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『由加里 107』






 「オナニーしてみてくれない?」

 それは、何回も由加里が拒否してきた命令だった。外見からは容易に想像できないほどに頑固な態度が見たくて、照美もはるかも、彼女が従わないことをわかっていて、あえて、同じ命令を下したものである。そして、後に帰ってくる反応を観察しながら二人は嗜虐心を満足させていたものだ。

 由加里も、それをわかっている。だが、わからないことがある。

 今、こんな夜更けにわざわざ自分を呼び出した理由はなんだろうか?

 知的な美少女は、怯えながらも二人の表情から真意を読み取ろうとした。だが、まったく不可能だ。顔の表面が異常につるつるしている。すべての光を反射してしまう、ちょうど鏡のようで、由加里の思惟は侵入できずに締め出されてしまう。



 この二人は恐ろしい。当たり前のことを今更ながらに思い起こされる。冷たい床がそれをその思いを強くする。クラス全体に責められているもむしろ、この二人だけの方がより受ける精神のダメージが強い。あるいは、苦痛の性質が違うといった方がより適当かもしれない。



 もはや、沈黙は一分以上も続いている。由加里は、このような時に何をすべきか、二人に厳しく躾けられている。沈黙は大罪だ。自分はご主人様を悦ばせることだけに存在価値のある、おぞましい存在なのだ。だから、すぐにも口を開かねばならない。奴隷として何をすべきなのか、それを考えてすぐにも実行しなければならない。しかし、それが思いつかない時には平身低頭して、ご主人様に許しを乞い、かつ、どうすればいいのか、お伺いしなければならないのだ。

 そのような文章はなんども復唱させられ、骨の髄まで染み込んでいるはずだった。

しかしながら、極度の緊張と恐怖のために口が開かない。歯と歯が当たってかちかちと音を立てている。

しかも、それを自分が出しているなどと実感できない。心が何処かに旅しているのだ。どうやら、それは精神のセキュリティシステムが作動しているらしい。だが、心はともかく、被虐者の肉体にとってみれば本当に自己保全につながるのが疑問である。




事実、照美は声を荒げると、よつんばいになっている由加里の背中に足を乗っけるとぐいぐいと踏みつけ始めた。はるかの他は誰もいないだけに、開放的な気分から嗜虐心が最大限に解放されている。そんな様子を見て、はるかは、まるで試合中のような興奮を覚えるのだった。なぜか、相手が予想以上に実力を備えていて、自分の攻撃がうまくいかないようなときによりいっそう燃えるようなそんな気分である。

「本当の赤ん坊に戻っちゃったのかな?西宮は?!」

少女の髪を乱暴な手つきで摑むと、はるか、今の今まで親鳥が温めていた卵のような腐ったぬくもりを感じて気持ち悪くなった。自分が虐待した少女が流した涙が染み込んでいるような気がしたのだ。はるかの感受性は、主人にそれを完全に無視することを禁じた。

「ヒイ・・・!?」

二人の手足は、無理やりに少女を肉体に呼び戻したようだ。由加里は、身体をからめ捕られて無理やりに戻されたような気がした。きっと、自分は死ねないのだと思った。仮にそうなることがあっても二人に無理やりに蘇生することを強要されるだろう。完全に支配されている。全身を見えない手枷足枷で縛られて、自殺することすらままならない。

「身体に、再び教えてやらないといけないみたいだな」

「はるかは、だめね。さすが体育系だわ」

「照美、おまえは褒めているのか、けなしているのか?」

「もちろん、後者よ。この体育会系ばか」

 二人の軽やかなやりとりを聞いていると、自分が置かれた状況があまりにも非現実的に思えてくる。それが少女を惑わせた。今、体験していることはすべて夢の中の出来事のように思えてきたのだ。

口が動いた。

「わ、わかりました・・・オナニーします・・・」

「なんだって?よく聞こえないなあ?」

さらにテンションが上がって、はるかの声が荒ぶる。それが由加里の理性を復活させた。

「ヒッ?!」

 突然起こった大きな音に反応した幼児のような顔をして、由加里は二人の顔を見た。今、自分は何を言ったのだろう、言ってしまったのだろう、自問自答しようとするが記憶が定かではない。ただ、とんでもないことを言ってしまったのだということだけはわかる。

