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『『兇状もちの少女、あるいは犬~保健所4』

 雄犬は、みずなを押しつぶすのに十分すぎる体重を持っていた。
 圧力以外のすべての感覚が恐怖のあまり麻痺している。ただ、何かが体内の中から流れ出ていく、そんな感覚は生きている。
 尿でもなければ、血液でもない、まったく別の液体が自分の中から逃げ去っていく。それは青井みずなという少女を構成するのに不可欠な構成要素であって、生気が搾り取られていくような圧力がひしひしと全体にのしかかってくる。子供の時にみた図鑑に青虫に卵を植え付ける小さな蜂が載っていたはずだ。蜂が作った巣に押し込められた青虫は、卵から孵った幼虫の餌となるのである。
 身体の感覚は麻痺しているはずなのに、他者に侵食されるイメージだけが頭の中で展開される。
 一匹の犬に伸し掛かろうとさせられているはずだが、複数の犬、いや、無数の何か得体のしれない生き物に蹂躙されているような気がした。
 もはや、心の中でさえ助けを求めることはできなくなっていた。このような状況で少女が自分に言い聞かせるのは、自分が単なる人殺しにすぎない、ということだった。だから、どんな目にあっても自業自得であって、しかもどれほど過酷な目にあったとしても生きている限り、諏訪良子への贖罪は完遂しない。
 下半身をはじめとして全身の感覚は精神的恐怖によって麻痺していたために、犬の性器が入ってくるどころか、触れたかどうかも覚えていない。
 その瞬間が来たか、あるいは、来ないか、ということは少女自身にとって重要な問題だと思うのだが、あいにくと深い霧の中に押し隠されている。
 ただ、そのかたちを想像しただけで少女はその気になってしまった。すなわち接触した感触を自分の想像力で捏造してしまったのである。
 その瞬間に頭の中が真っ白になった。同時に身体にも異状が起こった。
 突如として身体が軽くなった、まるで翼が背中に生えたような感覚に襲われたことは事実である。いきなり無重力になったと表現してもいい。あまりに突然のことなので、自分がどこにいるのかわからなくなってしまった。重荷が下された、ということはこれから死ぬのだろうか、もちろん、彼女がそう思った根拠は、死ななければ罪はなくならないと彼女は考えていることに由来する。
 背骨への圧力がなくなってはじめて、頭から首にかけて熱い液体で濡れていることに気づいた。
 惚けている少女の耳に、何処かで聞いた女性の声が響く。何を言っているのかわからないが、誰かを叱りつけていることは事実のようだ。
 誰の声だろう?
 こんなところまで堕ちた自分を援護してくれる。
 彼女からすれば、そのような人物はわずかである。家族と親友である眞子。いずれもこんなところにいようはずがない。
 おかしなことに、その声はカコを励ましている。とてもきれいな声だ。さきほどまで叱りつけていた口調や声量から、いままで自分を所有しようとしていた犬であるはずがない。そうだ、所有・・どうしてそんな言葉が浮かんできたのか、少女はわからなかったが、自分を押しつぶせるくらいに大きなものは、自分を所有しようとしていたのだ、自分のものとしたかったのだ。しかし、もの、ものってなんだろう?
 少女は自分をあくまでも誤魔化そうとした。初期とはいえ、思春期にさしかかっているみずなならば、その意味が曖昧ながら理解できないはずがない。
 オカサレタ?
 犬ニ?
 言葉というものが人間から失われることを、このときほど少女は思ったことがない。もしもそうなれば、今の今、彼女に起こったことを誰にも、いや、自分にすら、おそらく虎こちらの方がはるかに重要なのだ、説明できなくなってしまう。
 そして、誰も、少女が動物に犯されたなどと言いふらしもしないだろう。
 しかし人間から言葉は失われなかったし、彼女も失語症に罹患することはできなかった。しかも死ねなかった。人を殺すとはそれほど罪深いことなのだ。こんなになってまでも生きねばならない。さきほど殺処分された方がどれほど楽だったろうか?
 そうか、少女のかわりに殺されそうになった犬、あの人は、人と呼ぶのはなんだかおかしいが、この際しょうがない、別れ際に見せた何とも悲しい後姿が印象に残っているが、いったいどうなったのだろう?もしも、実行されていれば、その分の罪も彼女は背負うことになる。それがこの結果だろうか?
 もはや、彼女は死を願った。これほどの重荷を背負い続けることができるわけがない。底なし沼に沈んでしまいそうだ。誰か助けてほしい。自分をそのまま受け止めてほしい。
 気が付くと、誰かが自分を抱いていることに気づいた。
 自分の二倍くらい、あの雄犬よりもはるかに大きい物体に抱かれているのに、この不安定感はなんだろう?だが、そんな疑問も、その声がかつて自分を助けると約束した、あの声だと気づいて、少女は自分の心が満たされる思いをした。罪悪感はそのまま、自分は人殺しにすぎないという感覚は生きている限り消えようがないが、それに対する耐性がすこしはこの腕に抱かれているならば、自分が自分であることを保てような気がした。
 彼女は、たしかに言ったのだ。
「手続きが済んだら、私のうちに来るのよ」
 吐息が少女の心に染み入っていくのがわかる。ただし、なぜか、ここでも自分が完全に安定していない自分を見せつけられているような気がした。本当に彼女のところに行っていいのか、という思いには二種類の意味合いがある。
 ひとつは、殺人犯にすぎない自分が破格の待遇を受けていいものだろうか、という畏れ。もうひとつは、この女性に対する、完全には信用できない部分である。それは針の先ほどの小ささにすぎないが、聡明な彼女にとってみれば、上流にある小川も、下流にあっては大河となってはては海となるように、いずれは彼女にとって災厄となるのではないか、という恐れである。
 しかしそうなったらそうなったで、殺人犯ならば当然という一言によって片づけられてしまった。
 この人が新しいママになるのだと、少女は自分を納得させようとした、その時である。愛犬を撫でるような優しい言葉ともに、何かが彼女の性器を捉えたのである。彼女の指であることは同時に表情が対応して変化したことで一目瞭然だった。
 少女は思わず叫んだ。
「いや、そこ、汚いです!やめて!」
「どうして、いやなの?見せてごらんなさい」
 はじめて自分の意思が通じた。はずかしいことをさせられながらも、自分の言葉が人間に通じたことに、少女は奇跡に近い喜びを感じた。しかし彼女の行動は発言をまったく裏切るものだった。
 恥らっていやいやをする少女を無理やり床に押し付けて、なんとか、下半身を晒させようとする。これから信頼を与えようとする相手に、それを裏切られることをされるのは耐えられない。飢えている人間に、完璧なフードモデルを与えるようなものである。言葉が通じた喜びも、一瞬で消えようとしていた。
 しかし自分の局所を真剣なまなざしで見つめる目に、少女は消えかけた希望の灯が再び勢いを増すのを感じた。そのせいか、手袋をつけた手が性器に伸びていろいろと蠢くことで、性感を得ても、たしかに困惑はしたが、女性獣医の愛情故だと自分を納得させようとした。
 少女が知っている限り、人間は愛犬や愛猫の性器を、自分の愛情を示すためにいじったりはしない。もしかしたら、最初から病気を調べるために医師として触れたのかもしれない。そう思うと疑った自分が情けなくなる一方で、信頼がなおさら増えていく。
「なんでもないじゃない、陰核も小陰脚もきれいなピンク色よ」
 しかしそんなことをこまごまと言われたのでは、思春期の少女として恥ずかしくてたまらない。いかに診断のためとはいえ、である。
 だが、それならどうして彼女の手は少女の性器から離れないのだろうか?それどころかさらに奥に侵入してくる。少女自身ですらそんな奥に指を入れたことはない。
「ァアグウ・・いやぁぁ・・」
 必死に抵抗を企図する少女だが、気が付くと彼女を支配しているのは、あくまでも女性獣医の指だけであって、抵抗する、しない、逃亡する、しないは、すべて選択肢として与えられている。
 しかし今のような恥ずかしい状態でいたいのは、みずな自身の意向によるものであって、女性獣医はあくまでも支えているにすぎないのだ。よく自分を観察してみると、彼女の指に刺戟してほしいあまりに自ら動いていることがわかった。
 否定できない事実が彼女の目の前に提示された。しかしながら、諏訪良子たちのようにそれを嘲ったりしない。女性は、あくまでも優しい笑顔を浮かべている。少女は、涙は流せないから内側に溜め込んで、思わずある単語を発していた、顔が燃えてしまいそうな羞恥心を必死に我慢しながら・・・・。
「せ、せ、せんせいぃ・・」
それは少女による、女性への最初の愛情表現だった。
「え?この子、今、何を言ったのかしら?私のことを先生って呼んだ?まさか、犬がそんなことを言うわけはないし・・・きっと、疲れているのね、獣医としてあるまじきことをしてしまったし・・」
 少女は天にも昇りたい気持ちになった。彼女の発言からすれば、もしかしたら、少女の言葉が通じたのかもしれないという一縷の思いが自分のなかに生じた。
 自分は犬じゃない、人間なのだ。
 そういう思いがまだ生き残っている。局所から這い上がってくる、背筋が寒くなるような快感に恐れおののきながらもなんとか少女は中学生の、普通の女の子としてのアイデンティティを保持していた。
 しかしそれは女性の、簡単な行動によって早くも危うくなった。少女の性器から指を外したのである。
「今度は背中を診てあげるわ、引っかかれて怪我なんかしていないかしら」
 無意識のうちに思ってしまった。もっとやってほしい、奥まで弄ってほしい。
 それはしかし、すぐに理性が蘇って否定した。おそらくは何かも失って打ち捨てられた悲しみとさびしさが自分にそのようなものを求めさせたのだと、文学的な思考をしてみたものの、理性で理性を打ち消すことほど虚しいこともない。
 みずなは、背中を女性獣医に撫でられながら、絶望の螺旋階段を永遠に落ちていくイメージに自我を侵食されていった。
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『兇状もちの少女、あるいは犬~保健所3』
  桐原桃子は、みずなを保護用の檻に預けるとすぐに、所長と司法省の役人が待っている部屋に行かねばならない。処理しなければならない仕事が彼女を待っている。
田沼たち、その他、若い職員には興味がないために、彼女の脳裏に発生する映像にあっては、のっぺらぼうの匿名というひどい扱いにすぎない。
部屋に到着したころには時計の針は定刻をすでに超えていた。
 入室するなり、新沼という役人に遅刻を素直に謝罪する、ついて、所長と目が合い、それなりの謝罪を込めて頭を下げる。
 クリーム色の殺風景な部屋の真ん中に設置された檻、というよりは単なる鉄格子のついた箱の中には白い犬が鎮座している。かなりの短毛種である。ブランドからいえば数十万は出さないと手に入らない高級種と世間では喧伝されているが、そんなものは女性獣医師からすれば墳飯ものだとしかみなせない。彼女にとって犬は、通常人にとっての異性と同じなのである。ブランドなどではなくて、その犬が彼女にとってセクシーか、否か、もっとあからさまにいえば、性欲を刺戟するか、しないか、というのが基準なのだ。ちなみに、この犬は、外見からすれば100人のうち100人がおそらく写真で見せられれば同じ犬だと判断するにちがいない。
 それゆえに、この職場の人たちだけでなく、司法省の役人の目すら欺くことに成功したのである。しかし、桃子からすれば単に外見が美しく、かつ、高価な品、というだけでそれ以上の価値はない。
 だから、これから実行することも、何の感慨もなくこなせるのである。
 しかし、カコという兇状もちの犬はちがう。一目みただけで自分のものにしたくなった。人間というものは、えてして恋愛感情ほど脳の働きをよくするものはないようで、カコを視界に収めた瞬間に彼女は、無意識のうちにこれを自分の所有物にしたいと思い、いや、思うだけでなく思考能力がフル回転してその算段を立てはじめたのである。
 以前、当保健所が確保した犬のなかにカコにそっくりな動物がいたという情報が光よりも早いスピードで桃子の意識に上った。
彼女がすべきことはすぐにわかった。
その日、訪れるカコの家族を利用することである。おそらく、彼らは、これから愛犬と
生活をともにできなくなるとしても、その命を救えるのならばなんでもするにちがいない。犬をみれば、その手の職業にまじめに就いているものならば家族の姿があえて考えなくても脳裏に映像として描写されるものである。
恋愛感情は彼女の頭脳にとって潤滑油の役割を果たす。
家族に言うべきセリフすらあらかじめ考えておく。どんな物言いが彼らの心を動かすのか、心理学者や精神科医顔負けの手練手管を、彼女は持ち合わせているのである。まず最初に家族を一目みただけで、誰がイニシアティブを取っているのか見極めねばならない。

