものだ。
  それはともかく、彼女たちを可愛いと思うのは事実である。面倒見のいい有希江は、後輩に限らず、同級生の女の子にも好かれている。
しかし、それはネコを愛おしく思う、それ以上でもそれ以下でもなかったはずだ。間違っても性的な好奇心の対象ではなかったはずだ。それなのに、今、有希江は、あおいに飛びかかろうとしている。

「ゆ、有希江姉さん ――――」
「ふふ、知ってるのよ、お風呂場でヘンな声あげてたでしょう?」
  あおいは、有希江が想像したような顔はしなかった。その可愛らしい顔に、羞恥の色は見えない。
「有希江姉さん、私、病気かもしれない。こんな」
「ふうん、あんな声だして、何をしていたの? あおいちゃんは?!」
 有希江は重々承知のくせに、あえて聞いた。あおいは気づかなかったが、彼女の切れながらの瞳は、慧眼よろしく輝いていたのである。そこには、有希江自身気づかない悪魔が、寝そべって酒盛りをしていた。
「うん ――――」
はじめて、あおいは羞恥心を顕わにした。しかし、彼女じしん、どうして自分の顔から火が出そうになるのかわかっていない。なんと言っても、彼女はまだ10歳の小学生にすぎないのだ。




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『由加里 56』
「ほう、早速、創作意欲に燃えてきたようだな」
  鋳崎はるかは、ほくそ笑んだ。
  由加里は、ほぼ本能的に目を背ける。それは、怖ろしいものから、身の安全をはかるための当然の行動だろう。
「ウウ・・・ウ・・ウ・・ウウ・・・ もう、もういじめないでください!ウウ・・ウ・ウ・ウ・・ウ・・・うう!」
  まるで園児のように、両手で顔を覆って、泣き出す。
「よくある現実逃避だな、西宮、だけど、これがおまえの現実なんだよ! 見ろ! 目を背けるな!」
はるかは、本を一冊、彼女の鼻先に押しつけた。さきほどまで凝視していた18禁本である。整った鼻梁が歪む。
「今すぐ、小説を書いてみなさい。そうね、小学生の由加里ちゃんが、パパにセックスをねだるっていう設定で書きなさい」
「どんな筋が頭に浮かぶのか、言ってみろ」
 はじめて、二人のコンビネーションが成立した。期せずして、二人は、同じ位相に立ったのである。しかし ――――。
「ふん」
「ふん」
  別に、マンガのように違いにそう言い合ったわけではない。しかし、目と目でそう会話したのである。そのことは由加里に伝わっていた。
「プ・・・・・」

 少女は、煉獄で拷問されているにもかかわらず、獄吏のコミカルな態度に、噴き出してしまった。彼女は、この二人のことを完璧に見抜いていた。
「な、何を笑っている!? はやく言ってみろ!」
 しかし、すぐに拷問は再開された。もう笑っているばあいではない。
「ウウ・・ウ・ウ・・ゆ、由加里は、お父さんの・・・・」
「実名で言いなさいよ、あなたの父親の名前は!?」
 照美は、情け容赦なく命じた。
「そんな・・・・・ウグ!」
 照美に教えられた筋から、イメージが沸いてくる。はるかの訓練によって、些細なイメージの水滴から、いくらでも海が生まれてくるようになった。
 
 小学生の由加里、まるで成長アルバムを見返すように、かつての自分の映像が浮かんでくる。
「あははは、ママ、パパ、早く来てよ!」
 彼女は、庭を走り回っていた。ひたすら、無邪気に、あるいは無遠慮に、世界を満喫している。
「あはは、パパ、こっち」
 ちょうど、大きな木と納屋がある場所がある。ここは周囲から視覚になる。自分の家族からも他人からも、隠れることができる恰好のばしょだ。
「パパ!」
「どうしたの? 由加里ちゃん」
  西宮和之は、相当腰をおらねば、愛娘と視線を合わせることができなかった。まだ、若いおそらく20代後半だろう。はつらつとした感じからは、青年医師としての栄誉を欲しいままにしているのが伝わってくる。
「由加里ね、パパのたいせつなもの、ほしいの」
「え? なんだい?おい、由加里! 止めなさい! やめろ!」
  由加里は、和之の社会の窓を開けると ―――――――――――。
「いいやあああああああああ!!」
 少女の視界いっぱいに、和之のペニスが入った。亀頭溝にこびりついた恥垢の臭いまでが、リアルに再生される。
  由加里は自ら紡いだイメージに、取り込まれてしまった。あまりの俗悪さに、自己嫌悪の海に沈んでいくように思えた。いや、その方がかえってましだったかもしれない。照美やはるかは、そんなことを許すはずはない。
 えり首を摑まれると、海中から、乱暴に引きずり出された。

「何がいやなんだ?!」
  由加里の性器に圧力が加えられる。ナイフの柄がペニスの代わりに食い込んでいく。
「はやくしろ! 官能に身を委ねるあまり、実の父親の名前を忘れたというのか」
  はるかは、自分の言った台詞で、顔を赤らめた。照美は、あからさまに笑った。
「・・・・・・・・・・く!」
「か、和之に、せ、せ、セックスをねね、ウウウ・・・ウ・ウ・ウ!ねだりますけど・・・・・う・う・う・きょ、拒否されて、、お、オナニーしているところを、ウウ・ウ・・ウ・ウ・ウ・ウ・・ウ!家を追い出されます・・・・・ウ・ウ・ウ・ウ・・ウウウウ!」
  まさに、はるかの訓練が功を奏していた。プロットを組み立てるという段階では、一発の官能作家になっていた。
「パパのあそこが、我慢できずに、はじめちゃったわけだ。淫乱な西宮らしいな」
 はるかが、勝ち誇ったように言い放つ。