それを会話の前後から推論すると、自殺の予告に等しい文々を述べていたことがわかった。

「西宮さん、今、何を言ったのかしら?もういちど繰り返してくれない?」

まるで母親が幼い娘に質問するように、ちょうど言葉と言葉の間をオブラートで挟み込むように甘ったるい口調で、言った。由加里にしてみれば、唐辛子を砂糖の塊でくるんだものを無理やりに食べさせられるようなものである。気持ち悪いことこの上ないが、ここは奴隷の身体、ご主人様には臣従しなければならない。わからなくても、何かを言わないといけないのだ。

「や、やっぱり、できない。できません・・・・わ、私・・・もう、許して・・・・クダサイ」

 このふたりに仕えるにあたって、その動詞がいかに無意味なのか、痛いほどにわかっているつもりだったのである。それにもかかわらず使ってしまう。自分が口走ってしまったことがどれほどに重大か、記憶喪失になった今となっても、感覚で理解しているからだ。

 照美は、被虐者が瀬戸際まで追い詰められていることを知っている。もうひと押しで白旗を上げることを理解しているのだ。 

「西宮さんは本当に都合よく、記憶喪失になるんだね?」

「・・・」

 照美の猫なで声などそうお目にかかれるものではない。その意味において、この少女はかなりの恩恵に浴しているといえた、ただし、本人が望めばのはなしだが・・・・。

「・・・・うう」

「泣いてちゃ、わからないわよ。西宮さん」



数万もの針で全身をつつかれているような気がする。照美たちは、こうやってじわじわと由加里を苦しめてだんだん弱っていくのを見て楽しんでいるのだ。それならひと思いに殺してくれた方がいい。

この美しい少女が自分に向ける憎しみの深いことと言ったら、高田や金江の比ではない。二人は面白半に自分をおもちゃにしているところがあるが、照美のばあい、仮にそのような説明ができる部分があったとしても、その背後にあるのは、殺意に裏付けされた運命的な憎しみなのだ。

そんなけったいなものと正面切ってやりあうよりも、いっそのこと、ここでオナニーをしてしまうべきかもしれない。

海崎照美という人間ならば一度交わした約束を違えることがないだろう。

きっと、もういじめないだろうし、ほかのクラスメートからも守ってもらえるだろう。

しかし、それがなんだろう。

この世でもっとも自分を憎んでいた相手に守ってもらうとは、どれほどみじめなことなのか。しかも、目的を達して飽きた、という但し書きがついている。こうまでされて生きている理由があるのだろうか?

それに、一度、加虐という美味しい肉の味を知った人間がそれを簡単に忘れられるだろうか?特に性質の悪い肉食獣は、言うまでもなく高田と金江の二人である。どんな手段を使っても、自分を服従させようとするにちがいない。

ここまで考えて、とんでもない考え違いをしていることに気づいた。クラスメートたちは自分を守ろうと言い出しているのだ。おそらく、それをまったく信用していないのだろう。だから、ここまで心が萎えるのだ。なんて嫌な人間なのだろう。守ってもらう資格なんか自分にはない。友達なんているべきじゃないのかもしれない。

そう思うと、二人の前で、自分を慰めてもいいような気がしてきた。思い切ってやってしまおうか。

しかしながら、犬以下の存在に堕ちることで、楽になろうか。それは彼女らだけに対することではない。人前でこんな恥ずかしいことをできる人間は、誰に対しても主人奴隷の関係以外の関係を築くことは不可能になるのだ。それは、家族に対しておなじことだろう。

だが、疲れ切った由加里の身体は休養を必要としていた。

「ほ、本当に、もう、いじめないんですか?あ、あんな・・う、ひどいこと、もう、しませんか?」

 大粒の涙がこぼれた。照美は、あまりの大きさに床に落ちるに際して、たしかに大きな音を聞いた。

 走馬灯のように、ひどい記憶がよみがえる。

「ええ、もうしないわ。そうしたら、あんたは死んだも同然だから・・・・」

「・・・」

逆説的な言い方になるが、きっと、親友は、由加里にオナニーをさせたくないのだろうと、はるかは思った。ここでやらせてしまっては、何か心残りがあるのだろう。本当の照美の姿を見るためには、体内に残った怒りや憤懣を完全に昇華させてやらねばならない。

