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『マザーエルザの物語・終章 17』
 やっとのことで屈辱的な食事を終えると、突如として、有希江が言い渡した。
「わかったわね、家では私がみんな世話してあげるから、自分で何もしちゃだめよ。そうしたら、ちゃんと可愛がってあげるわ」
「・・・・・・・・・」
 放心状態のあおいには、有希江の言葉が届かない。まるで恐竜のように神経が緩慢になった状態では、心身両面において理解することは、まず無理というものだ。
「わかったの?!」
「ハ・・・ハイ!」
 ほとんど、パフロフの犬のようにあおいは反応した。有希江が語気を強めたために、反射的に答えただけで本当に理解した上のことではない。その証拠に、小学生らしくふっくらとした頬は、わずかに上気し紅に染められている。そして、心なしか肩で息をしているのがわかる。
 華奢な肩がわずかに上下しているのだ。筆舌に尽くしがたい恥辱が与えたショックは、あまりに強烈だった。そのために、少女はまだ意識を回復していない。
「だったら、もうおネンネなさい」
「ハイ・・・・」

 こともあろうに、あおいは全裸のままで、それも四つんばい姿勢で部屋を後にしようとした。寒さを感じることすら、ショックは、少女から奪ってしまったというのか。さすがに有希江も声を掛けた。
「ちょっと、あおい、その恰好じゃ風邪引くって!」
 同時に手足が動いて、手短にあった毛布で妹の肢体をくるんでいた。
「ウウ・ウ・ウ・・ウ・ウウ!!」
 突然、あおいは激しく号泣をはじめた。生半可な優しさは余計に哀しみを誘うものかもしれない。ささくれだったあおいの神経は、氷柱のような手で逆撫でられたのである。少女の中で起こった化学反応は、通常の数倍のスピードと勢いで全身を覆っていく。すべての毛穴は縮み、皮膚は弾力を失った。
 一瞬だけ同情を催した有希江だったが、次の瞬間、冷たく言い放った。

「あなたはお手伝いさんでしょう? 明日は仕事があるでしょう? さっさと寝る事ね」
 そういうと、尻に書かれた顔を蹴り飛ばした。
「ぅぐうう!?ヒア!?」
 まるでコミックのように転がって部屋から放逐される瞬間、あおいは有希江の言葉を思いだしていた。
――――ちゃんと可愛がってあげるわ。
 それは、犬か猫にたいする言い方だった。決して、かつての有希江の態度ではなかった。
 しかし、そんな愛情でもあおいは欲しかった。とてもこのような状態で、家にいることは耐えられそうにない。もちろん出て行くという選択肢は、今のあおいにはない。いやあるはずがない。生活能力のない少女にとって家から追放されることはイコール死を意味する。
 もちろん、国家には児童を保護する義務があり、それは成人と条件が異なるのだが、小学生の幼い判断能力と知力ではそれを洞察することはできなかった。

「ウウ・ウ・・ウウ! ゆ、有希江姉さ ――――」
 哀れなあおいの呻き声を、有希江はドアを閉めることで制した。一方、少女にとってみれば、幸せへの門がすべて目の前で閉じられてしまったかのように思えた。たった10センチ足らずにすぎない木製の扉が、数メートルはある鋼鉄の扉のように見える。もう、自分に扉を開ける家族は、この家にはいないのだと、いやでも納得させられた。
―――――そうだ、伯母さん・・・・・・・。
 この時、あおいが思い浮かべたのは真美伯母である。生来の精神病を拗らせて入院している。少女にとってみれば幼いころから自分が一番愛されたと思っている、このことが徳子や有希江が無意識ながら妹に反感を抱いてきた理由なのだが、とにかく、どんなときでも自分を庇ってくれた最高の保護者だったのだ。
 どのような符合かわからないが、真美伯母の入院と少女が家族としての身分を失ったことは、軌道を同一にしている。それに入院したのは、あおいが原因だと有希江が言っていた。少女はそれに反論する能力も意思も用意できない。

「ウウ・ウウ」
 少女は、ようやく立ち上がると自室へと急ぐ。こんな時に茉莉にでも見付かったりすれば、どのような仕打ちを受けるかわからない。本来ならば可愛いはずの妹の影に憶えている。少女はそのような事実に涙しながらも、そして、足をひきずりながらも走り始めた。
 彼女じしん気づいていないのだが相手を可愛いと思うことは、必ずしもその対象への情愛だけを意味しない。対象を自由に扱えるということも孕んでいるのだ。自分の好きなように思うがままに扱えるという自負が、『可愛いはず』という言葉の中に、産卵されている。産んだあおい自身はとうぜんながら、それに気づいていない。

