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『マザーエルザの物語・終章 2』
 赤木啓子の家は、都心から車で10分といったところにある。緑に覆われた高台の真ん中に、その閑静な住宅街はある。
 彼女の母親が運転する車は、今、桜の花が降りしきる大通りを走っている。すぐ、そこの道を併走する少年がいたが、一瞬で追い抜いてしまった。

 「わあ、桜、キレイねえ」
「啓子ちゃんは、いつも見てるのに。」
 啓子の発言に難癖を付けるあおい。
「あおいちゃんは、桜好きじゃないの?」
 そう言っている母親は、祥子というのだが、実のところ、桜が好きじゃない。何故ならば、彼女の許可なしに車に積もった花びらの掃除が面倒だからだ。相当な資産家とはいえ、家族は、家のなかに他人を入れるのを好まない。使用人がいないのだから、自然と主婦である彼女の仕事になる。

 「別に、好きでも嫌いでもないよ。だけど甘くて食べられたら好きかな――――」
あおいは、無邪気に言いのける。
 今、車が左折したために、少女のランドセルの左部分が圧縮された。乾いた皮のニオイがわずかだが、発した。きっと、それには少女の汗の臭気が含まれているにちがいない。
 
 桜で有名な公園を抜けると、啓子の家はすぐそこだ。

 巨大な鉄門を潜ると、車は大きな車庫に入る。小さな養鶏場くらいの面積はあるだろう。しかし、あおいは、別に驚きはしない。何度も訪問しているからではなくて、実家がそのくらいの経済力がなければ、この学校に入ることはできないからだ。
  そこから5分くらい歩くと、ゴシック様式を真似たと思われる洋館が出現する。マネゴトとは言っても、本物が、巨大な大聖堂であることを考えれば、その洋館がたいした屋敷であることは想像できるはずだ。
 
 ふつうの家庭環境で育った者から見れば、それは、必要以上に広いと映るのであろう。
二人が上がった玄関は、ピカピカに磨き立てられている。たしか、京都か奈良に、そんな寺があったはずだ。真っ黒な床を見ると、まるで満月の湖面のように、自分の顔が見えた。陰毛が恥ずかしかった、そんな時代のことだ。
 話を元に戻そう。もちろん、この二人のスリットには、陰毛のいの字も見ることは出来ない。

 「あおいちゃん、早速調べよう」
 革靴を脱いだ啓子は、すぐに誘った。
「えー?もう?」
 あおいは不満顔だ。
「一体、何を調べるの」
「マザーエルザ」
 母親に即答する啓子。

「小学生らしくていいじゃない」
 あおいが脱ぎ散らかした革靴をそろえる母親。黒光りする靴からは、清潔な消毒薬のにおいと、女の子特有の脂のにおいが、たぶんに、蓄えられていた。しかし、彼女は別にそういう趣味がないために、全く反応しなかった。
「あ、ごめんなさい」
「これからはちゃんとしようね」
 彼女は、あおいの頭をそっと撫でた。

―――――かわいい、かわいい。
 あおいは本当に愛されていた。どんな所に行っても、誰にでも愛される。そして、それを当然のように思っている。啓子は、妬ましかったが、それよりも妬ましいと思う自分自身が嫌になっていた。
「はやく、パソコンの部屋においでよ」
「うん」
 啓子が言うパソコンの部屋とは、居間のことである。当然のことながら、こんなに金持ちなのに、娘にパソコンを買い与えていない。それは、あおいの親も、そうだが、それぞれ、娘たちを愛しているからである。常に監視が効く、居間に共有のパソコンを設置してある。

 「マザーエレザ、マザーエレザ」
 啓子は、Google検索に、その文字を打ち込んだ。母親の微笑が、宙に舞う砂金のように、二人の少女に降り注いでいる。それに気づかない二人は、モニターの情報に釘付けになった。
 
 ~1910年12月27日、ニェルティラピアに生まれる。アグネ=ゴンジと名付けられる。二人にとってみれば気が遠くなるくらいに、過去である。ちなみに、この屋敷の門には、1910年、建築と大理石の門構えに彫りこんである。
「え?マザーエレザって本名じゃないんだ。ていうことは芸名ね」
「啓子ったらそんなんじゃないって!」