 はるかは、思わず苦笑を漏らした。思わず浮かんだ二文字がこのような状況に合致するだろうか。知的にも人並み外れたものを持ち合わせる、アスリートの卵は、それに気づいてしまう哀しさを味わっていた。



 「じゃあ、したくないなら、さっさと帰って、もう、用はないから」

冷酷に照美は言い渡す。

 なぜか、恥ずかしい行為を命じたときよりも、はるかの耳にはよりひどく聞こえる。彼女の予想通りに、由加里は、童女のようなきょとんとした顔で、自分の所有者の酷薄な美貌を仰ぎ見ることしかできない。

 「どうしたの?やりたいの?そうよね、西宮さんは露出狂のヘンタイさんだもんね、よかったら、街中に出てやる?」

「ぁ・・・!?」

 照美の突っ込みに、平静を取り戻したようだ。しかし、突然に性器を弄られて、官能の海に引きずり戻された。

「ぁあっぁう!?いや!!」

逃げようとすると、はるによって取り押さえられた。

「簡単なことさ、西宮、今、あんたがしてもらっていることを、自発的に行うだけだ。同じことだろう?」

 照美の指は、由加里のすでにぬるぬるになったハマグリをこじ開けると、それはまったく力を入れないのにすんなりと受け入れたが、わざわざ実況中継をしてまで、自分の所有物を辱めて、その自尊心を取り上げることに励む。

「ほら、見てごらんなさいよ。西宮さんのいやらしいクリトリスが顔を見せてるわよ。入院している間も、相当、自分で楽しんだんでしょう?三ミリぐらい膨張しているわ!」

「ぃいやああ!いやあ!やめて!やめて、あぁぁ。うう、そぉ、そんなこと、言わないで!!えぇぇl」

「本当に気持ち悪いな、なめくじみたいだ」

 どうして、この二人の言葉は内面にまで突き刺さってくるのだろう。高田や金江に言われてもたいして感じなくても、二人に言われると、頭の上にコンクリートの塊を落とされたような気がする。

 わけもなく、涙がほおを伝わって顎を素通りする。こんなこと言われていまさら傷つくはずがないのだ。しかし、涙は止どめなく溢れてくる。

「ねえ、西宮さん、どうしてすぐに帰らなかったの?こうしてほしいからでしょ?」

「ち、ちがう!ぃぅぅ?ぁぁ・・はぁ・・・あぅう!?」

まるで万力のように両肩に押し付けられた、はるかの手が、その圧力を減らしているにもかかわらず、逃げようとしない自分をまだ、由加里は発見できずにいた。






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経過報告
 『由加里 107』執筆中。進捗率15%・・・。

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『由加里 106』


 由加里にとって、照美の家族のことなぞ、いっその事どうでもいいことだった。自分を虐待する人間の母親のことなぞ、完全に関心の範囲外にある。今、一番大事なのはわが身であって、それ以外のことを考える余裕はなかった。照美の一方的な憎しみの前に、命の危険性すら感じているのである。
 そのために、もしも、照美の両親なり家族が存在していれば、この場からの忌避はおろか、いじめそのものから解放される可能性すらあるかもしれない、という事実に気づくことすらできなかった。
思考回路はほぼショート状態にあっても、鋭敏な感受性は健在だった。
 この家には、レモンに糖蜜を混ぜたような、実に甘酸っぱい香りが立ち込めている。
 だが、この懐かしい匂いはなんだろう?
 由加里は不思議だった。かつて、どこかで嗅いだような気がする。実際に家族も、家も、 存在しているにも関わらず、知的な美少女は、いま、自分が住んでいる場所以外にいるべき家があるような、彼女にしてみれば実に不思議な感覚に囚われることがあった。真実を知っている母や姉ならば、その正体について心当たりいや、それどころか真実そのものを示すことができるのだが、何も知らない由加里がそれについてぼんやりでも洞察していることは驚くべきことだろう。
 この家には、そのような匂いが充満しているのだ。
 だが、その正体について、彼女はまったく気づいていない。

 一方、照美とはるかは、由加里について何もかも知っている。
 そのことが、二人の視線に、それぞれ、別の彩を施していた。しかし、それは普段、学校でいじめるときとなんら変わることはない。単に、虐待者と被虐者の関係にすぎない。だが、由加里してみれば、この家の雰囲気と合い間って、何かおぞましい空気を敏感に感じざるを得ないのだった。