  しかし、何もかも見通せることが幸せとは限らない。
 この地上には、DNAを持たない多細胞生物が存在する。その生物は食物連鎖に組み込まれていないから、滅んでもかまわない、いや、絶滅すべきである。
 全人類の精神的健康のために、消えてなくなるべきだ。そうなっても害虫駆除会社以外、誰も困らない。 
 恐怖の生き物。
 そう怖れられる。ことに、主婦連中には、親の敵のように忌み嫌われる。
 それは、真夏の台所に密かに棲んでいる。しかし、何のきまぐれか、陽のあたる場所に姿を見せることがある。すると、台所の主は、この世の声とは思えない叫び声を上げるのである。
 例えば、その主婦連中が、台所の隅々まで見透おすことができたら、幸福と言えるだろうか。
 その結果は考えなくても明白というものだ。
 行き先はよくて精神病院で、おおかたは泉の下だろう。彼女らは、美しいソファに横たわりながら表面だけの美を享受して偽りの愛を唄っていたいのだ。たとえ、その背後で汚らしく蠢く毒虫が笑っていようとも・・・・・。

 閑話休題。

 あおいは、自室の扉を開いた。真っ暗で冷たい部屋。何故か、部屋を奪われることはなかったが、新しい風が入ることは完全に遮断されてしまった。たった数日のことにすぎないのに、廃屋のようになってしまっている。いや、何百年も人の手が入っていない廃墟という趣すらある。
「ウウ・・・・ウウ・ウ・ウ!」
 あおいは、かびくさいベッドに身を投げ出した。端から見れば呼吸ができなくなるのではないかと思われるくらいに、顔をシーツに埋めて泣き声を押し込める。かつてはいつも太陽の匂いに満ちていた。今は、カビとダニの巣と化している。
 どうしてこんなことになったのだろう。永遠に続くと思われる煩悶は、何処までも少女の頭のなかで燻り続けた。

 その時、有希江は母親である久子と話し込んでいた。
「自分の娘と携帯で呼ぶってやめてくれないかな?」
 有希江は、苺を摘みながら文句を言った。
「話しは真美のことよ」
「――伯母さんのこと? それがあおいのこととどう関連するのかわからないな」
 鷹の目を母親に向ける。
「そもそもあれってママが考えたの? そこまでする必要性ってわからないんだけど」
「とにかくするのよ!」
「・・・・・・・・・・」
 有希江は母親の剣幕にやや驚いていた。まるで人が変わったかのように、青筋を立てて自説を押し通そうとする。
「それならいいけど、これをやるころであおいの何がわかるっていうの」
「これは躾なのよ、これまで甘やかしすぎたわ」
 まるで噛み合わない会話がえんえんと続く。
「それで、伯母さんの様子は?」
「状態は変わらないわ」
「じゃあ、私が会いに行っていい?」
「あなたが行ってどうするの?」
 まさに、暖簾に腕押しというより他にない。会話のための会話が繰り広げられる。
「とにかく送ったメールどおりにお願いね。ママは寝るわ」
「ちょっと、お願いって! 茉莉には?」
 有希江の言葉が終わるまえに、久子は姿を消していた。
「全く、どういうつもりよ!」
 一人毒づくと携帯を開いた。

 その時、携帯の待ち受けが鳴るのを、頭骨が削られる思いで、あおいは聞いていた。
「け、啓子ちゃ? そっかあのことか」
 そのメロディを聞いただけで、全身の血が浄化されるような気がする。新しい血が流れると頬の色も好転する。かつての陽気なあおいが戻ったのだろうか。
 しかし、啓子の声に答えるまでに相当の時間を要した。携帯に出るたったそれだけのことが、あおいには地獄の門を開けることに匹敵するのである。
「・・・・・」
「ちょっと、あおい? 一体どうしたのよ!?また寝てたんでしょう? この脳天気!! 聞いているの!? あおい?」
 最初の『あおい』と最後のそれは、自ずから声の質量とともに格段の差があった。
「ウウ・ウ・・」
「あおい? 何かあったのか?」
 少女は嗚咽を漏らしたくはなかった。しかし、一番の親友を電話の向こうに回して、気が緩んだ。
「ご、ごめんね、具合が悪いんだ」
「えー、じゃあ、あした来れない?」
「そ、そんなことないよ!?」
「何よ?」

