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いじめ文学専用サイト
主人公はu15の少女たち。 主な内容はいじめ文学。このサイトはアダルトコンテンツを含みます。18歳以下はただちに退去してください。
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姉妹 10

 折原奈留は、くねくねと蠢くおぞましいものを性器に宛がう。
 思わず舌打ちが出てしまう。自分のやっていることに疑問を感じなければ、こんなことが真顔でできるはずがない。何者かに、強制されているという感覚がなければ、単なる変態ということになってしまう。
「なんだっていうのよ!?ウウ・・・」
 ミミズのちょっとした動きが性器に計算外の刺激を与える。もっとも強い性的な刺激とは、第一に予想外であること、そして、第二に強すぎない、適度な刺激であること、それらが総合すると最高の官能が訪れる。自慰ではけっして味わえない性的な快楽が、性交によって与えられるいい証左だろう。
 このおぞましい軟体動物の動きは、まさにその二原則に忠実なのである。
「家族のみんながどうして、こんな態度を取るようになったのか、よく考えてごらんなさい。あなたに言いたいことはそれだけよ」
 早朝に、母親に言われた言葉が頭に木霊する。情けないものを見る目で自分を見ていた。「どうして、私があんな目で見られなきゃ・・・アウウウゥ・・・あヒ」
必死の思いで最後まで入れ込む。ちなみにすでにアルコール消毒は済んでいる。熱を急激に奪う、その薬品の効力が性的な刺激に拍車をかける。
「あぅう・・こんな状態で学校に行け・・・なんて・・・ひどすぎる!」
 まるで、いじめられっ子の体験を聞いているような気分になった。別にそのような立場にいたことはないが、もしも、そうならそれは親しい友人同士だったということができるだろう、書籍だったが、新聞の片隅に忘れ去られたような記事だったのか、忘れたが、とにかくそこで読んだ記憶があるのだ。
 あまりにも真に迫った表現だったので、文章に没入してしまい、いじめられていた少女をカウンセリングする校医の立場になってしまったのだ。ついでに言うと、そのとき、ななぜか、性器が濡れてしまったのである。
昂奮を抑えるために、すぐに自室にこもると自慰をした。
 あのときは、どうしてそんな気分になってしまったのかわからなかったが、今、思うと加害者の立場に自分を立たせていたのかもしれない。
 人をいじめる人間を想像して、性的な興奮を得る。自分は最低の人間だろうか。ならば、いま、自分に起こっていることは自業自得だろうか。
 ちなみに、けっして、自分をいじめられる立場に立たせなかったことからもわかるとおり、奈留は今までの生涯においていちどもいじめられたことはないし、そんな状態に陥ることを恐れたこともなかった、のである。
 時計を見ると、午前6時。まだ一睡もしていない。
 だが、すぐに家を出ないといけない。

 まだ早朝に特有である、藍色の空気が漂っている。廊下から玄関に向かう間になぜかキッチンに寄るべきだと、心の声が言っている。
 はたして、ドアを開けてみると二つ分の弁当が並んでいた。
「家族のみんながどうして、こんな態度を取るようになったのか、よく考えてごらんなさい。あなたに言いたいことはそれだけよ」
 母親の声がまた木霊する。涙が頬を伝う。
 「なにも悪いことしてないのに」
 やるせない思いがさらに多量の涙をやや釣り目がちな瞳に要求する。
「はぁ、はぁ・・・」
 弁当を持つ手が震える。ちょっとした身体の動きが、股間に影響する。こんなとき、自分はどれほどみっともないだろうか?と思う。家族、そのなかでも、けっして、奈々には見られたくない。
 「うう・・・」
 やりたくはないが、スカートのポケットから手を入れて下着を上げる。
「うぐぐ・・ぅ!?」
 そうしないと、ミミズが落ちそうに思われたからだ。
「ぁ・・・」
 弁当を鞄に入れ込むと、気を取り直して玄関に向かう。革靴がいつもよりもきらきらしている。まるで黒曜石のようだ。それは涙のせいではないかと思える。