 ――――?
 啓子は、不思議に思った。他人が軽く言ったことを、真に受けることはよくあるが、今回はちょっとちがう。何をむきになっているのだろう。
「すごいな、金持ちに生まれたのに、アギリに行って、困った人を救うなんて、えらい人だな」
「でもさ、家族は心配しなかったのかな。もしも、ママや姉ちゃんたちが、貧しい国に行くっていたら、ヤダな」
「そんなことない!!なんで、彼女じゃないのに!そんなことがわかるの!?」
「あおいちゃん・・・!?」

 さすがに、啓子も祥子も、あおいの剣呑な態度には驚いた。こんな彼女を見たことがなかった。あおい自身、自分の胎内に宿した子のことを、よく理解していなかった。この時、思いがけず、為した子は、彼女じしんばかりが、周囲を巻き込んで、古傷を蘇らせることになるのである。そのことを、二人は知るよしもなかった。
「ごめんね、啓子ちゃん、だけど、わかるんだ。アギリの人を助けたかったんだよ!きっと」

 「・・・・・・・・・」
モニターを見つめるあおいの視線は真剣そのものだ。まるで、彼女の視線が、モニターに乗り移ってしまうのではないかと、危惧させるくらいに普通ではなかった。
「でも、当時のアギリって今みたいに、ITが発達していたわけじゃないんでしょう?みんな貧しかったのよね」
 「今もそうは変わらなかったと思うわ。ITが発達していると言っても、ごく一部のことで、ほとんどの人は貧しい生活を強いられているのよ」
 祥子が口を挟んだ。
「ふうん」
 今、周囲にあるのは、当然の結果ではない。手足が完備されているのは、当たり前のことではない。鉛筆で文字が書けること、ふつうに歩けること。それらは、決して、当たり前のことではないのだ。
そのことを知るのも教育の成果である。しかし、この時は、まだ少女たちは、自分たちが置かれている状況がどれくらい恵まれているのか、自覚が足りなかった。

 二人が見つめるホームページには、マザーエレザが慣れない異国で、どのように奮闘したかが、如実に書かれている。

――――何処かで見たことがある。
やせ細った真黒な人間が、老女に撫でられて、感涙している。そんな映像を見ているうちに、あおいの中で、わけのわからないデジャヴュが生まれてくるのがわかった。見たこともないはずの世界が、彼女の中で、化学変化を起こしているのだ。
 
  いささか、緊張はしているせいか、油の乗った手で、マウスを動かす。
 まるで、アルバムを見返すような、気分で映像を通り抜けていく。30分に渡って、二人はモニターに釘付けになっていた。しかし、小学生の集中力はそれほど続くわけはない。やがて、あおいの手は、邪な方向に移動していく。Google検索、そして、少女の不格好な指は、何やらキーボード上を探索していた。

 「・・・・・・・・・?」
 啓子の目は、その動きをくまなく追っていく。そして、―――――――。
「ちょっと!あおいちゃん!」
 その文字列が示すのは、とあるオンラインRPGのサイトだった。
「やっとメイフィール金貨が見付かったんだよ」
「そんなことやってる場合じゃないでしょう?」
「ふふ、あおいちゃんたら、疲れちゃったんでしょう?啓子、おやつにしようかナバロフのチーズケーキを買ってあるわよ」
「はーい」
「わたしの注意はあまり聞こえないくせに、ママのは聞こえるらしいわね」
 いささか、軽蔑の色が含まれた視線を送る啓子。あおいは、それを無視して、祥子の元に走る。

 「はい、はい、ケーキは逃げませんよ」
「全く!ふふ」
 文句を言いながらも、啓子も続く。
「マザーエルザって、何故か、家でも評判よくないんだよね」
「おばさんたち?」
「特に、徳子姉がね」
 啓子は、榊家の長女を思い起こした。ちょっと尖った目つきのが特長である。
「じゃあ、私とも話が合いそうじゃない」
「みんな、なんでそんなに悪く言うのかな、聖女なのに、ノーベル平和賞もらったんだよ」
「私はもらう資格がないなんて、偽善的じゃない」
どちらかと言えば、釣り目がちな眼差しが、かすかに光を帯びる。
「ぎぜんてき?徳子姉が、そう言えば、言ってたわ」
「啓子は心がねじ曲がっているから、そう見えるのね」