 家族がその日に来訪する時間までもがわかっている。車内でそれを待てばいい。彼ら以外に予定の家族はいない。二本目の缶コーヒーを開けようとしたところで、母親と二人の少女が駐車場に止まった車から降りてきた。
すぐさま接触して、自分の身分を明かすと、処分の実行者であると単刀直入に打ち明けった。驚愕の顔を見て取ったところに取引を持ちかけた。
「もちろん、これまで通りにカコをあなた方が飼われるということは不可能でしょう。しかし、ある手段によって生きることは可能なのです」
青井家の人たちに演技をしてもらうことを承諾させた。すなわち、そっくりな犬をカコだといって抱きしめてもらうわけだ。二つ返事で主婦らしい30歳ぐらいの女性は承諾した。
「しかし、よくもそっくりな犬がみつかりましたね」
「だけど、その犬ってカコのかわりに殺されちゃうんじゃ・・・・」
 小学校高学年ぐらいの少女が涙を浮かべた。
 「大丈夫、時間を稼げばなんとか処理できます。殺処分は家族であるみなさんが捺印しなければ実行できないのです」
 そのとき、裁判所が下す許可のことはあえて言わなかった。そして、桃子が犬に対して家族という言葉を使ったことが青井家の人たちを信用させる結果となった。
このようにして彼らを籠絡したのである。
それは彼らが予定の面会時刻よりも途方もなく遅刻した理由でもある。何をやっていたのか、演技指導を行っていたのである。所長の目は節穴にしても、あの司法省の役人はなかなかどうして鋭い目をしている。
そういう理由でかなり手間取った。