 靴が主人の境遇を嘆いてくれているのか、それとも、涙で曇った網膜がそうみせるのか、どちらだろう。こんなばかばかしい妄想も、ひどい現実から逃げる手段でしかない。自分には味方がだれも、すくなくとも、この世界においてはいないのだから、せめて、靴のような無機物にそれを求めるより方法がなかった。
 家から出ると、さわやかな青空が広がっていた。いつもならば、心の奥底から笑いたい気分になるだろう。だが、あの青は何処までも残酷に思えた。あるいは、とても非現実的だった。まったく無駄のないコンピューターグラフィックスが、完璧なはずなのに何処か不自然な印象を与えることはよくあることだが、今朝の空はそれに似ているかもしれない。
 「空に堕ちていく」という歌詞は何処かのロックバンドのナンバーだったろうか、奈留は覚えていないが、そのフレーズと曲だけは頭に残っていた。
 蒼天に落ちていく、引っ張られていく、とてもきれいな地獄に向って無理やりに移送される。そんな文章が続くような気がした。
 
 奈留の心にあるのは、「はやくいかないと・・・」というただ一言だった。私立なので自転車通学も可能だが、汚らしい液体で汚したくなかった。
ブロック塀を伝いながらやっとのことで進んでいく。こんな調子で命令通りの時間に間にあうだろうか。
 まだ早朝だとはいえ、公道で性的な興奮を得ている。そのことが、奈留に強烈な羞恥心以外のものを与えていた。それは、自分がおぞましい、汚らわしい、という感覚である。
 自分が触れるもの、すべてを汚しているような気がする。スカンクのような臭いを発しているように思えるのだ。
 今、たまたますれちがった赤い自転車の高校生。顔をしかめていた。きっと、奈留の臭いが耐え切れなかったんだ。
 ごめんなさいね、朝ご飯を食べたばかりなのに、大切な一日がはじまるというのに、しょっぱなからこんな不快な目にあわせて、奈留はとても臭いでしょう?
 急がなくてはいけないと足にいくら言い聞かせても、なかなか進まない。風景が動いてくれないのだ。まるで、ウォーキングマシンに乗っているかのようだ。
 しかし、奈留に選択肢があるわけがなかった。足は動きはじめる、学校などに行きたくないのに。この身体は、これまで彼女がどれほどひどい目にあったのか知っている。もしも、奴隷として主人の命令に従わなかったら、さらにひどいことをされるのが必定なのだ。
 流れ込んでくる、この世界の奈留の記憶。
 よそ者のはずである奈留にとってみれば、それと同化することはまさに恐怖である。
 今井真美の姿はなかなか見えてこない。あくまでも、よそものである奈留が知っているはずのおとなしい今井真美が・・・いや、それは奈留にとってみればいささか感想がちがう。確かに、あの時、自分に対して敵意を抱いていた。しかし、それにしてもこの世界における彼女と、どうしてもつながらないのだ。まるで見えない何者かに支配されているような気がする。
 最寄りの駅に特徴的な塔が見えたところで、携帯が鳴った。奈留の主人であり、所有者でもある、今井真美だった。とたんに、心臓をえぐられるような衝撃を受けた。携帯の液晶に表示された、その名前を見ただけで、この身体は銅像のようになってしまう。
 あきらかに、この世界の奈留は彼女に対して尋常ではない恐怖を抱いていている。このようなおぞましい行為を強制することからも、それは簡単に理解できるだろうが、じっさいに、体験したものでしかわからないこともある。
「折原?ちょっと、気が変わってさ。駅前でやろうよ、検査」
「・・・・!?」
 まさか、通勤通学の客が押し合いへし合いするところで、検査をしようというのか。背中に冷たい汗が流れる。
 どうやら、検査という言葉に敏感に反応するようだ。
 思わず絶望的な吐息が唇を震わせる。
「そ、そんな・・・!?い、今井さま・・・」
 この世界の奈留が口走った。さま付には驚く。彼女と今井真美との関係を端的に現している。
「ふふふ、本気にした?それとも露出狂の折原にとってみれば夢のようなことかしら?」
「・・・・!?」
「どうなの?したいんでしょう?!」
「ハイ・・・」
  力なく、真美の望む答えを返す奈留。かなり奴隷化が進んでいるらしい。奈留はぞっとした。しかし、よくよく彼女の気持ちを慮ってみると、その裏にはかなり深い物があるらしい。気が付かないうちに唇をかみしめていたからだ。それはすこしばかり温かかった。触れてみると出血していることがわかった。