「ウウ・ウ・・ウ・ウ・ウ・ウウ!!」
 由加里は、自分の口を使って、あまりにハレンチなことを言わされたわけである。しかも、言葉を発するためには、頭を使うことが肝要だ。
 自分の頭を使うということは、能動的に、性的な情報にアクセスするということだ。性的な情報とは具体的に言えば、記憶のことだ。今まで、二人によって、無理矢理に見せられた18禁マンガや小説、エロサイトの情報は、由加里の記憶になって脳内に蓄積された。
 それに加えて、いままで彼女自身の好奇心によって蓄えられた記憶もあろう。

 つい、最近まで、由加里はそのようなことに、全く興味がないと思っていた。コンビニなどで、男性向けの雑誌が目に入るたびに、思わず顔を赤らめていたぐらいである。
 確かに横目で、それを見てしまうくらいのことはあったのである。それは、思春期を迎えた少女なら、当たり前のことである。
 しかし、きまじめな由加里は、それを当然のこととは、受け取れなかった。
 
 性的な物は悪であり、近づくべきものではない。大人ですらそうなのに、まだ子どもにすぎない自分が興味を持つなどとありえないことである。
 それが彼女の、性的なものにたいする印象であり、自己イメージとも重なっていた。それが、二人によって無理矢理に破壊され、新たなイメージを擦り込まれたのである。その結果、彼女は、自分が汚らわしい淫乱という錯覚を持つにいたった。同時に、行われた性的ないじめは、それを加速させるだけだった。
 結果として、行くところまで、行ってしまった自己嫌悪は、少女をさらなる精神的な煉獄へと誘うのだった。そこに、一体何が待ち受けているのか、獄吏であるはるかと照美も、そして、二人に責めさいなまれる由加里も、検討すらつかない世界だと言わねばならなかった。

だけど、西宮さんたら、よくもこんな恥ずかしいことが、頭に浮かぶよね」
「ウウウ・ウ・・ウ・ウ・・ウ・ウ・うう!」
「西宮、ほら、はやくはじめるんだ ――――」
 はるかは、用意の良いことに、ウィンドウズを起動し、ワードが使えるようになったパソコンを押しつけた。
 由加里は、涙を流しながらも両手をキーボードの上に這わした。

「パソコンは、あなたのあそこじゃないのよ、力任せにやったら壊れるからね」
「ウウ・ウ・ウ・ウ・ウ・・・・・うう!」
 照美に、罵られながらも表題をつける。
『近親相姦、中学生の変態少女とパパの許されざる昆交』
「すごい題ねえ? 西宮さん?!」
「中学生淫乱作家の本領発揮だな」
  実は、はるかに貸し与えられた書籍からの流用である。照美は、それを知らないが、はるかはもちろん、その超人的な記憶力からして、忘れているわけはない。
「だけど、独創性に欠けるんじゃないか、もっと、西宮らしさがないとな」
「アアアウ・・・・・・どう、どうすれば、アウウ・・あ!」

 由加里は、膣を弄られながら、はるかの言葉に耳を傾ける。彼女は一発の編集者ぶりを発揮している。彼女が、単なる運動少女でないことを証明しているだろう。そもそも対して、勉強もしないのに、成績上位を保っていることは、公然の秘密だった。
「ねえ、西宮さん、本当はナイフの柄なんかじゃなくて、本物のパパので、攻めてほしいんでしょう?!」
「ウウ・・ウ・ウ・ウ・ウ!ひどい!ウウ・ウ・・ウ・ウ・ウウ!う!そ、そんなこと・・・・・・・ウウ・・・ウ・ウウあ、ありません!ウウ・ウ・ウ・ウ・ウアウウ!! あうう!!」
「本当は、もうやってるんじゃないか? ほら、指を動かせ!」
「ヒギイィぃ! いたい!」
  はるかの指が、優雅な手つきで、由加里の耳に伸びると、一瞬で体育会系の本性を顕わにした。耳介を乱暴に摑みとると、有無を言わせずに捻り潰した。はるかの指に、心地よい硬さが伝わる。下手に軟骨が、中に入っていて、硬度を保っているだけに、潰された時の痛みは、耳蓋よりも強い。
「ああうう!! やめて! やめて! いたい!お、お願いですうぅ! か、書きます!書きますから! やめてええぇえ」
「良いじゃない?ここ、病院でしょう? いくらでも怪我しても治して貰えばいいじゃない? そのための病院よ、何を考えているの?!」
「ウウウ・・・ウ・ウ・ウ・・ウ!」

『西宮由加里の変態性欲、父の亀頭を夢見る』

 小説の題名は、何度も推敲された結果。それになった。
 キーボードを押せば、すぐにその文字が、意図とは別にインプットされる。由加里は、その操作を理解できるほどの知能を、与えられている。
 そのことを呪った。神といった超常的な存在があるとするならば、それを恨んだ。
実際に、彼女が生まれるときに付与された知性は、人並みをはるかに超えるものだった。この時、少女はそのことを自覚していない。そのことは高田や金江といった、よくても十人並みの知性を与えられた者たちの嫉妬を呼んだ。いわゆる、天賦の才というやつである。

 しかし、それがいじめの主因ではない。ただ、由加里がそれを使いこなすアートを習得していなかったということである。
 どうして、はるかや照美が、由加里と同じ徹を踏まなかったのだろう。その疑問を考えてみれば、その問いに対する模本解答の一つになるかもしれない。

 少女は限界を超えた羞恥心と恥辱のなかで、両手をキーボードに這わせていた。

 西宮由加里は、食事にあたって、家族とテーブルを共有することを許されなかったのです。
 こんなとき、由加里は絶対に聞きたくない音があります。
 しかし、どんなに塞いでも耳に入ってくるのです。由加里は自分が五体満足であることを呪いました。
 由加里は、自分のご飯ができるのを正座のまま、待ち続けます。それが、母親から命じられた食前のマナーです。
 