 今、桃子は薬品を注射器に注入したところである。
 普段は剛腕なところを見せつけたくて、人間社会にとっての害悪を除くためだの、アジ演説にも似た雄弁ぶりをみせているところだが、いざ、実行となるととたんに臆病の青い色が顔に現れる。それをよく知っているからこそ、桃子も、他の若い部下たちも心の底からこの上司を軽蔑しているのである。
さて、女性獣医は手慣れたてつきで静脈注射に取り掛かる。
 言い忘れたが、すでに裁判所の許可はとってある。あまりにも事件が凄惨だったので簡単に裁判長は許可を下したのである。
 青井家の人はこの事実を面会した際に知らされたわけだが、裁判所という言葉にうまくだまされてしまった。桃子の言葉もあって何回かにわけて審問が行われ、許可が下るには数か月が少なくとも必要だと踏んでいたのである。
 その様子を想像した桃子は思わず、思い出し笑いならぬ想像笑いを浮かべた。毒液を注射する寸前にそれを起こったので、所長とはじめとする観客たちは、彼女の表情の冷たさにぞっとさせられたことは言うまでもないが、若いエリートだけは、内面は誰にもわからないものの、少なくとも、恐怖を最後まで表には出さなかった。
 もっとも過酷な殺処分という結末を受け入れねばならない犬は、一般的に、兇状もちであるとされる。これは大いなる誤解なのだ。たとえ、相手を死に至らしめたとしても、家族の同意がなければ即座に殺処分、ということはありえない。
 カコにそっくりな白い犬が処分されるに至って、裁判所は即決したが、これは異例といっていい。見えない力が働いたというより他にない。桐原桃子はどうやらそれすら見込んでいたようだ。
さて、もっとも過酷な運命をたどるのは飼い主がいない犬猫である。
 彼らを処理するのにあたって、家族の役割を果たすのは所長である。ここが太陽国の動物愛護法の変なところだが、この場合裁判所の許可はいらない。彼の胸先寸前で命が絶たれてしまう。
 逆にいえば、彼の意思次第でどうとでもなる。
 みずな、本人の知らないところで彼女は生きることが決まった。もちろん、桃子の策動があってのことである。
 カコにそっくりな白い犬が処分されたのちに、彼女は所長の内諾を求めた。
「ブランド名に引かれんだろう?まあいい」
 その一言で即決となった。べつに彼に犬種をうんぬんする識別眼があるわけではない。ただ、獣医である桃子が所望するならばおそらく雑種ではなかろう、という非常に底の浅い人間観に基づいていている。これほど低俗な人間でも務まるのだから保健所の所長という職業は楽なものだと、今更、断定するまでもない結論をドロップの代わりに口の中に放り込みなら、自分の所有物を確認するために保護室に向かった。

 青井みずなは、たくさんの犬が離された広い檻の隅で縮こまっていた。怖い、そこいらを行き来している、よつんばいの生き物が怖くてたまらない。長い舌を多量の唾液とともに垂らしてはぁはぁといいながらところ構わず、相手かまわず吠えている、そんな生き物がけがらわしく思えてならないのだ。
 かつて、これは今でも自分を犬だと認めたくないことだが、人間だったころ、自分の家でじっさいに飼っていないが、動物は大好きだった。近所に犬がいれば必ず近づいて頭を撫でたものである。どんな凶暴そうな犬も彼女にかかれば、尻尾をふりつつ下腹部を晒してその部分を撫でられることを所望したものである。むろん、彼女はいつでも応じてやった。その犬種の中にはドーベルマンのように下手すると命の危険すらある相手もいたのである。どれほど彼女が犬好きであったか推察できるであろう。
 それに、いじめられるようになっていからは、四足の動物だけが彼女にとっての友人であってどれほど慰められたのかわからない。
 それなのに、彼らと目の高さが同じになった瞬間にこのざまである。なんということだろう。情けなく思いながらも身体が震えるのは付随運動であって、彼女にどうすることでもないのだ。
 みずなが目のやり場に困るのは、二本足で立っていたころにはまったく気にならなかった、雄犬の局所がやけに大きく視覚神経を刺戟することである。
 おそらく、目の高さが違うことが関係しているのだろう。中学生という多感な年ごろゆえにまったく気にならなかったといえば嘘になる。だから、視てみないふりをしていたのだと思う。付け加えれば人間だったときには、文字通りの上から目線になるために局所が目に入らなかったのかもしれない。
 それが同一の高さになってはじめて感じることも、またはわかることもある。
 理性が告げているのは、自分は犬好きでも友達とも思っていなかったことだった。あくまでも上から目線で可愛がっていたにすぎない。自分の思う通りに動いていてくれるので、いわば、幼い子供が扱うような人形のようなものだろう、少女は気持ちよくてたまらなかったのである。
 逆に言えば、学校でクラスメートにされていた待遇といえるだろう。
 いま、みずなよりも一回り大きな犬が近づいてきた。そして、尻をなめたのである。
「いぃいやああぁあ!!こ、来ないで!!」と叫んだものの、そのどす黒い長い毛に全身を覆われていて、目や鼻がどこにあるのか一見でわからない犬に言葉が通じるわけがない。
 嫌がる少女の尻どころか、股間に長い舌を伸ばしてきた。
「た、助けて、ママ、ま、眞子ちゃん!ひぃいいいぃ!!」
 いやらしい舌がクリトリスに達したとき、少女は自分の下半身が液体になって流れていく感覚に襲われた。じっさいは失禁していたのだ。液体の熱で大事な部分がやけどするかと思った。
 諏訪頼子に、教室でそれを強制されたときには泣くに泣いたせいで、気が付くと自分のベッドで朝を迎えた。その日は土曜日だったのでまずは学校に行かなくていいと安心したがよく考えてみればちゃんと帰宅して、両親の前ではふつうの女の子の役を演じて、かつ夕食も「美味しい!美味しい!」を連発して平らげたのであろう。あるいは、風呂、着替えなどの日常にやることを無意識にこなした、ということになる。クラス全員の目の前で排泄行為を強制される、それは記憶を失うくらいにショックなことだったのだろう。
 いま、それを犬として行っている。しかも、今までいじめっ子が自分を見下すように、また見下していた犬たちの目の前で。
 少女は雄犬に背中に乗られたことにも気づかずに。身も世もなく泣き出した。涙が頬を伝うことにも気づかなかった。 