 真美は駅前にあるトイレにまで来るように命じた。その猶予はわずか5分である。間に合うだろうか、だが、考えている暇はない。奈留はよたよたともたつく脚をひっしに動かしながら歩を進めた。

 「おはよう、折原」
 駅前の雑踏の前には、今井真美の悪魔的な笑顔があった。その背後には数名のクラスメートたちが控えている。彼女たちは同じように微笑を浮かべているようだが、何処かちがう。それが人間としての品の問題なのか、その他の要因が働いているのか、奈留には想像すらできない。
 悪魔的と言ったが、このサラリーンマンたちや、学生たちの目から見ればごく普通の女子中学生にしか見えないにちがいない。
 彼女は、その笑顔を崩すことなく近づいてくると、おもむろにネクタイに手を伸ばした。
 思わず、身体をのけ反らせる。整った顔が引きつる。
「ヒ!?」
「何よ、その眼は・・それがやさしいご主人さまに対する忠実な奴隷の立場なの?」
 真美の笑顔が、しかし、ほころびをみせることはない、他のクラスメートたちはすでにいじめっ子の本性を顕わにして、眉間にしわを寄せているのにかかわらずだ。
 「さあ、時間がないからこちらに来るのよ」
「・・・・!?」
 手首を摑まれると、強引に障害者用のトイレに連れ込まれ。平静を装っているようで、サディスティックな欲望を満足させたくなったのである。いわば、腹ペコの肉食動物がインパラを目の前にいて寝転んでいられるだろうが、真美たちはそういう心持だったのである。
 障害者用のトイレの個室は、がらんとしている。四畳ほどの広さはないだろうが、空間的な理由か、あるいは、奈留の気分のせいか、大げさに言うと地平線が見えるほどの広さに思えた。 
 真美は、すこしばかり屈むと奈留の整った美貌を上目使いで睨んだ。早朝の青い光はまだ残っている。そのせいか、血の色を失っている。しかし、そうであってもかなり可愛らしく見えた。少女はぞくぞくと全身の血管をとおって全身に広がっていく、サディスティックな欲望に武者震いに似たものを感じた。
「折原、ここまで聞て、あえて言わないけど、よもやとは思ないけど、ちゃんと言いつけどおりの、おしゃれな格好をしてきたんでしょうね?」
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『姉妹9』


 今井真美と奥原知枝はグルなのだ。というよりも、クラス全体が奈留をいじめているのだろうが、問題は上下関係である。どんな人間関係にもヒエラルキーというものは存在するが、彼女たちの場合はどうなのか。ちなみに、かつて、奈留がいた世界のことはまったく当てにならない。真美は、インドのカーストで言えば完全にその外にいる人物だったし、知恵は、奈留の信望者だったからだ。
それにしても・・・・本当に親しい友人は自分にいなかったと、おぞましい気持ちで捕まえてきたミミズを、外に敷設された水道で洗いながら思う。
 自分はクラスのことなんて、ほとんど知らなかった、もっとも、それを仮に深いところまで知っていたとしても、こちらで応用できる知識は何もないのだろうが。
ミミズはくねくねと奈留の指にからんでくる。命を全うしようと必死の動きなのだろうが、それらが各自、意思を持っているようには思えなかった。10匹はいるであろうミミズはそれぞれがつながっており、一つの意思系統に統一されているような気がする。奈留にからんでくるのは、性的な動機に駆られてのことだと思われる。これが、明日には、奈留の性器、陰核や小陰脚に絡み付くのだ。そのまま授業を受けさせられる。一日、この生き物が与える官能と戦いつづけねばならない。まさに、自分の理性が問われている、奈留は淫乱なのか、そうではないのか。
おぞましい・・・・。
ただ、ぴくぴくと生への渇望を表現しているだけのことなのに、感じる気持ちはそれだけだった。ガラス瓶に入れる。アルコールをかけるのは明日、知恵から命令された通りに性器に埋め込むのは、登校する直前のことだ。学校に行ってすぐに検査を受けるから、そのときに生きていてもらわないとどんな目に合わされるのかわからない。アルコール漬けにしたら、明日まで生きていないだろう。
ミミズが死んでしまったら、少なくとも、今井真美が言うところの、命令通りの格好には、すこしばかり点数が足らないのである。
ミミズをコップに入れて、部屋へと戻る。