 祥子が助け船を出した。
「そうだよね、啓子が好きなのって、織田信長とか、この前言っていたのって、誰だっけ、ソウソ?」
「曹操!中国の英雄よ」
「英雄って、人殺しでしょう?」
「そうねえ、曹操は才能を重んじたのよ、30分も勉強が続かない、あおいちゃんなんて、殺しちゃうかもね」
 「今、ソウソなんていないもん」
「曹操!それに、もしも1500年前にいたらの話し」
「今は、1500年前じゃないもん」
あおいは、最後のひとかけらを呑みこんだ。
「うん、美味しい!1500年前に、少なくとも、こんな美味しいケーキはなかったわね」

 「ふたりは、本当に仲がいいのねえ」
 祥子は、目の前に現出した絵画に舌鼓を打った。思わず微笑んでしまう。しかし、遠くない将来に、この美しい絵に罅が入ることなぞ、想像できたであろうか?あおいが零すあふれんばかりの笑顔が消えるなどと・・・・。
 
 平和な絵画に亀裂が走ったのは、夕食の後だった。
 
 祥子が作る料理は、ケーキに輪をかけて贅沢なものだったが、その時に、事件は起こった。啓子の家族一同が揃っていた。
 夕食が終わり、デザートという段になったときだ。啓子が姉に言った次ぎの台詞が引き金になった。
「可愛い妹がいるときには、いつもいないくせに、今日は、どうしたのよ」
「可愛い妹?何処にいるの?」
 当然、これは冗談である。姉の怜夏は既に大学生だから、家族と夕食を共にすることはすくないのだ。それを皮肉った啓子に、いつもの返事をしただけった。
一同は朗らかに笑いを添えた―――――はずだった。しかし、 ―――――――。

 「・・・・・・・!!」
「あおいちゃん?どうしたの?」
あおいはデザートを突っつくはずのフォークを落としてしまった。しかるのちに、立ち上がると、怜夏を睨んだ。血相を変えたその顔は、今までのあおいではなかった。
「あおいちゃん?」
怜夏もあおいのただならぬ様子に、とまどいを隠せないようだ。

 すべてが凍り付いて溶けないのだと思わせた後、あおいは小さな口を開いた。
「だめ!家族にそんなこと言っちゃ・・・・・だめ!!ぁあ、ごめん・・・・!ごめんなさい」
「そんな、別に、あおいちゃんが悪いわけじゃないわよ」
「ぁ」
小さく呻き声を上げると、両手で小さな顔を覆うと、脱兎のごとくドアに向かって駈け出した。

 「あおい!」
 啓子は、当然のことながら、あおいを追いかける。あおいが走り去った後には、涙の粒が、何粒も転がっていた。
「あおいちゃん?」
 小さいころから、彼女を知っている怜夏である。さすがに不思議に思った。
「ただごとじゃないわよねえ、あの様子。変に他人行儀になったかと思うと・・・・」
 妹のように思ってきたあおいの変容に、驚きを隠せなかった。
祥子は、食卓を片づけながら言った。
「成長の儀式にしては、おかしいわねえ、久美子に電話しておくか」
「だめよ、それはよした方が良いわ、ママ」
 怜夏は、あまり嘴を出すのはよくないと諭す。
 二人が心配しているうちに、ふたりは、はたして戻ってきた。しかし、あおいはもう泣いていなかった。

 「あおいったらおかしいよねえ、小公女セーラを読んでいたんだって、あの話しって、たしか家族にいじめられる女の子の話よね」
「・・・・・・ごめんなさい」
 あおいの作った笑顔は、巨匠の名画というよりは、弟子のデッサンのようだった。しかし、一同は、それを知っていて、知らぬフリをした。
二人は、啓子の部屋に戻っていった。
「ねえ、ママ、セーラーってそういう話しだっけ」
「いや、ちがうと思うけど?」
 あおいが残したのは、疑念のたっぷり仕込まれたケーキだった。
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テーマ:萌え - ジャンル:アダルト

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