 

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『兇状もちの少女、あるいは犬~保健所2』

 時計は青井みずなが閉じ込められている檻からもみえている。それは午後1時55分を示している。それはあたかも彼女を見下ろしているようだ。銀色の枠に黒塗り、という実にシンプルなデザインである。
しかし、時計だけがそうしているのではない。
彼女に鼻の孔を恥ずかしげもなく見せつけているのは、所長らしき男と田沼という若い部下である。なぜか、桐原桃子という、もうひとりの部下がいない。その事実は少女の心を寒くするのに十分だった。
 午後2時を針が示したところで、ドアが開いて二人の男が入ってきた。二人ともみずなが知らない男である。
「司法省から新しい人が来られると聞いたのですか、あなたにまた代わったのですね、新沼さん」
 司法省という言葉にみずなは心から驚愕した。自分がもののように葬る、まさに死神のように思えたからだ。一見するとハンサムなエリートという風貌だが、何かよくできた蝋人形のような印象を普段の彼女ならば受けるだろうが、今の少女にそんな余裕はない。ただ、打ち震えるだけである。
 その前に家族との面会が待っていると聞いた。
 家族とは誰のことだろうかと、みずなは訝しく思っていた。ここはあきらかに今まで彼女が住んでいた2013年ではない。この部屋に貼ってあるカレンダーをみれば一目瞭然だが1979年なのである。それも携帯電話が散見されることから、時間移動したわけでもないらしい。
 所長は役人に断って携帯を取り出した。
「まだ、家族は来ないのか?」
 本当ならば会ってみたいが、そうすれば自分がごみのように打ち捨てられる時間が早まるだけだ。巨大な焼却炉に放り込まれる自分の躯を想像するだけに身の毛が震える。あまりにも惨めではないか。そう思うと涙が出てくる、と言いたいところだが、嗚咽はいくらでも迸るのだが一粒も涙はこぼれてこない。どうしたことだろう。本来ならば人一倍涙もろい性質なので、このような状況に置かれれば、視力が奪われるほど泣きじゃくっていてもおかしくない。
教室でいじめられていたときには毎日のように涙が顎を伝っていた。自分のそのような有様をいじめっ子たちが付けあがることはわかっていたが、あまりの悲しさのために押しとどめることはできなかった。
 いま、それほどまでに追い詰められている少女を何人もの大人たちが見下ろしている。そんなに見ないでほしい。その目、目は、教室における、かつてのクラスメートたちの好奇心と嗜虐、それから、これが一番つらかったのだが、ほんの少しの同情、それらが入り混じった視線とは全く違う。あきらかにみずなを人間だとおもっていない、ほんとうに自分を犬としか見なしていないようだ。じっさい、彼らの目はそのように見えているのだろう。その点においては、教室にいるよりも楽だが、その代わりに同胞を殺された怒りの気持ちが溢れている。早く殺したい、そう少女を告発している。
 教室では少なくとも命の危険は感じなかった。しかし、今はちがう。ひしひしと死の刃物が全身に突き刺さってくる。しかも、その刃物は手術で外科医が使うような清潔なものではなく感染症を引き起こしそうな細菌やらウィルスに塗れているのだ。
「もう、約束の時間は30分も過ぎているのだぞ?いったい、何をやってるのだ?田沼?」
「さあ、犬一匹まともに躾けられない人たちのことですから、時間にもいい加減なのでしょう」
 死の寸前まで追い込まれていながら、少女は霧消に腹が立ってくるのを感じた。いじめによって加害者を殺すまでに追い詰められていたのに、それに気づかずに放置した家族はやはり家族だ。この人たちに非難する権利があるとは思えない。
 それにしても、だ。自分、ようするにこの犬はどんな罪で殺処分になるというのだろう。そもそも犬にむかって言葉は通じない、少なくとも彼らはそう思っている、ゆえに、判決を下すことなどもとより無意味だ。
 とはいえ、この犬が何をやったのか知りたい。
 それは田沼という若い職員が教えてくれた。
「この犬って少女をかみ殺したんですよね」
「そう、葬式の席に乱入してある一人の少女に飛びついたらしいです」
「私は記憶力には自信があって、一度目にしたものは忘れないんですよ、確か諏訪良子という名前だったと思います」と司法省の役人。
 どうやら殺した相手はかつて自分がいた世界と同じらしい。しかし、問題なのはいったい誰の葬式の席だった、か、ということだ。
 それがわからないままに時間が過ぎて三時となった。それはあらかじめ所長が宣言していた、死刑執行ならぬ、ごみの焼却処分の時間である。