 啓子の声からは、疑念があふれてくる。あきらかに仮病を疑っているのである。親友の背後に何かあるのか。いくら彼女の洞察力が優れていようとも、それを見抜くことはできない。もしも、それが可能だとしたら、それは彼女が人間でないという一番の証明になるだろう。
「もしかして、宿題をみんなやれって言うんじゃないよね?」
「ち、ちがうよ、でも、図星かな?」
 この時、啓子はおかしいと思った。簡単に自分の非を認めたことが、あまりに不自然なのだ。いつもはさんざんにごねるあおいが、一体どうしたというのだろう。啓子は訝ったがそれを直截的に表現することを躊躇った。声の調子が普段とちがいすぎることに、意識の周辺が文句を言ってきたのだ。陽気を絵にしたような女の子が、何があったらこんなに元気がなくなるのだろう。
「とにかく、約束だからね、あ、し、た!」
 啓子は返事を待たずに一方的に切った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・?!」
 携帯を閉じて目の前を見たとき、啓子は絶句せざるを得なかった。扉が開かれて母親が入室していたからだ。何て事か、話しに夢中でドアの開く音も聞こえなかったというのか。
「どうしたのよ?ママ、勝手に入ってきて?!」
 その返事には、半ば抗議、半ば疑問がミックスされていた。
「大きな声が聞こえたから驚いただけよ。何かあったかと思ってね」
 当たり障りのないことを言って事態をくぐり抜けるようなことを言う。しかし、その裏には真意が隠されていた。この複雑な性格を有する娘が、このごろやっと、うち解けてきたように見えるのだ。それが一人の友人が好原因となっていることは明々白々だった。一人の親としても、事態を静観しているわけにはいかないのだ、そうすべきだとはわかっておいても・・・・。

「どうしたの?何か用?ママ」

――――そう突っ慳貪にならなくても。
 危うくそう言いそうになって、改めて平静を保とうとした。
「ママ、迎えに行こうと思って」
「え? あおいちゃんの方から来るんじゃないの」
 それは、あおいの母親が送りに来るということだが、久子はこのとき、鎌を掛けたのである。彼女との友人関係がうまくいっているのか心配だったのである。
「実は、久子さん用があるんだって」
 咄嗟に嘘が出てきた。どうせ、後で話しをつなげておけばいい。大人の都合でそう考えていた。
「わかったわ、もう寝るから」
 不機嫌そうに言うと、けんもほろろに、母親追い出した。
ドアに鍵を掛けるように、自分の身体を押しつけて座り込む。背中の肌を通して、母親がいなくなったのを感じ取るとすっと息を吸う。

「一体、なんなのよ!?」
 携帯をベッドの上に投げようとしたが、啓子は、間違えて脇にあるゴミ箱に入れてしまった。その失敗を心の中に巣くうもやもやのせいにする ――――そのような高等技術をまだ会得していなかった。
 あるいは、器用な人間であれば保育園や幼稚園の段階で、それを使いこなすことができるのかもしれない。しかし、啓子はそのような星の下に産まれることができなかった。
 『星の王女さま』のように、とつぜん、啓子の元に降ってきた少女。
 それが榊あおいだった。
 彼女に出会って以来、腹の中を変えられるような感覚を味わってきた。しかも、それが必ずしも不快ではない。いや、むしろ楽しくすらある。それは、『人生で一番大切なことは砂場で学んだ』以来、変わることがなかった人生哲学を変更する事態を招いていた。
 当時、彼女の記憶の中においても、母親や教師たちの脳裏にも、たったひとりで砂の小山を作っている影像しか残存していない。孤独。それが彼女の乏しい経験から産まれた哲学だった。どんなに目を掛けてもどうせ人は裏切る ―――という思いが、生後4年にして魂の根源にまとわりついていたのだ。
 それが、あおいに出会って何かが変わった。彼女の陽気な視線は、何事か、化学反応を啓子の中に起こした。
 しかし、それは単純な感情ではなかった。必ずしも不快ではないと言ったが、その逆もまた真なりだったのである。
 愛憎という言葉で表現するのが適当とは思えないが、この場合、それよりも適当な言葉を啓子は見つけることはできなかった。
 ゴミ箱の中に視線を走らせると、携帯が悲しげに光っているのが見えた。

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