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『由加里 47』
「さ、冴・・・・ウ・ウ・ウ・ウウ・・・・・・・・・!?」
「由加里ぃ!!」
 由加里は、まだ覚醒がしっくりいかない状態で、入室者の顔を見た。頭の中で、渦巻いている思いを言葉にしようとしたが、なかなかうまくいかない。
「さ、冴子姉・・・・・・・!!」
「もう、何も言わなくていい ――――――――」
 冴子は、黙って妹の黒髪に触れた。
「ウウ・ウ・ウ・・ウ・ウウ!」
 言葉は、言葉にならずに、嗚咽となるだけだ。それを恥じるように、シーツに顔を埋める由加里。そのかたわらには、春子が寄り添っている。 父親である和之は用があるのか、ここにはいない。
「・・・・・・・・・・・・・・?!」
 その時、郁子は得体の知れない両生類が、頭の中を動き回るのを感じた。そのナマズのような頭を持つ、ぬらぬらとした怪物は、少女の心の襞という襞を刺激し、不安と不審の二文字をかき立てていくのだった。
 
  由加里を轢いたという女性、そして、冴子、由加里。この三人は、あまりに、酷似している。三人を他人同士だと言うのは、火星が四角いというのと同じくらいに無理がある。冴子の話によると伯母だということだ。開院のために貯めた金を持ち逃げしたというが、そんな話しは聞いたこともない。
 幼い少女を襲ったのは、圧倒的な孤独だった。この家族の中で、自分だけが仲間はずれのような気がした。自分だけに、報されていない家族の秘密があるような気がした。自分は、ここにいてはいけないような気がするのである。
 異端児、まさに、この状況に相応しい言葉だった。もっとも、小学5年生の彼女に、そんな言葉は浮かんでこなかったが・・・・・・・・。
 ふと、先ほどの女性のことが気になった。みんなに気づかれないように、病室を後にした。冴子と女性が立ち回りを見せた場所へと急ぐ。もう居なくなっているだろうか。時間にして、五分と経っていないはずだ。よもや、車で来ているはずがないことは、小学生の郁子にも、簡単に推察できた。

―――バス停ね。
ロビーは、ガラス張りになっているために、外の様子がありありとわかる。バス停も見える。

――――いたわ!
少女は、今、バスに乗り込もうとしている百合絵を見つけた。

―――急がないと!
  郁子は、バスまで駆けた。由加里と違って、運動は得意なのだ。今からならば、間に合わないということはない。バスが発車しようというその時、走り寄ってくる少女に気づいたのか、運転手は急ブレーキをかけた。
 バスは、それ自体に、固有の意識があるかのように、扉を開いた。心の中で、「ありがとう」と言うと、飛び乗った。「あぶないから、急ぐなよ」バスが答えたような気がした。
 一生懸命に走ってきたために、肩で息をする。辺りを見回す。一番後ろの席。

―――あ、いた!
 その時、郁子と百合絵は目があった。
 この時、少女は自分が、数ある鍵穴のひとつに、鍵を差し込んだことに気づかなかった。しかし、確かに、あるひとつの答えにむけた、少女を含めた一団の人間が、新たなる歩みを迎えたことは、決定的な事実なのである。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
 ふたりは、揺れるバスの中、互いに向き合った。視線は、互いを逃すまいとしている。
「お嬢ちゃん、座らないと危ないよ」
「え?はい ―――」
 そんな緊張状態を和らげたのは、一人の老婆だった。
「私は西宮郁子です。おばさんは、私たちの伯母さんですか?」
 郁子は老婆に会釈すると、百合絵の隣に座った。そして、自分の母親くらいの年の大人に対して、位負けすることなく、自己紹介をした。
「・・・?まあ、いいわ。今、ねえ、あなたの曲ができたところなんだけど」
「え?」

 咄嗟に、その言葉の意味が理解できなかった。一体、この人は何を言ってるのだろう。
目の前の女性は、母親よりも10歳くらい若く見えた。しかし、それでも、十二分に大人であることに違いはない。郁子にとって見れば。煙突の頂上を見ることに等しいのだ。
「私はねえ、特異な才能を持っているの、その人を見ると、その曲が頭に浮かぶのよ、今、演奏してみましょうか?」
「え?」
 郁子が、何か言うまえに、演奏は始まっていた。妙なる音が、百合絵の口からほとばしり出たのである。しかし、それは唄ではなく、口笛だった。

――――きれい!
 郁子の感想は、バスの乗員、すべてに共通した意見だった。粗野なバスの中が、一瞬で、芸術の名高い演劇上に姿を変えた。差詰め、動く劇場である。
「わあ、すごい!すごい!伯母さん」
 郁子は、子どもらしく破顔して、芸術に答えた。乗客も拍手で迎える。百合絵も良い気分で微笑を浮かべていたが、やがて、それを壊すような囁きが聞こえてきた。
「あれ、海崎百合絵じゃないか?」
「え?嘘!?そうだよ、海崎百合絵だ」
「ほら、聞こえるわよ」
 彼女らしい女性が、彼を制した。
「仕方ないわねえ、次ぎの停留所で降りるわよ、お嬢ちゃん」
「え?」