 ちょうどその時、ドアが開いて桐原桃子とともに「家族」が入ってきた。
「・・・・・・・・・・・・・?!」
 見まごうはずがない。先頭にいるのは彼女の母親である。彼女の容姿以前に愛用しているコロンの匂いが懐かしい記憶を呼び起こす。誰が間違えるものか、幼いころから親しんできた香なのだ。
 少女は焦燥に駆られて思わず彼らに飛びつこうとしたが、古い漫画のように鉄格子が折れるわけでもなく、したたかに全身を打ち付けて無駄に痛い目に合うだけだった。骨の何本かに罅が入り、筋肉繊維の何本かが切断されたような気がする。もともと体育会系であり、剣道部に属していた少女ならばその辺のことはわが身のことならば経験もありよくわかる。
 しかし、近づいてきた家族は、母親をはじめとして自分を冷たい目で見下ろしているだけだった。少女は吠えた。ひたすらに吠える。
「私よ、みずなよ!ママ、あなたが付けてくれた名前でしょ!お願い、助けて!どうしてそんな冷たい目でみるの?!」
 母親の第一声が彼女をさらに絶望のどん底に突き落とした。
「この犬はうちのカコではありません。何処かよその犬でしょう」
 カコ?その名前はどこかで聞いた名前だが、そのゆえんついて思いだす余裕があるはずがなかった。自分はみずな、あおいみずなって小学校の上履きに2年まで名前を書いてくれたでしょ?
 しかし、母親もほかの大人同様、いや、そばにいる妹たちも自分を姉だとは認識してくれない。いや、自分たちがかつて飼っていた犬とは認識してくれない。なんということだろう。この世界では自分がもともと人間ではなく犬だったのか、いや、ちがう。母親はカコと言ったはずだ。みずなはどこか別の場所にいるに決まっている。
 いや、みずなはここにいるのだ。おねがいだから気づいて。そんなに自分のことが嫌いだったのか。だから、あれほど追い詰められていたのに見て見ぬふりをしたの?そんなにどうでもよかったの?
 みずなが吠えている間。
 所長と母親が話し合いをしていた。
 「よくいるんですよ、あなたみたいな飼い主がね。社会に損害を与えておきながら、自分が飼っていた犬じゃないって、誤魔化してね。さすがにいくら害悪極まりない存在になったといっても、飼い犬ですからね、それは可愛いでしょう。それはわかりますよ。だけど、飼い主さん、自分のお子さんが犬にかみ殺されてごらんなさい。それでもあなた、そんなことが言えますか?」
「所長、飼い主の捺印がなければ殺処分は実行できません。裁判所に申請するより他にありませんな」と役人が帰ろうとしたときだ。叫び声が部屋の外から響いた。
「逃げ出したぞ、犬が逃げた。捕まえてくれ!」
 声の調子からただの犬が逃げたのではないことは、みなにも伝わったらしい。獣医である桃子が外に飛び出した。そして、ほどなく彼女は犬を部屋に連れ込んできた。その犬を見た瞬間に少女は既視感を覚えた。たしかに知らない犬ではない。だが、何処でであったのだろう。詳しい情報はどう頭を捻っても思い出せない。
 この部屋にはまさにカオスの極みがあった。誰も収拾することをあきらめたところに、それをひっくり返すような大声が響き渡った。それはみずなの母親の声だ。
「カコ!カコ!カコ!会いたかったわよ!!」
 彼女は、かつてみずなを含めた、自分の子供たちにやったようにカコなる白い犬に抱きついた。彼女には二人の妹がいるために、そういう映像はいやというほど記憶の保管庫に残っているのだ。
 その映像とあまりにも酷似している場面が展開されつつある。
 「いったい、どういうことだ、田沼、記録はお前が担当だろう。単なる保護用の犬とまちがえたのか?!」
 所長に怒鳴られて怯える田沼はただ強縮するだけだった。
 彼以上に混乱しているのはみずなの方である。
「はやく保護用の檻に連れて行きなさい、たしか新しい飼い主が予約済みだったな」と支所長は桃子に命じた。
 哀れにも白い犬は何もわからないままに、今の今まで少女が押し込められていた檻に放り込まれた。
「え!?」
 その犬が振り返って、少女と目が合った瞬間に、そこには自分にそっくりな女の子が裸のままで檻の中で泣きじゃくっているではないか。しかし、そうみえたのも一瞬のことですぐに元の白い犬に戻ってしまった。
 もしかしたら、自分はあの白い犬にそっくりなのだろうか?とてもかわいい容貌をしている。毛並はかなりきれいで、犬のブランドに詳しくない少女にはわからないが、すくなくとも雑種ではないことぐらいはわかる。
 あの犬は自分の代わりに殺されてしまうのだろうか?そう思うとやり切れないが、少女はさんざん痛めつけられた挙句に爛れきった心の持っていき場所を求めていた。いきなりその場所が歩いてやってきたのである。
 廊下に出てふたりきりになると、みずなは桃子に抱きついた。
「待ちなさい、まだ家には連れていけないのよ」
「ェ・・・エエ?!」
 そういって、桃子はなんと少女の性器に手を持って行ったのである。そして、柔らかな手つきで、クリトリスや小陰脚、あるいは、そのあたりを撫で始めた。まるで、それが犬に対して人間がかわいがるために、頭部や顎やその他、全身を撫でるようなごく自然で当たり前の動きだったので、それは彼女じしんが犬に対してやったこともある行為だったが、少女は拒絶する機会を失ってしまった。
 彼女の指はさらに奥に入ろうとしたが、人が来たのでやめてしまった。
 桃子と誰かは何やらやりとりをはじめたが、それはまったく少女の耳に入ってこなかった。なんとなれば無意識のうちに刺戟を、あれほど恥ずかしい仕打ちを身体が求めたからだ。同じようなことは諏訪良子や伊豆頼子たちによって、教室で幾度となく繰り返されたので、回数は覚えていないほどである。
 少女は廊下にできた水滴を見てショックを受けた。まるで失禁したように局所が濡れそぼっているのが、改めて見なくてもわかる。こんな恥ずかしい状況をみても、桃子の話し相手はまったく意に介さない。まるで犬ならば当たり前だといわんばかりだ。
 その相手にいつさよならしたのか覚えていないが、いつのまにか相手はいなくなっていた。
いざ、自分が本当に四つん這いになって、首輪につないだ紐に桃子によって引かれている様子を、大きな壁にはめ込まれた鏡によって確認したとたんに、想像の中で大粒の涙を流した。
だが、哀れにも犬は涙を流すことができないのだ。
幼稚園ぐらいのときに動物園に行った際に大人に聞いたことがある。
「どうぶつはかなしくなんかならないんだね。だって、こんなおりにとじめられてもないてないもん。みずながとじこめられたらきっとなくよ」
みずなは過去の自分に向かって、いや、ここからは完全に異世界のようだが、その世界の過去に向かって言った。
「違うよ、みずなちゃん、動物だって悲しくなることはあって実際に泣くのよ、だけど、外にじゃなくて中に流すの、それが動物の泣き方なの。覚えておいてね」

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『『兇状もちの少女、あるいは犬』 保健所1』
  犬のように、いいや、今度ばかりは「ように」ではなかった。みずなは自分が四つん這いになっていることに気づいた。立ち上がっているよりも自分にとって自然であることが涙を誘う。
 なんということか本当に人間でなくなってしまったのか。
惨めにも圧倒的な喧噪のなかで少女は引かれていく。嵌められた首輪につながっている鎖と摑もうとしたがうまくいかない。手は両方ともちゃんとした手であるのになぜかかつてやっていたようにものを摑むという機能が完全に失われている。それに突然、気づいたのだが少女は全裸になっているではないか。ほとんど芽乳というより他に表現しようがないだろうが、彼女にとってみれば立派な胸なのだろう、その胸部と恥部が露わになってしまっている。
「ぃいやァ!!」
 教室で、しかもにやにや笑う男子が居合わせる場所でみずなは諏訪良子たちにいつも全裸にさせられていた。そのことがいやでも脳裏によみがえってくる。少女は本能的に胸と股間を隠そうとした、その瞬間、真夏の太陽を何個も集めたような強烈な光に当てられたような気がして失神してしまった。
 次の意識が戻ったとき、少女は檻の中にいた。いままで彼女を拘留していた、人間用の牢獄ではない。文字通りの意味で檻、だ。彼女も動物病院でみたことがあるが、小箱のような入れ物にすぎないのが中からでもわかる。
 