 その間、ひたすらに、その音が耳に響くのを怖れています。それは、家族のたわいない話し声です。由加里の姉と妹は、学校での出来事を美化して、愛する両親に語ります。彼等は、それを最大限の愛情を持って迎えます。その一欠片でも、由加里にあたえられることはありません。それを思うと、惨めな由加里は、涙を押しとどめることはできません。

 どうして、自分だけが愛されないのか。由加里はこの自問自問をひたすらに繰り返してきました。しかし、ようとしてその解答に辿り着くことはありません。
 こんな辛いときに、愛と食べ物に飢えた由加里は、何を思い浮かべて、その飢餓を癒やしたと思いますか? 美味しそうな料理を想像して、そうしたわけではありません。
 
 もしもそんなことすれば、どうしても、母親をはじめとする家族たちを思い浮かべてしまいます。その結果、耐え難い喉の渇きに、苦しむことになりそうです。
 きっと、100リットルの水を飲んでも癒やせそうにありません。すると、何も以て、代償行為と為すのでしょうか。
 端的に言うと、それは父親のペニスです。その巨大なこけしが、自分の性器に合わされているのを、性器の潤いを以て、思い浮かべるのです。
 
 両手が無意識のうちに、自分の性器に向かっていきます。

「アア・・・アああ、パパ、早く入れて! 由加里のいやらしいおまんこを、パパのおちんちんで埋めて!」


 由加里の両手が、キーボードの上で停止した。小刻みに震える白魚のような指は、少女の惨めな心持ちを暗示している。 ――――もう限界だと。

「ああ、もう、だめです、お願いですから、許してください・・・・・・ウウ・ウ・・うう!」
 由加里は懇願しながら、泣きじゃくりはじめた。涙の海に溺れながら、少女は、意味不明の安心感に包まれるのを感じた。少女は、照美とはるかの二人に、その秘密の鍵を見つけていた。二人に、いじめられることが、安心感につながっている。それならば、自分は変態なのだろうか。
「ウウ・・・ウ・ウ・・ウ・ウ・ウウ・・・うう・・・ウ・・・・ウウウ・・・・・・うう!」
 
 涙の理由は、照美たちのひどい仕打ちだけではないだろう。惨め。あまりにも、惨めだ。いじめられて、安心感を得ているなんて。少なくとも、ふつうの女の子としては、ありえないことだろう。恥辱と羞恥心で、喉の骨がくの字に曲がりそうに思えた。このまま一生、涙が枯れることがないように思えた。
「うぐ・・・・ウ・ウ・ウ・ウ・ウウ・・・・うう!」
「ふふ、いくら西宮さんでも、赤ちゃんじゃないんだから、泣いてことが解決するとは思わないよね ――」
 一見、照美の言い方は、提案のように聞こえるが、その実、一つの答えに導くことを強要しているのである。まるで、真綿で首を絞められるように、攻めてくる照美の手段は、彼女ならではの知性を感じさせた。

――ああ、私はこの人が本当に好きなんだわ。
 由加里は降参の白旗を挙げかけた。心の中では既に、それが風に揺らいでいたのである。そうすれば、どんなに楽だろうか。はるかから借りた漫画によれば、マゾの変態であることを告白すれば、はたして、二人はどんな反応をするだろうか。自分がいじめられていることで、欲情する変態だと、知ったら。

―――いや、違う! 私はそんな変態じゃない!
ここで、もたげてきたのは、まだ存命中のプライドだった。この時、由加里の瞼がかすかに動いた。それを照美は、見逃さなかった。

――――ふふ、だからいじめがいがあるのよ。
 照美は、完全に見抜いていたのである。何故だか、わからないが、由加里のことは何でも見通すことができた。あたかも、心と心がわかりあった姉妹か親友どうしのように思える。

―――親友だって?
 照美は、その言葉から、最初に思い浮かべるべきか、よく知っていた。その人物は、彼女のかたわらにいる。しかし、高すぎるプライドはそれを認めることをよくしなかった。
「ふふん、じゃあ、次ぎに来るときには完成させておくんだぞ」
「・・・・・」
「返事は!?」
「ハイ・・・・・・・ウウウウウ・ウ・ウ・ウ・・ウ・ウ・ウ・ウ・ウ・ウウ!」
 頭を傾けると、涙がノートパソコンの上に垂れた。
「ああ、ノートはディスクトップよりも高いんだからな、涙なら、いいけど、おまえの汚い液で濡らすなよ、いくらオナニーに目がないからってさ ―――」
「ウウ・ウ・・ウウ・ウ・ウウウウウ・・・ウ・ウ・ウ!」

――――おかしいな、どうして、はるかが言うことなら、“ひどい”って思えるのかしら?
それは愛情だった。自分でも気づかない由加里への愛情だった。思慕といってもいい。当然のことながら、それが意識の上に登ってくるには、プライドという障壁を幾つも破らなければならなかった。だから、当然のごとく、すぐに無意識の、ユングが想定する世界へと消え去ってしまう。

「じゃあ、帰るぞ。西宮、それからな、退院したら、登校拒否なんてことないよな。こちらにはあんたの恥ずかしいアレコレが、いっぱいあるんだぞ、それを忘れないことだ。命令に従わなかったらどうなるかな?」
「ウウ・ウ・ウ・・ウ・ウウウ! ウウウウウうううう!」
  由加里は、両手に顔を埋めて、泣き続けていた。彼女の手はそんなに広いのだろうか、自分の顔をすっぽりと銜えてしまうほどに。少女は思った、このまま、両手に作られた海に溺れて死ねばいいと。しかし、何時まで経っても、彼女が溺れるほど涙はたまらないし、それよりも、自分の頭が収まるほどに、両手は広くないのだった。