 バスが止まると、驚く郁子の手を摑んだ。じゃらじゃらと小銭を投げ込むと、バスを降りた。郁子は、動揺しながらも、抵抗しなかった。
「さてと、暑いわね、何処かに入ろうか ―――――」
「伯母さん、海崎百合絵 ―――さんなんですか?」
「その年で、海崎百合絵を知っているの?」
「有名な音楽の人だって、テレビで言ってた、でも」
「でも?」
 百合絵は、畳み掛けて訊いてみた。
「パパが言ってた」
「なんて?」
「とんでもない女だって、音楽を生業にするなんて、どうしようもないヤツだって。あのパパが怒るの、めったにみれないのに」
「そうね、和がねえ ――――」
「やっぱり、私たちの伯母さんなの?」
「・・・・・・・・ねえ、それって、誰が言ってたの?」
「・・・・・」
「ま、入ろうか」
 百合絵は、たまたま見つけたパーラーを指さした。

 店内の装飾は、総じてハワイ風に彩られていた。
「私、こういう空気が好きじゃないな、どっちかというと地中海がいい」
「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ ――――――」
 店主は、サラリーマンでの言えば、定年まじかだと思われる。顎で百合絵の感想をあしらうと、注文を受けるべくボールペンを耳から外した。

  注文票に書かれていたのは、それぞれ、コーヒーフロート、チョコレートパフェである。言うまでもなく、前者が百合絵、後者が郁子である。これでもかと、生クリームとチョコレートが、東南アジア風の寺院ばりに、重ねてある。テーブルの上に、注文した品が揃うと、百合絵は話をはじめた。

「さあ、訊こうか」
「冴子姉さんがねえ ――――――――」
 郁子は、それまでの経緯を話し始めた。百合絵は、目を細めて、店外を見ていた。視線の先で、赤い自転車の子どもが転ぶと、口を開いた。

「それは、全部本当のことよ、でもお金はみんな和之に返したわよ」
 アイスクリームがかなり溶けてしまった。どろどろと溶けたクリーム状のものは、まるで地球温暖化だ。それでも、コーヒーを一口飲むと、また口を開いた。
「和之は私の弟なの」
「え?おばさん、20代かとおもった」
「ふふ、何も出ないわよ ―――――――ねえ」
「何?」
 おそらく、何も知らないのだろう。無邪気な少女の顔をのぞき込むと、何だか哀れになった。もしかしたら、これから信じられない現実と向き合うことになるかもしれないのだ。
 そのことを鑑みたとき、多少なりとも、罪悪感らしきものが、迫ってくる。それは、ちりちりと全身の毛穴に染み込んでくるのだ。
 後から生まれたこの子にまったく罪はない。当然のことながら、冴子と由加里にも、まったく罪はないのだが、彼女は上から積もった罪責をすべて受け継ぐために、生まれてきたかのように思えてならないのだった。

「お願いがあるんだけど、郁子ちゃん」
「何?」
  生クリームが口の端に生えている。まるで、老人のようだ。それがまったく下品でなく、そこはかとない品を保っているのが、興味深い。それは郁子が持つ生来の可憐さと無縁ではないだろう。
「伯母さんと、約束してほしいんだけど ―――――――――」
「言っている意味、わからない」
「由加里と冴子のこと、知りたいの。だから、伯母さんにこっそり、教えてほしいの」
「パパと仲直りしたいなら、直接、会えばいいじゃない。私もこんなきれいで若いおばさんができて、うれしいんだよ」
小学生らしい無邪気さで答えた。

「ことは、そんなに単純じゃないのよ」
「でも、冴子姉さんや、由加里姉さんにまで、報せてはいけないって?なんで?」

――――当然の質問だな。

 百合絵はそう思ったが、それに適した返答は、なかなか見付からない。
「ねえ、郁子ちゃん、携帯持ってるの?」
「まさか、持たしてくれるわけないよ」
「ふうん、母親に愛されているんだ ―――――」
「変な言い方、伯母さんは、どうなの? ―――え? どうしたの?」
 百合絵は、わざと、表情に陰を作った。
「一人娘がいたけど、事故でね ―――――」
「あ、ごめんなさい!」
郁子は既に涙ぐんでいた。
「えへへ ――――嘘!」
 年甲斐もなく、舌を出した。決して、照美やはるかには見せない顔である。
「ひどい! もう、知らない!」

 百合絵は、咄嗟に嘘を付いた。急に、照美のことを言われて、相手が、小学生とはいえ、とりあえず、欺瞞ぐらいせざるを得なかった。少なくともそのくらいしておかなければ、自分に対して申し訳が立たなかったのである。
「でも、伯母さんに子どもがいるなら、私たちのいとこってことになるよね」
「ああ、そうだったわね ――――とりあえず、携帯、買いに行こうか、伯母さんの登録で、新しいのを買えばいい」
「え!?」
 百合絵は、支払いを済ませると、郁子の手首を摑んで、強引に店外を連れ出した。ただし、捨てぜりふを忘れなかった。
「店主、ハワイ風も悪くない ――」
―――さいですか?
 そう返したわけではいが、店主は、そう言いたそうに、母娘の背中を見送った。




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