 意識が戻る寸前に良子と伊豆頼子の声が顔面に叩きつけられるように響いたような気がする。「ああはははは!この雌犬、あそこに毛が生えていないわよ!」
「犬じゃ、しょうがないわよねえ、犬じゃ!きゃはははははは!」
 普通は小学生も高学年になれば生えてくるのに、みずなは中学に入っても性器の周囲に毛がまったく生えてこないことがコンプレクスの対象だった。それがクラスの全員の目に晒された日のことは絶対に忘れられない。 
 5月6日のことだ。
 いま、全裸で、しかも四つん這いになっている少女を見下ろしているのは、三人の男女だった。一人のチョビ髭の男性がこの場の支配者だと本能的にわかった。彼はおそらく、父親よりも10歳ほど年齢が高いだろう。傍らに従えている若い男女は部下なのだろう。なぜか、この女性と目がったとき言い知れない安心感が心に芽生えた。
 かつて、少女があこがれた剣道部の先輩に似ていた。着衣でも筋肉質であることを見る人に訴えかける。しかし、だからといって筋肉がむきむきというわけではなく、均整のとれた身体からは凛々しさだけが溌剌とした風とともに伝わってくる。
 少女は、かつて眞子に向けた、縋るような視線をぶつけた。教室でいじめられているとき、彼女は気づかれないように密かに無言で助けてとメッセージを送っていた。むろん、絶縁宣言をこちらから叩きつけた以上、あからさまに助けを求めるわけにもいかず、彼女の顔が少しでも見えたとたんに視線をずらした。そのたびに涙が滲んだことを思い出す。
 あれは、いったい、何年前のことなのだろう。
 ふと、カレンダーを見て少女は驚愕した。それは無機質で殺風景な部屋の、クリーム色の壁に貼られていたのだが、1979年という年号が目に入ってきたからだ。おかしい、今は2013年のはずではないのか?自分は時間を移動したとでもいうのだろうか?
 それにしては、上司らしい男性が携帯電話を使っている。
 しかし、彼女は彼の言葉によって地面が崩壊するような衝撃を受けるのである。
「ああ、殺処分、この1歳の雌犬のことですね、司法省の役人が3時には到着するはずですよ。ええ、はい、滞りなく対処します」
 この場にいるのはみずなだけだ。しかも、自分が犬であることを無意識のうちに受け入れていることに気づいて二重のパンチを受けた。
 いや、それどころではない。自分の命が危ない。だが、なんということだろう、自分は人殺しなのだ。そうなった時点ですべてをあきらめたはずではなかったのか。死刑になることを望んだはずだ。それなのにいざ自分が死ぬとなるとこのざまだ。そう考えると、自分をあれほど苦しめた諏訪良子がかわいそうになった。わずか中学二年生のみそらで望まない死を無理やりに強制されたのだ。彼女はもう学校に行くこともできないし、彼女が好きだったアイドルのコンサートにも行くことができない。そう仕向けたのは誰でもない、青井みずな、なのだ。
 罪悪感に打ち震える少女は、やはり、この女性職員の視線に心が暖められる思いがした。チョビ髭の上司と若い部下が退室すると、彼女は顔を檻に近づけてきた。双眸には悲しみとも怒りともしれぬ涙が光っている。
「ごめんなさいね、人間を許してね、あなたはまったく悪くないのよ、本当に悪いのはあなたを躾けなかった人間なのよ。だけど、私が助けてあげる。きっと、あなたを助けてあげるわ」
「私は、人間よ!青井みずなっていう歴とした名前もあるのよ、お願い、ここから出して、服を着せて!!」
 しかし、この人にも自分の言葉は届かない。しかし、彼女が自分を助けると言ったことは確かだった。彼女の胸にはIDカードが縫い付けてあって、桐原桃子、獣医、保険所職員という文字が目に入った。そのなかでもっとも少女の目を引いたのは保健所という三文字だった。
 かつて、ニュースで保護期間を過ぎ犬や猫を保健所で殺してしまうという事実を知ったときには、軽く可愛そうに、という少女らしい感慨を抱いただけだった。いま、それが自分の身の上に起ころうとしているのだ。人間として死刑になるならともかく、動物のように処分されるなんてたまらなくいやだった。あの地獄のような教室とまったく変わらないではないか。
 諏訪良子や伊豆頼子たちクラスメートの、自分を嘲笑う声が耳に響く。
 自分は犬なんかじゃないちゃんとした人間よ、人間の女の子よ、とみんなに無言のうちに叫んでいた。
「ねえ、ねえ、どうして人間が通う教室に犬がいるの?」
「それもいやらしい雌犬よ、いやあねえ」
「わんわん、ここは犬がいちゃだめなのよ」
「あははは、犬に言葉が通じるわけないじゃん。愛犬家によくいるんだってね」
「変な人たち、犬を人間みたいに何人とか言う変態さんでしょ?」
「だけど、そんな変態でもこんな駄犬を飼おうなんているわけないよね、あははっ」
 下手をすると授業中すら情け容赦のない罵りに少女は晒された。生徒たちの大勢に乗るのが正解と、いじめっ子たちのやっていることに協力する教師すら存在した。
 休み時間になると教師の目がなくなる分、それでも大人の目は彼女らの行動を制御する程度の役割は果たしていたらしい、いじめっ子たちの行動は派手になっていた。犬ゆえに着衣でいるのはおかしいということで、全裸にされ、性的な辱めまで受けた。何日かそれが続いたのちに、授業が終わると自分の手で脱衣するように、躾けられた。そのような絶望的な日々の後、諏訪良子を絞殺すまでに至る。
 
 今や、完全にすべてを失った少女にこのような視線を向けてくれる人がいる。
 彼女は自分が人殺しになった、イコール、すでに自分を死人だと見なしており、過去はすべて同時に消滅したと決めつけていた。ゆえに、母親をはじめとする家族は彼女にとって死んだも同然だったのである。彼女自身の手で殺したのだ。
 ありったけの声を出して桐原桃子なる獣医に向かって彼女は吠えた。
 荒々しい音ともにドアが開けられると、若い男が桃子に向かって言った。
「まさに殺処分されるべき犬っころよな。我々は警察とは違うが、世の治安を守るために存在すると思うと誇らしいとすら思うよ、桐原さん」
 彼女はその男には無感情で答えた。
「ええ、そうですね」
 その言葉が少女の耳に入ってきたとたんに絶望のあまり吠える気力すら失ったが、おそらく、それが大人の処世術なのだろう。彼女は仕方なく、あるいは彼を自分と同等の人間だと見なしていない故に自らを露出する価値を認めないのだろう。
 そう思うと凍えきった心が温まる。