 はるかは、病室を後にするその瞬間、照美に話しかけた。
「これから、テニスの連中に行くんだが、付き合わないか」
「勝手にすれば ―――」
 言葉の表面をドライアイスよりも冷たい物質で、コーティングした。しかし、その下では、相反する考えが、マグマの熱を持って、蠢いている。ちょうど、地球における表面とコアの関係に例えられるだろう。
「西沢さんが来られるンだけど ―――――」
「そんなことが私に関係があるとは?」
はるかの方から話しかけてくれた。照美は、内心、そのことが嬉しくてたまらないのだった。もちろん、まだ、絶対零度のコーティングが融けることはなかったが。



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『マザーエルザの物語・終章 9』
  あおいは祈るような気持で、鉄格子の向こうにある満月を見つめていた。しかし、そうは言っても、別に、少女は牢獄に閉じこめられているわけではない。これまで使っている部屋を追い出されるということはなかった。
 しかし、少女を取り巻く空気は、悪化の一途を辿っている。薄めた毒ガスを絶え間なく、注入されるような状況は、じきに彼女を追いつめていった。当然のことながら、それは、精神状態にも影響を与えていた。
 彼女の部屋は、ヨーロッパ風建築によくあるような、鋼鉄の格子が入っているのだ。
 混乱し、停滞した精神は、見慣れているはずの部屋を、牢獄にしてしまったのだ。

  しかし、部屋の様子は、いままでとだいぶ違う。まだ午後9時を少しだけ回っただけだというのに、真っ暗なのだ。停電したとでもいうのだろうか。
  だが、この息苦しい雰囲気は、なんだろう。 
 8畳ほどの部屋に、所狭しと、巨大な荷物が鼻歌を歌っている。それほど低くはない天井に、達するほどの大荷物も存在する。その中で、あおいは、放心したように、鉄格子の間から満月を眺めている。その目はうつろで、はたして、満月の明るさを感じているのか、疑わしい。
 両手は、まるでマリオネットのように、垂れている。一生分に働くべき労力をたった数時間で、使ってしまったかのように、うなだれている。
 
 少女をここまで疲弊させたという。殺人的な労働とは、いったい、どのようなものだったのだろうか。
 
 これらは、その日の内に、運び込まれたのである。いや、正しくは、あおいが自身で運んだのだ。もっと正確を期せば、その小さな躯で、自分の背丈よりもはるかに大きく重い荷物を、運ぶことを強要されたのである。
  全身の筋肉が悲鳴を上げている。もう、限界だ。もう動けないと、泣き声を上げている。まだ小学生なのに、老人のように節々が痛い。祖父や祖母がそのように嘆いていたのだが、こういうことかと、ヘンな納得のさせられ方をした。

 有希江は、手助けしてやろうと食指を動かしたが、久子によって阻まれた。甘やかすなというである。彼女によれば、今まで、さんざん甘やかしてきた。そのために増長し、わがままになってしまった。そのあおいにお灸を据えようというのである。
「これは、あおいちゃんのためなのよ ―――」
 それは、久子が強調したことだった。家族はみんな、彼女の言うことに納得している。しかし、ことに、茉莉は進んで、母親の考えに賛同している。どうしてなのか、あんなにおとなしく、自分から何かを主張するということがなかった。そんな茉莉の変容は、有希江には訝しいことだった。
 徳子と久子は、彫像のように立ち尽くしているだけだ。
「なにも、ここまですることないじゃない! これって虐待よ!」

 今まで、セーブしていた感情を、露出してみせた。
「有希江、あなた、茉莉がどれほど傷ついていると思っているの?」
 徳子が逆に抗議する。有希江の抗議は、まったく意に介されない。
「あおいが、茉莉に何かしたの?」
 有希江は、テーブルの上を拭きながら、言った。ここは、ダイニング。今、夕食が終わったところである。しかし、メインディッシュが盛られていた皿は、四枚しかなかった。現在、榊家の家族は五人構成にもかかわらず、その数である。

 しかも、普段なら汚れているはずの席は、キレイなままだった。ご飯粒、ひとつ残っていなかった。あおいは、年甲斐もなく、食べ物を零すので、久子や徳子に叱られ、有希江には嫌みを言われていたものだ。
 しかし、外では誰よりも上品に、マナーを守って見せるので、その内弁慶ぶりに、家族は開いた口がふさがらないのだった。
 こと、あおいのことになると、興味深いエピソードに事欠かない家族である。笑い話とともに、いつも思いだしていたものだが、今回は違う。

 そもそも、みんなあおいには甘かった。これは確かなことである。しかし、このような挙に出るほど、ひどかったわけではない。あるいは陰険な非行を働くわけでもない。
 だから、みんな、あおいを笑って許していたのである。
 それは彼女の性格ゆえだった。みんな罪のない、彼女の笑顔が大好きだったはずである。裏表のない性格は、家族のみならず、誰にも好かれている ――――はずであった。今、茉莉がそれを否定するというのである。

 有希江はその理由は訊くことにした。この際、それをあきらかにしない限り、何も始まらない。
「言ってみなさいよ、茉莉、いったい、何があったのよ!?」
「ちょっと、有希江、この子は被害者なのよ!」
 徳子が激しくテーブルを叩きつけた。銀食器がぐらぐらと、悲鳴をあげる。それと呼応するように、ドアがノックされた。その音は弱々しく、まるで空気を摑むような仕草である。
「誰かしら?」
 久子が冷たく言い放つ。おそらく相手が誰かわかっているのだ。有希江が知っている限り、誰構わず冷たい態度を取る人間ではない。
「あおいです ・・・・・・・・」