赤々と点灯しているのは水槽だけだ。それだけは、なぜか奈留を歓待してくれているような気がした。「彼女が」となぜか、擬人化してしまいたくなった。

 何処からか流れてくる、この世界の奈留。
本当に不思議でたまらない、こんな目にあわされていながら、どうして学校に行けるのだろうか。もしも、彼女が自分ならば、とっくのとうに学校なんてやめていたはずだ。すくなくとも、家庭に逃げ込めば味方しかいないはずだ。
そこまで思考を進めて、おもわず目をつむった。
こちらの家庭は、すくなくとも今は、敵しかいないのだ。
「すくなくとも?」
 奈留は、ひとりごちた。どうやら、生まれてかたこのかたずっと、家庭内で疎外されて育ったようではない。それはこの部屋を眺めまわしてみればわかる。PCにテレビ、明々と点灯した水槽には熱帯魚が煌めいている。
あくまでも経済的という視点からすれば、かなり恵まれた部類にカテゴライズされるのではないか。ならば、学校で行われるいじめのように突然、そのような境遇に落とされたということか、いったい、この世界の奈留は何をしでかしたというのだろう。
何か、ヒントはないかと脳内検索にかけると、日記を書いていることを思い出した。はたして、この世界ではPCのどの部分に格納されているだろう。
まったく自信がなかったのだが、とにかく、思うままにキーボードを叩いていると、『なるの日記』というフォルダーが見つかった。
しかし・・・。
本当に自分が見ていいのであろうか、そのような疑問が急にガマ首を擡げてきた。日記というものは、作者以外にのみ閲覧権があるという、一種の道徳心から指が止まったのであろうが、そのうちに別の考えが起こってきた。
そうではなくて、中身を見るのが怖いのだ。いまのうちは、この世界における記憶はかなりあいまいである。まだ、クラスの人気者であるという自負は、奈留の中で命脈を保っている。しかし、これを見た瞬間に、それはもろくも崩れ去ってしまうのではないか、それが怖い。まさにこの世界における折原奈留に、身も心も成り果てたら、はたして、正気を保てるだろうか。
人並み外れて整った、しかし、すこしばかり目じりが上がった、気の強そうな容貌に影がまとわりつく。机の隅に置かれていた鏡、ちなみに、かつての世界にいた奈留の記憶によれば、奈々からの誕生日プレゼントだったはずだ、その中に映った自分の顔は、確かに折原奈留であって、その他の人間でありえようがない。
「もう、何も考えたくない!」
何ものかに完全にさじを投げると、少女は五本の指を自らの性器に、下着越しに触れた。それは、完全に精神的に追い詰められたときの、いわば癖だった。
 そこはとても温かい。
 いま、彼女が置かれている状況とまさに真逆だ。
「う・・ッ・・!」
 まだ理性が働いているようだ。奈留は、指を濡らす前にドアの方向へと顔を向けた。もうそろそろ、11時になる。
かつて、彼女がいた世界においては、「奈留、そろそろ寝なさい」と母親が声をかけにくる時間帯だからだ。だが、それはありえないだろう。安心して、現実から逃れることができる。
奈留は、指を性器に埋め込めると同時に、身体を寝具に滑らせた。彼女は時々なんのり具体的な理由もないのに精神的に追い詰められることがあった。そういう時には、これをやるのである。
「ウゥ・・・うう?!」
 指が溶けてしまいそうなくらいに局所は熱くなっていた。胎内から零れてくる粘液は強烈な酸かアルカリではないかと錯覚するくらいに、指が沁みる。いままで何度もやってきたが、こんなに強い快感は生まれて初めてだった。少女の未発達の身体がそれに対応できずに、思わず背骨を限界まで逸らさせた。一瞬、ドアが目に入る。自分のおぞましい声が外に漏れると思うと、気が気でない。もしも、奈々にでも見つかったらどうなるか、命の危険すら感じる。
もしかしたらと思う、原因不明の不安とはこちら側の奈留から伝わってきた悲鳴ではないか、もしも、そうならば、かつてその奈留はきっとさぞかし当惑していることだろう。もしも彼女と対面できたら何を言いたいだろうと、想像しながら、自慰をする。だが、彼女は困ったような顔で立ちつくしているだけで、口を開こうとすらしない。まるで氷でできた人形のようだ。
胡蝶の夢という発想も浮かんだ。
きっと、どちら側かが夢にちがいない。願わくば、こちらが夢であることを、しかし、もしもそうならば自分は消えてしまうことになる。