 保健所勤務の獣医である桐原桃子は、司法省の役人の立ち会いで、彼女自身の手で殺処分を行う対象を冷たい目で見下ろしている。彼女の同僚である田沼意三は彼女にとって生きた人間ではなくて単なる人形にすぎない。自分と通ずる言葉を持たない相手など、人形と何が違うというのだ。
 桃子は可愛い子犬を目の前にして舌舐め釣りしていた。
 偶然にも三日前にこの犬とそっくりの特徴を持った白い犬が保護されていたことは、この上ない幸福だった。たとえ、これほど彼女の趣味にあった可愛らしい犬を目の前にしたとしても社会的地位を失ってまで手に入れたいとは、いや、心の奥底では思うが、便宜的に思わないとしておこう、とにかく、若い女性獣医は身分をかけてこの犬が気に入ったのである。
 プロフィールを聴いて思い当たることがあったことも、これから彼女がしようとしていることを決定するのに一助があった。
 この犬はある中流家庭で育てられていたが、その家の娘が自殺してから今までは決して起こしたことのない異常行動を示すようになったらしい。脱走しようとしたり、飼い主に噛みついたり、挙句の果てが少女の葬式に訪れた同級生の少女、諏訪良子の首に噛みついて窒息死させるに至った。
 人間を汚させるだけでも十分に殺処分の可能性があるのに、致死では、いくら遺族が許したとしても死は免れようがない。被害者が存命ならば、犬の命の彼の胸先三寸で決まる。太陽国の法律でそうなっている。執行は保健所で行われ、実行は獣医、なお、司法省の役人が見届けることにもなっている。
 それ以前に行われるのは、犬を飼っていた家族との最後の面会である。たしか青井という苗字だったはずだ。その青井家では長女を失ったばかりか愛犬まで失うのである。
 桃子は、歪んだ愛情を多分に含んでいながら犬に対して真剣なまなざしを向けていた。犬は主人に対して忠実なものである。一家の長女を主人、いわば、群れのボスとしてみなしている例は少ないが、必ずしもありえないということではない。彼女が死んで、精神的に混乱していてもおかしくない。もしかしたら、被害者の少女と葬式の主体である自殺した少女の間に何かトラブルがあって、犬が目撃していたらどうだろう。あるいは、実際に立ち会っていなくても、犬には人間にはない超常的な能力が備わっているとも考えられる。そうした能力を駆使して、主人の復讐を行ったのではないか?
 それは桃子の想像にすぎないが、最初の邂逅、犬とはじめて目があった瞬間に、すでに酷似した犬を保護していることを思い出し、この犬を救出する手立てを思い浮かべる、いや、それだけでなく実行に移そうというのだから、彼女がいかに激しく一目惚れしたのか疑うべくもないだろう。
 その前に大事な行事が待ってい。る受刑者が執行される前に家族との面会が待っている。
 初夏の太陽が室内に入り込んでくる。この犬にとってみればただまぶしいだけだろう。しかしながら、桃子にはそれが彼女の未来そのものにしてやる自信があった。そのための計画はすでに進行中、であった。 

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『『兇状もちの少女、あるいは犬』 発端』

 自分はいったいどこにいるんだろう?いや、どこにいさせられているのだろう?14歳の女子中学生、青井みずなは両手を開こうとしたが、それは無駄だった。なんとなれば、彼女は手錠をかけられているからだ。それでも手首を上げることはできる。傍らにいる女性警察官に促されると少女は命令通りに動かした。いや、自動的に動いたと表現した方が適当だろう。彼女はそんなつもりはなかった。それでも手は動いて、婦警が手錠の鍵を鍵穴に入れる。
 かちゃり、という音がしたような気がした。
 彼女に促されるままに被告席に座る。そうここは東京市地方裁判所、彼女は同級生を殺害した罪で裁かれようとしている。法律に従って大人と同じ方法で裁かれることになった。すべては機械的な変遷にすぎない。そう、思い余っていじめっ子の首を絞めて、彼女が動かなくなった、自分は人を殺したのだ、その瞬間に青井みずなという少女は死んだのだ。そう思うと何もかもが楽になった。犬のように紐で引かれて入った瞬間に泣き声が彼女の耳に入ってきて、それが母親と家族のものだと同定できても、何も感じることはなかった。
 ドラマや映画では、手錠を外された被告は片方の手で片方をさすっていたが、彼女も無意識のうちにそうした動きをしていて、思わず心のなかで笑ってしまった。
 すべては現実感がない。
 そう、いじめられはじめて、その日は日記をみればはっきりとわかる。たまたま親友が発熱して休んだ日だったから、ひとりで登校すると自分の席がなかった。そして、クラスメートのひとり、彼女が殺した諏訪良子だったが、近づいてきていきなり失礼なことを言った。
「どうしてワンちゃんが入ってくるのかな?ここは人間が通う学校よ、あら、犬に人間の言葉をかけた私がばかだったかしら?」
 その時は、彼女とはあまり仲が良くなかったのでいつもの嫌味にしても度が過ぎているなど思う程度だった。美人だが、少し癖が強すぎる、きつめの顔の少女を非難する言葉は決まりきっていたが、これほどまでに非常識ではなかった。
が、しかし、教室中がどっと笑った段階で異常に気付いた。クラス中が良子を支持している。比較的、仲の良い子たちまでがわざわざ近づいてきて、彼女と同じようなことを笑いながら言った。それが5月3日。
 そして、ちょうど一か月後、彼女は良子を教室の真ん中で絞殺すことになる。
 警察の取り調べ室で殺したことは認めたが動機については何も言わなかった。
「黙秘します」
 ただ、その一言でだんまりを決めた。そのとき、彼女の頭の中で渦巻いていたのは、親友である、安彦眞子のことだった。彼女は最後まで自分の味方であろうとしてくれた。しかし、彼女はそれを拒否したのだ。もちろん、その理由はいじめが彼女に飛び火することを恐れたことにあるが、最後まで何とか救おうとしてくれた、彼女の大人っぽい美貌がいくら目を背けようとも、その時はできたが、取調室でも、そして、家庭裁判所においても、少女の視界から離れてくれなかった。
 それがこの裁判所ではさすがにあきらめたのかいなくなっている。
 ようやく自分を見捨ててくれたかと思う気分が楽になる。胸を張って兇状もちの人生を歩んでいこうではないか。友人はいっぱいいたつもりだが真実のところはかなりの嫌われ者だったらしい。このような事態になっても、いくら家庭裁判所の調査官が調べても、いじめの事実は出てこなかった。そもそも、被害者であるみずなが何も言わなかったこともあるが、クラスの誰かがいじめについて何も証言しない、そんなことはありえないと思っていた。まさか、自分からいじめられていたことを言うのだけは耐えられなかった。彼女の高い自尊心がそれを妨害したのである。
 無意識のうちに誰かが自分を弁護してくれると思っていた。
 だが、これではあまりにも惨めではないか。そもそも、学校やその関係者にまったく期待するところなどなかったが、伊豆頼子がそんなに怖いのか、彼女は良子とともにみずなをいじめていた中心グループのひとりだが、彼女を恐れてクラスの誰もが事実に口を閉ざしたらしい。
 しかし、親友である眞子はどうしたのか?
 どうしても助けると縋ってきた彼女にみずなは、彼女を助ける意味でこう言い放った。
「あんたなんて友達だなんて思ったことない、単に利用しただけよ」
 その一言を恨みに思ってのことか、彼女すら頼子の軍門に下ったようだ。もはや絶望を通り越して、自殺すら予定行為のなかに入っていない。もうどうとでもなれだ。女ならこの身体を売ってでも生きてやると、かつて映画の中で女主人公が言っていたセリフを、禿げ上がり始めた裁判官の頭を見ながら心の中で再生していた。
 