 震える声が、ドアの向こうから聞こえる。一枚の板を隔てても、彼女の顔が恐怖のあまり引きつっているのがわかる。
 たった一枚の板で、彼女と家族は引き裂かれてしまったのだろうか。有希江は思った。
 もっとも、彼女こそ、それを実感していることだろう。しかし、何があっても解決しなければという意気込みがないのは、どういうわけだろう。
 壁に掛けられている絵画は、東郷青児という戦後まもなく活躍した画家の作品である。
 一見して、マネキンを思わせる人物群が、絵の中を占める。とてつもなくシュールな画風。彼女らの視線を追っても、何処を、そして、何を見ているのかわからない、さながら、今の久子を彷彿とさせる。いや、ここにいる四人を象徴しているのかもしれない。

「どうして、こんなに遅れるの!?」
「・・・・・・・・に、荷物を・・・・・・」
「いい訳しない」
 バシッッ!!
  空気を切り裂くような音がした。有希江が絵画とにらめっこしていう間に、事態は進行しているようだ。なんと、久子が平手打ちを喰わせたのだ。あおいは、凍り付いて佇立している。
しかし、理性を完全に失ったあおいは、こんな状況になってもその言葉を発した。
「ママ?!」
  その一言は、久子を完全に、怒りのために凍り付かせた。
あおいは、ほとんど、母親に暴力をふるわれたことがない。だから、その思考は停止してしまったにちがいない。未体験の出来事に、人は、ただ直立するしかないだろう。

 あおいは、頬を震える手で、触りながら、母親を見上げている。彼女は、この世でもっとも信頼しているはずの人間である。しかし、今、あおいにしてみれば、まさに悪鬼にしか見えないにちがいない。
「いやあ! ママ! 許してぇええ!!」
  久子は、あおいの髪を鷲摑みにすると、その力をもって、床に這わせた。そして、娘の背中に馬乗りになって、その頭を何度も平手打ちしはじめた。唖然となる有希江。恐る恐る茉莉と徳子に視線を移す。

  何と、二人はマネキン人形のように、無表情のまま立ち尽くしている。この二人は、10何年も家族と呼んできたひとたちなのだろうか。そして、あおいを叩きのめしている鬼母は、本当に、自分の母親なのだろうか。

  有希江は、あたかも白昼夢を見ているような錯覚に陥った。
  ひとしきり殴りつけた久子は、次ぎのように短く命じて、ダイニングを去っていった。
「この後始末をお願いね、お手伝いさん」
  あおいの黄色い泣き声が、部屋中が響いていた。しかし、茉莉は傷口に塩を塗るような行動に出ていた。

「あおいさん、ごはん、まだなんでしょう? 有希江姉さんたら、お腹すいてなかったみたいで、こんなに残しちゃったんだよ、あなたにエサをあげる ―――」
 そう言うと、茉莉は薄笑いを浮かべながら、その皿を手摑みにした。いたのである。あたかも、UFOのように、弧を描いて飛ぶ料理。そして、恭しい手つきで、それを泣きじゃくるあおいの目の前に置いたのである。
 コト。
 皿が床に置かれる音。それは、やけに嘘らしく聞こえた。あたかも、ドラマの演出のように、作り物めいていた。
 あおいは、涙で濡れる顔を、妹に向けることでしか、答えることはできない。声は一切でない。泣き声すら立てることができなかった。声帯はその機能を忘れ、喉は単なる筒と化した。
「?」

  あおいは、まるで赤子のような声を出すと、ただ、意識を茉莉に向けた。おびただしく流れる涙を拭くことも忘れて、妹に意識を集中させようと努力をする。もしかしたら、涙が流れていることにも、気づいていないのかもしれない。
 ただ、目の前に起こっていること、自分の身にふりかかっていることが信じられないのだろう。有希江は、ただ大道芸人が突如として出現したときのように、意識を中空へと放散させた。そうすることで、意識が集中しすぎて、過熱することを避けているのである。

「どう? 感謝しなさいよ、あなたみたいなドロボウネコには、もったいないくらいのごちそうよ」
 恩着せがましく、茉莉は、あおいにそれをたべるように促す。
しかも、それはあおいが小さいころから好きだった料理だった。ハンガリアチキン。有希江の脳裏に残っているのは、まさ5歳当時の、あおいが、ナイフとフォークを握っている場面である。当然のように、彼女はそれをどのように使うのか、よくわかっていない。ただ、振り上げて怪獣遊びをするだけだ。

「ほら、ほら、あおいちゃん、それは遊び道具じゃないのよ」
 それは、この世のものとは思えない優しい声だった。聖母マリアのようだという形容が、これほど相応しい場面は、これまでもこれからも、ないだろうと思われる。
  久子は、あおいの両手に触れると、チキンを切り分けて見せたのである。
「ナイフとフォークはこう使うのよ、言ってご覧なさい、これとこれは何ていうの?」
「ないふとふぉーく!」
「はーい、よくできました。ほら、お口を開けて ―――」
「ああー、おいしいぃ!」
  久子の手を介して、チキンが、あおいの口に入ると、彼女は歓声を上げた。
「ほら、お食事中は騒いじゃだめでしょう、ほら、お姉ちゃんたちは、ちゃんと食べているでしょう」
「 ふふ――――」
「――――」

  当時、自分がどんな目つきを妹に向けたのか、よく憶えていないが、徳子が見せた笑顔は、とてもすてきな表情だった。決して、自分には見せたことのないほどの笑顔がこぼれていた。有希江は自分だけが、家族から取り残されたような気がした。
  今、目の前では、あおいがそのような境遇を辿っている。いや、それどころではない。まさに家族からつまはじきにされてしまったほどだ。そして、家政婦として、家に残ることを許されたことを感謝しろと強要されているほどなのだ。