「ウウ・・・!?」
あまりにも感じすぎて身体が勝手に動いて、背中をベッドに設えている棚にぶつけてしまった。それが鍵となったのか、少女は絶頂を迎えた。
「ヒヒヒン?!」
「あはは、まるで馬ね?みんな、聞いた?こいつがイく瞬間!?」
 なんと、強制的に自慰までさせられているのか、この声はそのときの嘲笑にちがいない。同時に頬におぞましい温かさを感じた。きっと、唾を吐かれたのだ。もう、過去の記憶はいい。
早く手を洗いたい。このおぞましい粘液を拭い去りたい。
奈留は立ち上がった。手のひらを見つめて、少女は嗚咽を抑えきれなくなった。外から入ってくる青い光に、少女は気が付いた。もう早朝なのだ。この青さ加減から午前5時くらいだろうか。奈留は早朝マラソンをやろうと生き込んだことがあった、しかし、心配する母親の小言によって一か月を待たずに辞めさせられることになったが。そのときの母の温かさが、今となっては哀しいまでに思い出される。そして、すでに彼女には完全に無縁であることが、痛いほどに思い知らされる。
指を開いたり閉じたりすると、透明な粘液が糸を引く。それを洗い落としながら、奈留は、蛇口のふちについた傷を眺めた。ふと、人の気配を感じて、振り返った。
はたして、そこには妹である奈々が立っていた。ものすごい、うまくそのときの彼女を表現する言葉が見つけられないが、あえて言うならば、幼い般若ということになろうか。
・・・そんな目で睨み付けたいのはこちら方よ!と奈留は怒鳴りつけたくなったが、代わりに彼女の口からついて出てきたのは、別の台詞だった。
それも、感情的ではなく、驚くほどに「彼女」は冷静な調子だった。
「あんたなんかに、うちの学校が合格できると思って?甘いわね、フフ」
 般若の面がいっきに崩れ去った。しかし、そこにあるのは素顔などではなくて、別の面だった。
「うう・・・・?!」
 少女は泣きながら、何処かに走って行った。
 何処か?そんなことはわかっている。こんな状況で彼女が行くべきところは決まっている。両親の寝室だ。
 きっと、彼らに泣きつくんだろう。そして、また、殴られるのだろう。この世界に棲んできた奈留の記憶がそう言っている。なんだか、わけがわからなくなって家から飛び出ようとしたが、彼女が選択する道は、再び殴られることだった。そうだ。自分はそうならないといけないのだ。なんとしても憎まれ役をちゃんと務めないといけない。そうすることでみんなが幸福になるのだから、きっと、それは正しいことなのだろう。
 だが、その夜は妹の泣き声が絶え間なく響いてくるだけで、父親の怒鳴り声が金槌を構えて迫ってくることはなかった。ついに完全に見捨てられたのか、自分は家から放り出されるのだろうか。もはや、殴る価値もないらしい。せめて、義務教育中は飼ってもらえると思ったが・・・・止どめない思考が奈留の心に生まれては消えて行く。まったく眠れないとわかっていても、ごろんと寝具の上に寝転がると天井を見つめる。
 そこに定着したしみは、そんなに短い時間でそう変わるものではないと思う。だが、毎日といっていいくらいに変わっていくのはどうしたことだろう。ある日はラクダが子供を咥えている。また、ある日は、椅子から転がった猫が泣いているように見えた。
 それらがいったい、何を暗示しているのか考えていると、ドアが開いた。
 はたして、そこには母親が立っていた。
 予想もしなかった展開に思わずむくりと起きる。彼女が自分のする仕打ちといえば、徹底した無視か、凍りつくような冷たい言葉かの、どちらかだった。
 今度はどんな言葉で罵られるのかと思ったら、投げつけられた、否、静かなクラシックのように響いてきたのは、それよりもはるかに辛い内容だった。
「家族のみんながどうして、こんな態度を取るようになったのか、よく考えてごらんなさい。あなたに言いたいことはそれだけよ」
 「ママ、待って!」
 ドアのところまで飛んで駆けたが、それは母親の奈留に対する感情を暗示するように、無碍にも鼻先で閉められてしまった。
 そのときになって、自分があまりも不潔な行為をしたにもかかわらず、もちろん、奈留にしてみれば排泄行為よりもはるかにおぞましい、まだ手を洗っていないことに気づいた。

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