 完全なる視野競作が知的な美少女を襲っている。この夜は永遠に続くのではないかと思われた。この広大な宇宙に世界は照美の部屋だけにしか存在しない。もはや、誰にも助けを呼ぶことは出来ない、なぜならば、外に世界は存在しないのだから....。
 
 大声を出して外の住人に救いを求めるということは、由加里にはありえない。ただ、二人から受ける暴虐をそのまま受け入れるよりも他に方法がないのだ。
そんな由加里に照美の酷薄な声が響く。
「西宮さん、今日はなんでわざわざこんな時間に来てもらった、と思う?」
 わざとらしい区切りが、余計に照美の酷薄さを助長させる。
「.....に、西宮、ゆか、由加里は、かい、海崎さまの奴隷で、おも、おもちゃです...ど、どんな、め、命令でも、よろこ、喜んでしたが、従わせて、従わせていただきます...ウウウ」
「そう....」
 照美のしなやかな手が無知のように撓って、由加里の頬を摑むと、顔全体をゆっくりと撫で回し始めた。何だか、悪意の粉を擦り込まれているような気がする。少女は恐怖のために声はおろか吐息さえ出なくなってしまった。
 由加里の顔を無理矢理に自分の方向に向けさせる。哀れにも、顔中がミルクだらけになっている。そんな姿を見て、照美はほくそ笑んだ。こんなにひどい目にあわされても、愛らしさを失っていない。それが憎らしいのだ。
「西宮さんは本当に赤ちゃんみたいね」
 知的で大人しい由加里をそう決めつけることで侮辱しようとしている。そんな意図は既に読み切っているのだが、どんなにわかっていても照美が醸し出す恐ろしさに馴れることはない。
「....!?」
 もはや、知的な美少女に助けを求める気力が残っているはずがない。照美はそう見なしていたが、事実は違った。こんな風に感じる自分を天真爛漫だと思わないでもないが、クラスメートたちが自分を支持してくれている。その可能性に思いを馳せているのだ。
 照美は、自分の所有物の常ならぬ様子に目敏く来付いたのか、「なあに?まだ、自分に味方がいるとでも思っているの?ま、別にあなたに味方が何人いようとも構わないから、私だけがあなたを憎むのを止めない。何処に逃げてもおいかけて殺してやる」
「ひ..…」
 それは本当に純粋な憎しみだった。色でいえば純粋な黒。ある宇宙飛行士が体験したことだが、宇宙空間でみる夜空、これは変な言い方になるが、それは地球から見る星のない部分と違って何もない「黒」なのだそうだ。それは体験したものではないとわからないことだが、「穴」としか表現できない、ということだ。
 被虐の美少女は、加害者に対して、彼女が自分に対する殺意を超えた憎しみに対して、そのように思うしかない。
「ゆ、許して...」
 獲物が、自分の敵意を受けとめるだけのエネルギーを有していない。そのことに気づいた照美は幻滅して、床に投げ捨てた。
「ウウウ..ウウウ?あぁ,痛い!!うう・・あああ?」
 由加里は逃げようとして、立ち上がったが零れたミルクに足を奪われた。そして、滑った先には体力的には、照美よりもさらにおそろしい、鋳崎はるかが立っていた。