 あおいは、犬のように、よつんばいにされていた。そして、頭を摑まれると、無理矢理に有希江の残飯に、顔を突っ込まされている。

「ほら、食べなさいよ、あおい姉 ―――いや、あんたの大好物でしょう?!」
「ひぎぃ・・・・ウウ!!」
 家政婦と言うべきところを『あおい姉さん』と言い間違えたことは、有希江の涙を誘った。それはあおいもそうだったかもしれない。もっとも、自分にふりかかっている陵辱行為のために、そんなことに耳を傾ける余裕はなかったかもしれない。

「ほら!」
「ウグググギエ!」
 茉莉は、間違った自分に対する、気持を整理するためか、余計に乱暴になる。それは折檻と言うほかに表現方法が見付からないほど、ひどいものになった。
 一体、自分たちの家族に何が起こったのだろう。起こっているのだろう。有希江は、何か見えない風圧を受けて、後ずさった。このとき、何かしら手を出していたら、事態はあれほど深刻にならずにすんだろうか。

 その答えは、誰も知らない。榊家の家族の誰も答えられないだろう。明かに見えない力に突き動かされていたのである。
  有希江が、手をこまねいている先で、事態は、さらに悪化の途をたどっていた。
  あおいは、泣き叫びながらも、元ハンガリアキチンだったものを銜えている。茉莉から受ける折檻に耐えかねて、従ったのであろう。
 
 おそらくは、有希江の唾液が残っていると思われる。他人の唾液には味があるんだろうか? たしか、哺乳動物の唾というものは、それを分泌した本人以外にとって、みれば毒にしかならないという。すると、接吻というのは、毒の交換を意味するのだろうか。

 あおいにとってみれば、その残骸は、かつて好物だったものを彷彿とさせる。それは、単に、物質的な意味だけに限ったことではあるまい。楽しかった家族との記憶をも、蘇らせていることだろう。
 きっと、その記憶と、現在、彼女が置かれている境遇を比較しているにちがいない。
  有希江は、それを思うと、胸が痛んだ。

「あははは、お前はまるで犬ね、家政婦じゃなくて、いっそのこと飼い犬になってみる? そうしたら働かなくてもいいわよ、その代わりに学校もいけないし、一日中裸でいてもららわないとね」
 徳子が、酷薄に言い放つ。
 あおいは、もうハンガリアチキンの味を忘れてしまったらしい。「ただ、塩の味しかわからなかった」と後から述懐している。
――――私も、この空気になるしかないのかしら。
 有希江は、いつしかそう思うようになっていた。
誰の戯れか、ここに掛けられた東郷青児は、不気味に笑っていた。
「私の姿は、未来の、いや、すぐ先の現実そのものだよ」
絵画が、そのように笑っている。
 有希江は、とてつもなく高価な、その絵を破ってしまいたい衝動に駆られた。





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『由加里  55』
「由加里ちゃん・・・・・・そう呼んでもいいんだよね」
「・・・・・・・」
   由加里は黙って頷く。まるで、ぬいぐるみの首が曲がったように、見える。
「今日、一日だけで、信頼されるのは無理だってわかってるよ。私たちが、由加里ちゃんにやってきたことを考えればね ――――――」
  この台詞は、高田でも、照美でもなく、ゆららの独創だった。

「うん ―――――――」
  由加里の表情は曇ったままだ。しかし、心の何処かで明るいきざしを感じてはいた。それを疑う気持と信じたい気持が、錯綜して、葛藤を作り出す。
「信じたい、信じたいの! だけど・・・・・・・・・・・」
  少女は、何処まで行っても、自分の気持ちに素直だった。吐かれる言葉は、それを端的に表している。
「大丈夫だよ、いくらでも疑ってもいいから、ずっと、待っているからね」
  これは照美が、考え出した台詞である。ゆららは、自分の背後でほくそ笑んでいる美少女を感じた。

「ウウ・ウ・・ウ・ウ・ウ!!」
 呻くような、泣き声を聞くと、本当に辛くなる。ゆららは、目頭が熱くなるのを感じる。涙が込み上げてくるのを、必死に押さえながらも、自分が芝居をしていることを再認識する。
そうすると、涙腺を締め直すことができる。
  自分は高田や照美たちの人形にすぎない。だから、すべての責任は彼女らにあるのだ。一体、何を思い悩むことがあろうか。

  そう思いこもうとしても、やはり、何かが残る。わだかまりと単純に言っていいのか、その正体はわからないが、自分にとって不快なものであることは確かである。
 それは、殺人者が、その手からいくら血を拭おうとしても、拭えないのと同じで、まるで宿痾のように、ゆららの小さな身体に、こびりつき、その心を侵食しつつあるのだ。
「じゃあ、私は帰るね。携帯の番号、書いておいたから、いつでもかけてきてよ」
「うん」
「じゃ・・・・ぅあ!!」
  再度、さよならをして、ゆららは病室を後にした。
ほっとして、由加里は一息ついた。花をよく見てみようと、花瓶に手を伸ばそうとしたとき、全身が凍り付くのを感じた。二つの足音が、由加里を訪れたのである。そちらを見なくてもわかる。
「ぁ・・あ・・・・あ・・・ああ!!」
  あの世の門番すら裸足で逃げそうな叫び声を、自分の内に向けて、注ぎ込んだのである。

 ゆららと入れ替わりに、入ってきた人物の顔を忘れることはないだろう。

「か、海崎さん、い、い、鋳崎さん ――――」
 身の内がガタガタ震える。得体の知れない薬を注射されたような気がする。照美の美貌は、地獄の季節の到来を、意味していた。
「いやねえ、冷房が効きすぎているのかしら? 病院なのにね、あら、挨拶がまだだったわね、こんにちは、西宮さん」
「ああ・・あ・あ・・あ・・あ」
  由加里は、マヒしてしまった口を必死に開いて、人語を話そうと試みた。しかし、うまく舌が動いてくれない。何を甘えているのだろう。舌は随意筋肉のはずだ。自分で動かさずに、誰が動かしてくれるというのだろう。不随意筋肉を統轄する自律神経から文句が来そうだ。