 少女が裁判所に入るととたんにざわめき声が起こった。大人たちはどんな目で自分を観ているのだろう。子供だから、週刊誌に載るのは美女ではあるまい。ならば、美少女だろうか?中学生の彼女であっても美女や美少女がマスコミによって、どのような用語として扱われるのか、それを知らないわけでもないが、少なくとも自分ならばその程度には扱われる外見をもっているという自負がある。
そんな彼女は中学のセーラー服に袖を通している。夏服は血で汚れたために冬服である。おそらく弁護士が母親に進めたのであろう。裁判官や裁判員の心証がどうとか、もうどうでもよかった。死刑にならないことは彼女の知識でもわかっていて、とても残念だった。たしかある小説で得た知識だが、裁判所で名前を訊かれて答えない場合、法律で決められた罪でもっとも重い罪で裁かれるのだ。殺人罪ならば死刑が最高刑だから、自殺するにはひとつの手段ではあろう。
良子が死んだと気づいたとき、彼女の胸に過ったのはもう、学校の制服を着ることもなく、いじめられることもないんだという安心感だった。しかし、そんな彼女の気持ちを大人たちはまったく理解しなかった。あれほど痛めつけられ唾も吐かれた制服をまた着ろというのだ、どれほど彼女がこの制服を着用することによって傷つき、まだ再び袖を通すこになれば再び傷つくことも知らない、それが大人たちなのだ。まったく信用するに当たらない。
 それでも、自分を取り調べた刑事の一人が自分と目線を合わせてこんなことを言ったことは忘れられない。
「おじさんは色んな子供の殺人容疑者を調べたが、お嬢さんが理由もなく人を殺すとは思えないんだ」
 悔しくも目線を外してしまった。それはいまでも悔しい。もう今となってしまえばそんなことは考えまい。考えてはいけないのだ。自分は決して、いじめられて、まるで窮鼠猫を噛むようなみっともない恰好で良子を殺したわけではない。最初からぜったい優位にあって惨めにも命乞いをする良子を殺した、のである。
 裁判でもそれを証言するつもりだ、快楽のためにやったと。

犬のように紐で引かれて、数歩歩いたところで、ある有名な芸人と目が合った。長髪の30がらみのその男は裁判芸人として有名で、かなりの数の事件を膨張して仕事のネタにしていることで有名だった。毎月、一回、あるテレビ番組にコメンテーターとして出演する番組は毎週欠かさず見ていたが、まさか、自分自身が彼のネタの対象になるとは、いじめられてみなけば自覚がなかった。冗談みたい彼の顔を見たら気分が楽になった。自分が犯した事件は芸人が笑いものにする程度の、世界的にみれば一国に一件、一年に起こる程度のありふれた、日常茶飯事の出来ごとにすぎないのだ。
弁護士は、まったく顔のない男である。
裁判官とちがって髪の毛があるのか、ないのか、あるいは例の芸人のようにふさふさなのか、そういう印象すらまったくない。しかし、その男が発した言葉は完全に印象的だった。少女の海馬に一時的記憶ではなく、一生消えない長期記憶として埋め込まれた。
「この裁判は無効です。なんとなれば、青井みずなと称する被告人は人間ではなく犬だからです。法律は動物を裁くことはできません」
 いったい、この人は何を言っているのだろうか?ふと、あの日、5月3日に良子に言われた言葉が蘇った。しかも、驚いたことに検察、裁判員、それだけでなく裁判長までもが弁護士の主張を認めたのである。
「どうして、犬がここにいるのか、警察官、はやく連れて行きなさい!」
「わ、わたしは人間よ!ふつうの女の子よぉ!!」
 今度は手錠ではなく犬の首輪をはめられて、乱暴に引かれた。信頼していないはずの母親の一般名称まで叫んで救いを求めた、自分はあくまでも人間であって、犬ではないと。
 それは教室で毎日のようにいじめられた一カ月、無言のうちにみんなに叫んでいたことだった。だが、今度こそは実際に言葉にする。
 裁判所にいる大人たちの反応は冷たいものだった。母親はいつのまにかいなくなっていた。芸人は目を丸くして、いつのまにか人間の被告が犬になってしまった、というような顔をしている。
「助けて!!」
 彼女が最後に叫んだのは、親友、眞子の名前だった。あのとき、あれは大雨の降る校庭でのことだった。剣道部だった少女は防具をつけたままで降りしきる雨に打たれることを、良子から命じられたのだ。
 眞子は走り寄ってきてすぐに中に入るように促したが、みずなは拒否した。あのときほど悲しそうな幼馴染の顔をみたことがない。まるでどちらがいじめられっ子なのかわからないほどだった。
 ああ、あの時首肯していればよかった。彼女は認めたくなかったのだ、自分がいじめられていること、そういう人からの助けを必要としている惨めな身分にあることを!
 しかし、すべては遅い。
 何を叫んでも、誰も彼女の言葉に耳を貸す人間は、大人も子供もふくめて誰もいない。そうあのけがらわしい週刊誌すら記事にしないだろう。自分は犬なのだ。人権はおろか、人を殺しても裁かれる権利すらない、そこいらでさまよっている薄汚い雌犬にすぎないのだ。良子がそう言っていたっけ、その一言が彼女を絞殺す動悸になった。
 なぜか、あの時、自分を唯一人間として認めてくれた刑事さんの顔が浮かぶ。おそらく、数々の犯罪者を締め上げてきたのだろう、何処か極道にも通じる人に思えたが、あの時、自分を認めてくれる一言を発したとき、仏の慈悲に近いものを少女は感じたはずなのだ。
 しかし、今となっては遅い。すべては無に帰した。

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