 彼女の声を聴く前から、少女は全身に激しい痛みを感じていた。喉がからからに乾燥してまったく声が出ない。
「西宮、何処に行く?」
「.....」
 はるかは、内心で自分が安っぽい悪役を演じていることを知っている。その上で楽しんでいるのが、彼女が彼女である所以であろう。
「それにしても、こんな恥ずかしい恰好で街に出られたわね、こちらが恥ずかしくなるくらい」
「イヤ...ああ!?」
 既に用意していたのか、照美はビニールの手袋をはめると体操着の上から正確に由加里の膣を捕まえた。
「クふん!!いやあ!!や、やめて!」
 反射的に局所を護ろうとする両手は、無惨にも、はるかによって取り押さえられた。
 照美は、ちょうど俯せになった由加里の背中に座って、彼女の局所を攻撃する。
「ふふ、体操服の上からでもわかるほど、濡れてるじゃない。ぬちゃぬちゃよ」
 もちろん、あらかじめ手術用の手袋を用意してある。熱伝導が鈍い物質だけに、常温であっても冷たく感じる。マネキンの手に凌辱されているような感覚が少女の中に入り込んで、彼女の内臓を食い破る。
 「こんな風にしてほしかったんでしょ?あいにくと誰もいないから、ぞんぶんに、西宮さんの、おぞましい欲望を満足させてあげるわ」
 まるで官能小説の登場人物が吐くような台詞に、はるかは驚いた。もしかして、親友もその手の作品に目を通しているのかと思うと、微笑がこぼれてきた。
「何よ、きもちわるいわね、はるか、どうしたのよ?」
「いや、なんでもない、ただ、照美も成長したんだなってさ」
「ヒイ・・いぃぃぃぃぃ!痛い!!」
 哀れな被虐者の髪を乱暴に摑んだ。そして、自分の顔の位置にまで無理やりに引き寄せる。
「奴隷の扱いが小説じみてきた」
何をわけのわからないことを、というような表情をつくると、由加里の膣奥深くに指を侵入させた。
「ぃいやあああああ!!」
腰を奇妙にひねらされた格好で、少女は絶頂を迎えてしまった。照美の行き過ぎた行為によってそうなったのか、あるいは、はるかの「奴隷」という言葉によってなのか、判断がつかない。あるいは、両者があいまった結果なのかもしれない。

 照美は、行儀の悪い犬を叱るように言った。
「あら、あら、床を汚しちゃって、どうすればいいのわかっているわね」
「ハイ・・・・・」
幼稚園のお泊り会でおもらしをしてしまった幼児のような顔でうつむくと、いつもやらされているように、自分が分泌した液体に口をもっていく。
 屈辱的な姿勢、由加里の嗅覚を刺したにおいは、酸味がかかったピーナッツバターである。酸味が強いといっても、さきほどの懐かしいレモンのにおいとは完全に一線を画している。
「本当に、犬以下ね、赤ちゃんなんて言ったのは間違いだったわ。西宮さん、どうして、そんなあなたが、オナニーをするのを嫌がるのかわからないわ」
「・・・・・!?」
 照美の台詞の中にある、ある単語が由加里を凍りつかせた。
「何?まだ、残ってるじゃない?誰がやめていいって、いったのかしら?」
「・・・・・」
 従順な奴隷が主人のいうことを聞かない。その理由を知らない者は、三人のうちで一人もいない。
 言った本人は、意識的にその単語を選択したのだ。その結果、自分の所有物がどのような反応を示すのか、もちろん、計算済みである。はるかも、親友と同じように理解している。
 一方、被虐者はどうだろう。
 上品な唇の周囲に付着した、自らの分泌液による汚れにすら無頓着なままで、知的な美少女は、ただ、唖然とした顔で主人の顔を見つめていた。そして、決意したように口を開いた。
「いやです!絶対に、それだけは殺されてもできない!!」
 所有者は、奴隷が自分が思ったように動くことが面白くてたまらない。しかも、その反応が予想以上であることに、気づくと、嗜虐的で知性的は悦びに、美しい顔を歪めるのだった。
 はるかは、友人の顔がたとえ、狂気に似た感情に歪んでも美しさを失わないことに、驚きを感じていた。
「照美、こんなブザマな姿をさらせるなら、もう、やってくれるんじゃないか?」
「そうね、やってもらうわ」
「いや!!」
 由加里は、華奢な身体を折り曲げて、必死に懇願、いや、抗議した。奴隷が主人に反旗を翻したのである。
そんな態度も織り込み済みという顔で、照美はもう一度言った。
「西宮さんのオナニーが見たいのよ、やって!」
「絶対に・・うう・・いや!」
「そう、もしも、やってくれたら、いじめをやめさせてもいいのよ。私たちはあなたにかかわらないし、親しい友人の、高田さんや金江さんにも言って聞かせるわ。これで、クラスと部活、両方とも、あなたにとって平和な世界になるわよ」
二人に対する軽蔑を隠さない口調は相変わらずだ。
「信用できないって顔ね。だけど、あなたに人前でオナニーさせたら、もう、目的は達しちゃうわけ。おもちゃとして用済みなのよ、おわかり?」
照美の美貌が近づくと、さくらんぼうのようなとても上品で芳しい香りが広がった。それは、彼女が発する恐怖とは完全に性格を異にする。
照美は、もういちど言った。
「西宮さん、オナニーしてくれない?」
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