  由加里が目の前の人物たちから、蒙った精神的および、肉体的な苦痛と恥辱の記憶。それらは、少女の神経を、完全にマヒさせてしまったのである。
涎さえ、こぼれようとしたとき、ようやく、由加里は年齢に見合った自尊心を回復させた。
「か、海崎さん ―――――」
「こんにちは、西宮さん」
「こ、こんにちは・・・・でございます」
  摩訶不思議な日本語は、少女の知性が、かなり侵食されていることを証明している。

 照美は、いやらしい手つきで、持ってきた花束を弄ぶ。ネコは、痛め付けた獲物が、死にゆくのを愉しむという。ちょうど、そのように、由加里を見下ろしている。彼女は、病床に縛り付けられ、身動きすらままならないのである。

「・・・・・・・・・・・・・・」
  照美は、由加里の全身を足の先から頭まで、舐めるように眺め尽くす。それが無言で行われるために、彼女が感じる恐怖は、並大抵のものではない。照美の唇と舌がぶつかる音までが、由加里には聞こえる。舌づりする音が、生々しく、犠牲者の聴覚神経を刺激する。

 すると、いままで、照美にされた行為が、走馬燈のように蘇ってくるのだ。

「ぁ・あ・・・・あああ ―――」
  由加里は、何とか逃げようとするが、右腕以外は、包帯で巻かれているその姿では、病床の上をただ蠢くことしかできない。いわば、滑稽とすら言えるその様子は、手負いの芋虫を思わせる。
なおも無言のまま、照美は由加里を見下ろし続ける。その視線は、熱を持っているかのように、由加里の身体を焼き尽くす。肌には、火傷の結果として、水ぶくれができるほど、見つめ続ける。視線には、熱が籠もっているのである。

「あ、・・・・あの、海崎さん ―――」
 ついにしびれを切らして、由加里は自分の所有者の名前を呼んだ。
「ここでは暇なのようなだから、お土産を持ってきてあげだんだよ、感謝してほしいな」
 鋳崎はるかが、持ってきたのはボストンバッグだった。中を開けると、ノートパソコンと、書籍類が姿をあらわした。
  由加里が察したとおり、単なる本ではない。おそらくは、18禁という文字が入った特別な代物なのだろう。
 こんなところでも、恥辱の創作活動を強要しようというのか。

「持ってきてやったよ、西宮の大好きな本をさ。あんたもエロ作家としてデビューの日も近いかもな」
 はるかは、照美とは全く違う方法で、由加里を攻めてくる。
 彼女の声は、ライオンの咆吼を思わせた。由加里は、両耳を覆って、凌ごうとしなければならない。
 照美の冷たい炎と、はるかの熱い炎に、責め立てられて、由加里は、さながら落城寸前の姫になろうとしている。今、燃え上がらんとする城のすぐ側では、美しい姫を我がものとせんばかりに、その薄汚い性欲をたぎらせている。

 しかし、由加里はあることに気づいていた。それは照美とはるかの関係である。今まで、由加里を攻め抜いていたときは、何処か様子がちがう。それは、いままで、互いを連理の翼のように信頼しきって、行動していたのに、目の前に存在する二人は、ばらばらに己の意思に従って由加里を攻めているように見える。同じ場所にいながら、別の位相から攻撃してくるようだ。
  だが、城に延焼しようとする炎にA種もB種もない。それぞれが、少女にとってみれば脅威なのである。彼女を焼き尽くし、陵辱しつくす紅蓮の炎なのだ。

「西宮さん、みじめな恰好ね」
「・・・・・・・・・・・」
  掛け物を引っぺがすと、大腿を閉じられない由加里がいた。
「あら、ノーパンなのね、かわいいわ」
「ああ、み、見ないで!」
  照美は、由加里の顕わな恥部を発見して、微笑んだ。由加里は、羞恥のあまり顔を赤らめる。
「今更、何で、顔を真っ赤にしているのよ」
「鈴木さんが来たようだな、あんなヤツにまで、いじめられるようになったんだ、本当にウジ虫に相応しいな」
  はるがの言だ。照美の発言と全く、つがいを為していない。まるで、互いが見えていない。それぞれが、勝手に由加里に対している。まるで時間差を作られ、攻撃されているような、奇妙な気分に囚われる。いったい、何があったのだろう。その理由は、由加里の知るよしではない。

「後輩にまで、いじめられるんだから、あんたテニス部でおもちゃになってるんでしょう? ―――――」
「・・・・・・・・・・?!」
  照美の言葉は、由加里の爛れた傷に、直接触れた。言いようもない痛みが、湿潤する傷口に走る。
「いっそのこと、このまま寝たきりにでもなったら? どうせ、この先何処に行っても、いじめられるんだから、その方がいいんじゃない。一生、人の世話になるのが、あなたには相応しいわよ、みっともない西宮さんにはね ―――」

「ぁああぅ!」
  照美は、由加里に肉体的な責め苦をも与えはじめた。手近にあった果物ナイフで、少女の股間を弄びはじめたのである。もちろん、刃物とは逆の部分を使ってのことだ。しかし、彼女の心を突き刺し、傷口をえぐることはできる。そこからは、果てしなく、見えない血が、また流れはじめている。
「ぅひぃ!」
「あら、ココが悦んでいるわよ。久しぶりに、弄ってもらえて、本当に嬉しそうだわ、待ち遠しかったのね?! ごめんなさいね、お待たせして!」
「ぅうううう! そ、そんなこと・・・ウ・ウ・・ウ・・ウ! あ、ありません・・・・ウ・・ウ・ウ・・ウ・・・・!!」

  本来、平和の象徴であるはずの病院に、こんな世界ができあがっている。それは、学校も同じ事であろうが、病院という、人間を癒すはずの空間に、こんな拷問部屋が現出しているのである。まさに笑止というほかはない。
  由加里は、氷の冷たさを、性器で感じた。それは、黄色い涙をもたらすほどの狂気に満ちていた。
ナイフは、由加里の性器に侵入していく。ずぶずぶと小陰脚や陰核を陵辱する。刺激された陰部としては、持ち主の意思とは別の生き物のように、呼吸をはじめ、その意思を表明する。すなわち、興奮し、涎を垂れ流す。

「相変わらず、我慢のできないアソコねえ? それにスゴイ臭いよ、看護婦さんも大変ねえ、あなたの世話なんて、あははっ!」
「ぁあああ・・・ア・・・・ウウ・・・ウ・ウ・・・うう! やめて! アア・・・ア・ア・ああ、やめてください!」
「ねえ、こんな汚いものは、全部剥いじゃおうか?」
「え?」
  照美が真顔になった。由加里は、それだけで、全身の毛が抜けるような風圧を受ける。驚愕の表情を、可愛らしい顔に浮かべた。照美は、それだけでなく、ナイフを由加里の性器立てるマネをしたのである。いかにも、そこに突き刺してしまいそうな勢いだ。いや、既にそうしてしまったかのような錯覚に囚われた。事実、由加里は、陰部に強い痛みを感じた。
「あーあ!?」
「西宮は、日本語をしゃべれないのか? いやしくもエロ作家を目指そうって女が!?」
  はるかが嘴を突き刺した。勝手に決めつけるその話しようは、なんだろう。まるで、由加里の鼻に刃物を突き刺してくるようだ。由加里なら、日本刀で斬ってくる残酷さだが、はるかのそれは、西洋の剣なのである。知っておられようか、日本刀が弧を描いて、斬るのに、比べて、西洋の諸刃の剣は、突き刺すのである。話しがそれた。
 
 閑話休題。

  照美は、なおも自分の美しい舌に、残酷な言葉を乗せる。
「そうすれば、薄汚いあなたも、すこしはまともな生き物になれるかもよ」
「みんな、お前の汚いココには、迷惑しているんだよ」
「このナイフ、よく切れそうね」
「ひっ! ひひひひひひぃ!!」
  たまたま、傾けたナイフに太陽が反射して、由加里の目を直撃した。照美は、太陽神アポロンをも、自分の味方につけたというのか。

  濡れた金属製の物質は、よく光を反射する。由加里の愛液によってあたかも、手鏡のようになったナイフは、由加里をどんな光で照らすのだろうか。彼女は、あたかも正義の光によって、浄化されるような気分を味わっていた。いじめっ子たちによって、さんざん、汚い、淫乱などと罵られた少女は、自分をそのように見なすようになってしまったのだ。

「それとも、この顔を剥いでみる?!」
「ひ!・・・・・ひひぃ!!」
  ナイフを顔に、示された由加里は、恐怖のあまり戦いた。そのとき、はじめて、はるかは、照美の存在を認めて肯いた。

―――照美!
「この顔が悪いのよ! 許せない! さあ、選びなさい! 死ぬか、顔の皮を自ら剥ぐか!」
「ううう・う・・う・う・う・う・う・う・う・う!!」
  まるで、この病室だけ、戦国時代と化したようだ。時間から取り残されたのではなく、時代が逆行してしまったのだ。この時代錯誤をどのように見るべきか。照美は、しかし、理性を完全に失ってしまっていた。怒りのあまり、我を忘れていたのである。本当に、由加里の顔にナイフで傷を付けんばかりの形相になった。由加里は、理性を完全に失った照美の顔をはじめて見た。

――ああ、この人は、いったい、何を言っているの?
 由加里は、当然のことながら、照美が何を言っているのかわからない。

――あ。
 その時、由加里はひらめいた。はるかの顔が見えたとき、思いだした。

―――そうだ、鋳崎さんが、コテージで言ってた。
 照美が言っていることは、そのときに、はるかが言っていたことと同じだったのである。
「い、鋳崎さん、も、海崎さんもわたしの顔に、何の怨みがあるんですか!?」
「何?」
 泣きわめく由加里。照美は、彼女の言葉に手が止まった。『鋳崎』という言葉である。

  この時、察しのいい照美は、すべてを理解していた。おそらく、はるかは、かつて、由加里に、同じようなことを言ったにちがいない。照美の心が揺らぐ。やはり、自分のことをこんなに思っていてくれたのかと。
 しかし、それをを素直に外に出すには、あまりにプライドが高すぎた。
 一方、はるかの方では、由加里が仮面の下で、それを察していることに気づいていた、ダテに、14年間も、照美と幼馴染みをやっているわけではないのだ。
互いににらみ合う。照美とはるか。

――――何なのよ! 私と関係ないところで、わけのわからないドラマをやってないでよ! 
 理性を完全に、粉々にされてしまったはずだった。しかし、由加里は、何処かで物事を達観する視線を得ていた。それはある意味作家のそれだった。
  少女は自分でも知らないうちに、自分の未来を見据えていたのである。それは、自分の中に、自分とは違う主観があって、由加里の知らないうちに、将来を目指しているようですらあった。

 そして、少女にその道程を示したのは、誰でもない、鋳崎はるかなのである。そのことは、はるか自身、気づいていなかった。彼女は、単に、精神的に由加里を痛め付けたいと思っていただけである。
  
 バッグから零れた一冊の本が、由加里の未来を示していた。そのカバーは、大変、刺激的な内容だった。初潮も迎えてもいないと思われる少女が、縛られ、性器を露出しているイラストである。由加里の年齢の少女が、好きそうな少女漫画様式に、描かれていることがなおさら、衝撃的と言えるだろう。

  それは彼女の才能を鼓舞し、稔らせようとしているかのようである。
  しかし、それは、彼女が想像しえないほどの先のこと、はるかな未来のことである。








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